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異世界召喚は二度目です   作者: 岸本 和葉
第一章 魔族大陸にて
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9  飯が不味くなるだろうが

量が増えたせいで話数ががががが……

 私、花柱 夕陽はつい数分前に告白しかけた。なぜあのタイミングだったかは自分でも分からない。やっぱりユキくんと離れるのが寂しかったのかもしれない。

 

 まあ結果は有耶無耶にされてしまったけれど……私たちがまた会えた時に、私がデコピンを避けられれば、ユキくんから告白してくれると言ってくれた。あれ? デコピンだったけ? まあいっか


「~♪」


と、いうわけで私は今とてもご機嫌だ。この世界に来て不安ばかりだったけれど、今だけは充実していた。

 ずっとユキくんが好きだった……いつからそうだったのかは分からない。気づいたら好きだった、理由は本当に分からない。愛に理由はないとはよく言ったものだけど、今の私なら分かる気がする。


 長いこと彼と一緒に過ごしてきた。それなりにユキくんも私のことを大切にしてくれていたとは思うし、当然私はユキくんのことが大切だった。けれど……どれだけ近くても、どこか彼はこの世界にいない感じがしていた。

 それが今日、ようやくその訳が知れた。

ユキくんはこの世界で生きていた……ずっとこの世界に戻ってくることを考えていたんだ。


 そのことを知ったとき、それを話してくれたエルカさんがとても羨ましかった。私の知らないユキくんを知っている、それだけでやっぱり嫉妬してしまう。

安心したのはまだエルカさんと彼は恋人じゃなかったってことくらい。私が今日告白したのは、そんな彼女よりも一歩先へ進みたかったからなのかもしれない。


 ……でもユキくんこっちの世界じゃすごいモテてたみたい……今度会った時にたくさん女の人連れてたらどうしよう……


「……ま、その時はその時だよね」


 自分がそれをどう思うかは、その状況になってみないとわからない。でも……多分そんな嫌な気持ちにはならないはずだ。彼を好きになった人たちとは、私も仲良くできる気がする。


――――――人じゃなかったらどうしよう?


 っと、考え事しながら歩いていると、気づけば街の中心あたりまで戻ってきていた。さっきまではすごい賑わいだったのが、日が暮れた今では人の通りはあっても店はほとんど閉まり、いくつかある酒場にしか人がいない。

 私も城の夕食の時間には帰らなければ……遅れても作ってくれるけど、みんなで食べたほうが美味しい……と言っても光真くんたちだけだけどね。


「ユウ!」


 少し早歩きになった私に、後方から声がかけられた。

ユウと私を呼ぶのは光真くんや美月ちゃん、次郎くんしかいない。


振り返るとそこにはその中の一人である光真くんが立っていた。


「あれ?光真くんどうしたの?」


 彼は今日城で休むと言っていたはずだ。勇者が持つ聖剣というスキルを使うにはものすごく体力が要るため、休息が大事だとグレイン先生に言われたからだ。


「いや……夕陽の姿が見えなくて探してたんだ」


 ……あれ?私みんなに今日買い物に行ってくるって伝えてなかったけ?さすがにユキくんと二人っきりとは恥ずかしくて言えなかったけど、朝城を出たときに伝えたはず……


「帰ろうユウ、もうすぐ夕食だ」

「う、うん。そうだね」


 薄暗くて彼の表情がわかりにくい……でも少し怒っている気がする。何か私悪いことしたかな?


「行こう」

「――――――え?」


 光真くんの手が私の腕を掴む。そのまま引っ張られ、私は彼について行く形になった

こんなことされなくても行くのに、どうしてしまったんだろう?


