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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第五章 七聖剣編
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108 火炎強襲

(何だ……何が起きた!?)


 グレインとティアは、瓦礫の影で自分たちの|分身が倒れたのを見た。

 念のため、瓦礫でクレアシルの視界が塞がったときに、ティアの分身を生み出す魔法で身代わりを作っていたのだ。

 クレアシルの眼の前で倒れた分身たちが木片に戻る途中で、グレインはティアに目配せする。


(どう思う?)


(……多分、クレアシルの創造の力。私たちの体内に石を創造して、体内から破壊したのかも)


(……それにどうやって対抗しろって言うんだい?)


 小声で会話する二人は、眼の前に大きく立ちはだかった問題に対し、ため息をついた。

 クレアシルは分身だった木片を興味深さそうに眺めている。

 二人には気づいていないようだ。


(クレアシルは魔力が感知出来ないみたい。多分私たちがここにいることも気づいていない)


(付け入る隙があるとすれば……そこか)


 二人は頷くと、瓦礫の影から飛び出す。

 音でクレアシルが気づき、少し口角を釣り上げる。


「なるほど、身代わりか」


「はっ!」


 ティアが地面(・・)に爆発する魔法をかける。

 爆発とともに瓦礫や土が舞い上がり、クレアシルの視界を塞いだ。


「む……」


「〈飛剣・斬華〉!」


 散らばった飛剣が、クレアシルを襲う。

 クレアシルはそれを鬱陶しそうに払った。


「つまらぬ。貴様らの力が我に通用すると思っているのか?」


(ダメか……!)


 グレインは砂埃に紛れて、ティアを脇に抱える。


「一旦引くよ!」


「了解」


 されるがままになっているティアは、位置がばれない程度の小声で会話を始める。


「グレイン、聞いて」


「どうした!」


「多分、クレアシルの力は座標系の力だと思う」


「座標? 位置を指定して発動させる魔法だっけ?」

 

 グレインは瓦礫の影に再び隠れながら、そう聞いた。

 ティアも同じように横に並び、クレアシルの様子を伺う。


「そう。多分、私たちの体内の座標を指定して、そこに石を創りだしたんだと思う。さっきみたいに視界が機能しない状態だと、クレアシルは私たちを攻撃出来なかった。出来るなら一瞬で終わらせてるはずだし、こうして隠れてたって殺せるはずだよ」


「……確かにね」

 

 煙が晴れると、そこには変わらずの態度のクレアシルが宙に浮いていた。

 辺りに視線を泳がせ、グレインたちを探している様子だ。


「とりあえず……この場を離れよう。今の僕たちじゃ相手にならない」


「同意。みんなと合流する?」


「それが一番いい。そうと決まればさっさと――――」


「――――面倒だな、辺り一帯吹き飛ばすか」


「「っ!?」」


 クレアシルが手を空に掲げている。

 おそらく、上空に何かを創造しようとしているのだろうと、グレインたちは予想した。


(まずい!)


 グレインはすぐさま反応し、ティアの首根っこを掴む。

 強烈なまでの死の予感が、グレインを支配していた。

 そのとき――――。


「アイスランス!」


「む?」


 クレアシルの顔面に、氷の槍が直撃する。

 ダメージは一切入っていないようだが、気は引けた。


「何者だ?」


 クレアシルは辺りを見渡すが、氷の槍を放った存在の姿が見えない。

 

「グレイン、ティア」


「! エルカ!」


 二人の隠れている瓦礫の影に、エルカが現れる。

 さすがの頭脳で状況は理解しているらしく、自らも近くに隠れた。

 

「二人が目立った怪我をしていないことから、隠れて様子見をしていることは分かりますが……詳しい状況を聞かせてもらっても?」


「ああ……よく来てくれたよ。とりあえず、クレアシルの前に姿を晒すのはまずい。クレアシルは座標指定で物体を創造出来るから、下手すれば体内に石一つ創造されて即死だ」


「それで、こっちの攻撃は全部通用しない」


「――――絶望的なのでは?」


 エルカは苦笑いだ。

 グレインとティアも気まずそうに笑う。

 三人はふざけているわけではない。

 何とか状況を打破する方法を考えているのだ。


「なるほどね、眼で追えなければ同じことだろ?」


「っ! ロア!」


 三人が相談していると、気づかぬ内にロアが横に並んでいた。

 行ってくると言い残し、ロアは瓦礫の影から飛び出す。

 驚異的な速度である。

 少なくとも、この場のエルカたちは眼で追えない。


「何だ?」


 クレアシルは音に気づき、ロアの飛び出した方を見る。

 そのときには、すでにロアはクレアシルの真後ろに回り込んでいた。


「おせぇよ!」


「――――」


 ロアは伸ばした爪を、クレアシルの首筋に叩きこもうと飛び上がった。

 振り下ろした腕は、真っ直ぐクレアシルの首へ向かい――――。


「ふむ、人の身にしては速い」


「なっ……」


 ロアの腕は、クレアシルの手によって掴まれていた。

 クレアシルはロアの方を見ていない。

 それでも、クレアシルの首筋に爪が届く前に、その腕をしっかりと捕まえていた。


「離せ――――」


「消えろ、虫め」


 クレアシルはもう片方の手を、ロアの眼前に置く。

 

(あれはセツさんを消し飛ばした……っ!)


〈消失〉に気づいたグレイン、ティア、エルカの三人は、ロアをなんとか救い出すために飛び出す。


 それが罠だとも知らず。


「ふん、ようやく出てきたか」


「っ!?」


 三人が飛びかかろうとすると、クレアシルの胴体に信じられない物が見えた。

 それは、「腕」である。

 三本の腕が、グレインたちに向いていた。


「消えるがよい」

 

 グレインは、時間が遅くなるような感覚を味わった。

 クレアシルの手から、死の光が漏れ始める。

 誰もが、自らの死を確信した。


「――――クレアシルゥゥぅゥゥ!」


「むっ!」


 直後、上空から黒い炎の柱が飛来した。

 その柱はクレアシルを飲み込み、辺りに強烈な熱気を放つ。


「夕陽か!?」

 

 グレインが頭上を見上げる。

 そこには黒い炎をまとった夕陽が、宙に浮いていた。

 

「殺す! お前は絶対に!」


「まずいですね……離れます!」


「っ……了解」


 エルカの指示で、三人はその場から離脱する。

 夕陽が巨大な炎の塊を掲げていた。

 あのまま残っていれば、容赦なく巻き込まれていただろう。

 

「あっ……つ……」


 炎の中に巻き込まれた自分の腕の痛みに耐えながら、ロアは何とか腕を引き抜こうとする。

 すると、先程までとは打って変わってすんなり抜けた。

 痛みに顔をしかめつつ、ロアはその場から離れる。


「ロア! こっちへ!」


 エルカの声が響き、ロアはその方向へ移動した。


「死ねッ!」


 夕陽が巨大な黒炎の塊を放つ。

 炎の柱に動きを封じられているのか、クレアシルが避ける様子はない。

 そのまま、炎はクレアシルに直撃した。


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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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