「なあユウ、今度の休みに俺とこの街に買い物しにこないか?」

「買い物?」


 光真くんはこっちに顔を向けずに聞いてくる。

お誘いは素直に嬉しいけど、休日はエルカさんに指導してもらうんだ。休日が潰れるのを承知の上で私がそれを望んだため、用事ができたのでその日休ませてくださいというのは申し訳無さ過ぎる。彼女も休日を潰して付き合ってくれるのだから。

 それもすべてはユキくんの隣に居れるようにするため、光真くんのお誘いは本当に嬉しいけど、断る選択肢しかない。


「ごめんね、私もう休日の予定埋まっちゃってるんだ」


 私がそう伝えると、光真くんは「そうか」と残念そうに言って引き下がった。なんか申し訳ない


「――――――あいつとは休日を過ごすのに俺とは過ごさないんだな」

「? 何か言った?」

「いや……なんでもない」


 小さな呟きだったので聞き取れなかったのだが、彼がなんでもないと言ったのだから追求するべきじゃないんだろう。


 私の腕を握る彼の力が強くなってきた気がする。

ちょっとだけ痛かったので離してくれと言おうとしたのだが、光真くんの顔があまりに真剣で、私は何も言えなくなった。

 やっぱり今日の彼の様子はどこかおかしい、そう感じた




 その日の夜、美月ちゃんに今日の光真くんの様子を聞いてみた。

彼女曰く、彼は休日らしく本を読んだり昼寝をしたりして過ごしていたらしいのだが、夕方頃に私の帰りが遅いと言って探しに出たそうだ。

 

「別に心配する事じゃないって言ったんだけどね~『街外れの治安が悪いところまで行っていたらどうする!?』って言って聞かなくてさ……ほんと光真もやれやれだよね、あの様子じゃ街外れまで探しに行ってたのかも」


 そう言う美月ちゃんの言葉には呆れが混ざっている。やれやれってどういう意味合いなんだろう?

……というか私はそんな心配されるほどおっちょこちょいではない。まあ確かに街外れには行っていたが。


ん?……街外れ?


もし本当に彼が街外れまで探しに来ていたとすれば?


(城を夕方に出たら街外れにつくのは日が沈んだ頃……)


つまりそれは私とユキくんがお別れをしていた時間帯――――――


(……まさかあれ(告白)を聞かれてたんじゃ……)


 そう思った途端に私は顔が赤くなり、自室で頭を抱える羽目になった。


――――――初の告白を人に聞かれていたなんて、恥かしいにもほどがある。

どうしようどうしようと考え続け、ようやく眠れた頃にはすでにみんな寝静まり、起きているのは私くらいだった。


 次の日自室から出てきた私の目の下には、薄らと隈が出来ていたと言う















「んぁ~~」


――――――ディスティニアから100kmほど離れてるんじゃないかと思われる森の中、俺は木々の隙間から覗く朝日を受けて目を覚ました。


 大陸を渡るにはまず港町へといかなければならない。

そのため目的地を港町にして出発した予定だったのだが――――――


(ほんとにどこだここ……)


 ―――――夕陽と別れ国を出たあと冷静さを欠いた俺は走り続け、気づけばこんなところまで来ていた。途中商人などが使う整備された道を見かけていたのだが、構う余裕もなくひたすら走り続け、気づけばもう道なんて見えやしない森の中だ。


――――――要するに迷子ということだ


迷子に気づいた辺りで眠気が襲ってきたため、こんなところで寝てしまっていたが、野宿用の道具とか持ってきててよかったマジで。


(どうすっかな……とりあえず道を見つけねぇとダメか?)


 コンパスの一つでも持って来ればよかったと今更ながら後悔する。

前回の旅ではティアが居たため、彼女の開発した便利な魔法で迷うことなかったが、今回は一人……これは迂闊だった。

 まあ最悪天高く飛び上がって空から街を探せばいい。空飛ぶ魔物に目を付けられるかもしれないが


(ひとまずは動くか、ジッとしてても人は通らねぇし)


 道さえ見つかればその道を辿るだけで街にはつくんだが、生憎それをどっちへ向かって歩けばいいのかがわからない。人さえ通れば勝ちなんだが……


 そんなわずかな希望に縋ることを考えつつ、俺は寝床の周りに置いておいた「魔物よけの魔石」を回収する。これは名前の通り、魔物を寄せ付けないために置いておくものだ。範囲を決めて正方形の角になるように石を設置し、その一つ一つに魔力を込める。するとその魔力に応じて魔物が入ってこれない結界を作り出してくれる。それは例えずらされても結界を維持してくれるが、さすがに拾われたら効果は消える。


「これで最後っと」


 しゃがんで最後の一個を拾い、魔法袋に放り込むと、顔に生暖かい風が吹き付けた。


「ん?」

「ぶるるる……」


 不快感を覚えて前を向くと、そこには頭が俺の身長ほどもある巨大な猪がいた。全身を茶色い毛に覆われ、二つの巨大な牙を持っている。

 これがこの世界で言うところの魔物と言われる生物……どうやら結界がなくなった途端近寄ってきたようで、さっきの風はこいつの鼻息だ。


 俺が動かないでいると、猪は獲物に対する目で俺を見てきた。


「なんだてめぇ、喧嘩売ってんのか?」

「ブルルルルルルゥゥゥ!!」


問答無用か――――――


猪は目の前で大きく頭を振り、牙でなぎ払いをしかけてくる。

俺は身軽にそれを躱し、こいつから距離を取った。


「ぶるるるるる……」

「こいつ〈B級〉くらいか?」


 B級というのは、この世界の魔物に存在する脅威度のことだ。その魔物がどれだけ危険かでランクが決まり、最低はE級、そこからD、C、B、A、S、SS、SSSと続いていく。B級は中堅くらいの強さを持ってるってことだな。


 ちなみに冒険者という職業も、同じようにランク付けされている。魔物も冒険者もSを超えれば化物レベルだが、中でも元凄腕冒険者のバウスは過去数人しかいなかったSSS級冒険者だった。


まあ前世の俺も最終的にはSSS級まで上がったがな!


―――――さて、自慢も終わったところで俺は改めて猪に向き合う。


猪はさっきから前足で地を掻いて力を溜めている。まるでエンジンを温めているようだ


「……よし、久々に黒丸の出番だな」


 俺はこいつを一刀両断すべく、魔法袋に手を突っ込む。

つい昨日不殺やら信条についてやら色々語ってはいたが、魔物はその限りじゃない。


 全てが全てではないが、魔物はどの生物からも敵としてみなされている。こいつらは基本的に意志がなく、ただ自分以外の生物を襲い、食らうことを本能として生きている。この世界じゃ俺たちとこいつらは食うか食われるかの関係ってことだ。こいつらの前では俺も弱肉強食のこの世界に馴染める。


「わりぃな、さすがに食われたくないんだわ、俺」


 俺は袋から大剣を取り出し、抜刀。広い刀身が朝日を反射し黒光りする。

対して猪は溜めに溜めたエネルギーを一気に解き放ち、フルスロットルで突っ込んでくる。当たれば撥ねられてしまうだろう、俺じゃなかったら。


「ブルォォォォォォ!!」


雄叫びをあげ突進してきた猪に、俺は真上から黒丸を振り下ろす


「よっ――――――」


剣が猪に当たった瞬間、その体にまるで豆腐を切るかのように沈み込んでいき、その体を両断してしまう


……真っ二つになった猪が俺の後ろへと抜けて行き、地面に肉塊が転がった。



「っとぉ……相変わらずの切れ味だな、黒丸」


魔物の決して柔らかくない骨をも斬ったというのに、黒丸は刃こぼれ一つ起こしていない。素材についてあまり聞いたことなかったんだが、今度聞いてみるか、興味がある。俺は黒丸を鞘に戻し、魔法袋に放り込んだ。ちなみに鞘には自動洗浄のアビリティがあり、納刀するだけで刀身を綺麗にしてくれるすぐれものだ。


「よし、運動もしたし……とりあえず動くか」


 宛はないがな……


 両断された猪に背を向け、俺は森の中を歩き始める。

死んだ魔物は、自然に放置しておけばいずれ魔力の粒子となり、空気中に分解されるため処理は必要ない。その場から持ち出してしまうと分解されず、普通の生物と同じように腐る。どうやらその地にある空気中の魔力が関わっているようだが、詳しくは知らない。


  









「――――――あれは道か?」


 一、二時間歩いたか……森の中を進んでいると、ようやく木々がない土の道を見つけた。

ひとまず助かったと息を吐きつつ、俺はそこへ足を運ぶ


――――――あと少しで道に出るところで、突然辺りに女の悲鳴が響いた


「キャァァァァァァ!!」

「っ!?」


 俺は聞こえたと同時に木の陰に体を隠し、辺りを見渡す


――――――あそこか……


 俺が最も望んでいた道の先……そこに一台の馬車が倒れている。

その横には俺と同じような身なりの男たちが数人倒れており、体を血で濡らしている。


 うげ……生首まである……


 自分は殺しをやらないが、他人が殺して出来た死体はよく見ているため、耐性はついている……だが生首はまだ流石に慣れきってない。それでも食欲が激減する程度で済んでるのは、日本にいた頃では想像できないことだ。



 死体に気をとられていると、数人の汚らしい身なりの男たちが下品な声とともに登場した。


「オラオラァ! てめぇらさっさと積荷奪え!!」

「金目の物袋に詰めろ!」

「おいこの娘どうするよ? まだちょいとガキだが見た目はいいぜ?」


「やめて……ください……」


 なるほど、盗賊か。五人……随分と過激な盗賊たちだな、俺が知り合った盗賊団は殺しを省いてもっと効率的に作業してたぞ?

 

 見たところ商人の馬車が襲われているようだが、あの女の子はなんだ?


「売っちまえ売っちまえ! どっかの変態貴族が買うだろ」

「そうだな!」

「てか俺たちも運がいいぜ! こんな弱ぇ護衛しか雇えねぇ商人にめぐり合うとはな!」


「お願いします……私の商品を返してください……」

「っ!! うっせぇ!」

「あうっ!」


 ――――――驚いた、あの子が商人なのか


商品を返せと言いながら女の子が盗賊の足にしがみついたが、蹴り飛ばされてしまう。


「おい! これから商品にすんだから傷つけんなよ!!」

「チィ!! こいつがきたねぇ手で触ってきたのがわりぃんだよ!!」


 きたねぇのはどっちだと突っ込みたくなったが、その前に俺は少し考える。


あんな奴らを相手するのはぶっちゃけめんどくせぇ……何がって、仲間がいたら報復がありそうだからだ。そいつらまで相手するのは本当にめんどくせぇ……


「――――――だーからってここで女の子助けねぇ男はいねぇんだよな……」


 めんどくせぇのは本当、けど


「ここで助けねぇと昼食まで不味くなりそうだっ!!」


 助けられないんじゃなくて、助けないんじゃ後味が悪すぎる。やらない後悔よりもやって後悔だ。

俺は木の陰から飛び出し、盗賊たちの元へと駆ける。

元々大した距離がなく、あっという間にその場についた俺は、不意打ち気味に背後がお留守の盗賊に向かって拳を振り抜く


「オラァ!!」

「がっ!?」


 背中の気配に気づいたときにはすでに遅く、俺の拳は盗賊の背中を打っていた。

盗賊は海老反りになって吹っ飛び、地面を転がった。

それにしても弱い……魔力強化すらしてねぇぞ?最近の盗賊はたるんでやがんな


「まあ安心しろ、背骨は無事だぜ」


地に倒れ伏し呻く盗賊に言ってやる。まあしばらく動けねぇ痛みだとは思うがな


「何もんだ!?」

「てめぇよくも!!」


おっと……


さすがに気づいた盗賊たちが戦闘態勢を取ってくる。

比較的近くにいた二人がナイフを抜き、同時に飛びかかってきた。


「コンビネーションくらい考えとけや……」


 俺は馬鹿みたいに一直線に突き出された二つのナイフを、体に届く前に手首を叩いて落とさせる。

そのままナイフが地面に落ちる前に、俺は両腕の拳をそれぞれの腹部へと突き入れた。


「かはっ……」

「がっ……」


「はい、後二人~」


 腹部に打撃を受けて一時的に呼吸困難になっている二人を地面に転がし、残り二人へと足を運ぶ


「ッチィ!! ずらかるぞオイ!!」

「く、くそ!! なんだよあいつ!!」


 残り二人は俺に敵わないと踏み、背を向けて森の中へと駆け出していく。判断力だけは悪くねぇな。


だが


「甘ぇ、逃がすか」


 俺は転がっていた盗賊の一人を力を込めて蹴り飛ばし、もう一人も同じように逃げた二人へ向かって蹴り飛ばした。


「なっ!?ふざけ―――――ぐぉ!?」

「ぎゃぁぁ!!」


「ゴール……ってな」


 仲間同士で衝突して森の中を転がる姿を見て、俺は笑いが隠せなかった。

そいつらの元へ行こうと足を踏み出すが、踏んだ地面の感触に違和感を覚え下を見てみると、そこには最初に殴り飛ばした盗賊が、うめき声をあげてうつ伏せに転がったままだった。


「おっと、忘れるところだったな♪」


 俺はそいつの襟足を掴み、引きずりながら連れて行く。


さーってと、もうちょっと遊ばせてもらおうかな






 俺が転がった盗賊たちの元へ来ると、先ほど逃げた二人が小さく悲鳴をあげて後ずさった。 

おっほぉ~すっげぇ怯えてんじゃん


「ひっ……」

「ま、待ってくれよ……荷物ならやるからよ……み、見逃してくれよ……」


 蹴り飛ばしてしまった二人は気絶してしまっているようで、ピクリとも動かない

俺はくだらない提案をしてきたそいつに、パキパキと拳を鳴らすことで答える


「た、頼むよ……勘弁してくれ……」

「それをあの女の子が言ったときに受け入れてりゃ、俺も首を突っ込まなかったんだがな……

ああ……安心しろ別に殺さねぇよ」


 そう言ってやると男は安心したように息を吐く。


ここで俺のことをよく知っている奴が見れば、こいつらに「ご愁傷様」って言うんだろうな。みんな失礼だぜ


「み、見逃してくれんのか!?」

「んなわけねぇだろこちとらテメエらのせいで食欲激減したんだぜ?」


 食べ物の恨みだけは俺も許せねぇんだよなぁ……人間の三大欲求の一つだぞこの野郎。


―――――ん?別に食べ物の恨みじゃない?こまけぇこたぁいいんだよ


こいつもそんなことで……って顔しやがる。てめぇらに食欲はねぇのか!!


 とは言っても……さすがにそれだけじゃねぇよ


「それにな、男として嫌がる女に手を挙げるやつを許せるかってんだ」


 盗賊の顔がどんどん青くなる


―――――ん?お前も暴力振るってんじゃねぇかって?だって相手はエルカだもん、あいつは喜んじまうからノーカンだ


「―――――てなわけで、ちょいと付き合え悪党ども」


 ん?どっちが悪党かだって?


―――――さあ?

少なくとも俺は勇者なんてたまじゃねぇよ


「安心しろ、死なねぇ程度に壊してやっから」


 ―――――そう言った時にはすでに盗賊の意識はなかった。

あんまり殺気を出したつもりなかったんだけどな……真っ青な顔で泡吹いてやがる……


「だらしねぇ」


 俺は盗賊五人を抱え、魔法袋から取り出した強靭なロープで一人ひとり木に縛りつけていく。

ま、運が良ければ助かんだろ。










道に戻ると、先ほど蹴り飛ばされた少女が駆け寄ってくる


「あ、あの!! 助けていただいてありがとうございます!」


 全体的に水色のブカブカの服を着て、少し砂のついてしまっている髪の毛は黒く、ショートヘアーで前髪がぱっつんになっている。顔は小さく可愛らしい目が特徴的だ。歳は12~15ってとこか? こんな歳でよく商人なんてやってるな


「ん、ああ別にいいぜ。目の前で襲われてちゃさすがに見てられなかっただけだから、お前に聞きたいこともあったし」


 と言っても、盗賊を絞めてる途中で、彼女に港町までどう行けばいいのか聞けばいいと思いついたんだがな。


「ふぇ? 聞きたいことですか?」

「ああ、港町まで行きたい。道分かるか?」

「そ、そうなんですか!? わ、私もなんです! 道ならわかりますよ!」


おお!やったこれで迷わねぇ!


「よかった! さっそく教えてくれ!」

「あ、その……道は教えますが……」


なんだ……?勿体ぶらずに早く教えて欲しいんだが……


「わ、私の護衛になっていただけませんでしょうか……」

「――――――は?」



――――――これが、俺と幼き商人ルリの最初の出会いだった



次回は亡くなった人の弔い、それとルリについてから始まります

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この度新作を投稿させていただいたので、告知させていただきます。 よろしければ、ぜひブックマークや評価をいただけると嬉しいです! 世界を救った〝最強の勇者〟――――を育てたおっさん、かつての教え子に連れられ冒険者学園の教師になる ~すべてを奪われたアラフォーの教師無双~
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