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感染狂心メトロポリス  作者: 南雲 楼
一章 感染者
13/17

12 休息

「全くアンタは!」


 ゴチンと音を立てて喰頼の頭頂部に拳骨が振り下ろされた。顔をしかめて拳骨の主を見る。あまり痛みには慣れていない。少しだけ涙が滲みそうだ。


「どれだけ凪木ちゃんに無理させれば気が済むの!」


 喰頼と凪木の住居の近くの診療所。喰頼は凪木を家に送る途中で、常連となりつつある診療所に寄っていた。凪木の傷は先程の一件で全て直ってしまったとはいえ、念のため医者に見せておくに越したことはない。


 そして、その医者に説教を食らうことになった。


 喰頼の頭に一撃を見舞った医者、山吹は待合室の椅子に座る喰頼の隣に腰を下した。


 山吹の腰の上あたりまで伸ばしたブロンドの髪が揺れる。毛先はパサパサと荒れていて、その髪色が染められたものであることが分かる。感染者ではない。


「……凪木は?」


「別の医者が検査してるよ。あの娘の事だから、問題はないって分かってるけどねえ」


「おう、ならいいわ、ありがとな」


 喰頼はぶっきらぼうに言うと、首からぶら下げた安全ゴーグルを指で弄ぶ。凪木が戻って来るまで暇だ。そんな考えを見通したかのように山吹は口を開いた。



「あんたの仕事中に怪我したって聞いたけど、結局仕事はどうなったのよ? 確か窃盗事件を起こした感染者の捕獲……だっけ」


「おう。精神の変調のせいで、窃盗中毒になってたガキ一人捕まえてきた。そんときに偶然凪木と会って話したんだが……その標的のガキが凪木に手ぇ出しやがってな。捕まえてクソ社長に預けてきた」


「あら、じゃあその窃盗犯はもう御用になったのね。昼のニュースで流れたのかしら」


 壁にかかった時計に視線をやる。時刻は十三時五分だ。昼のワイドショーは終わったばかりの時間だろう。だが、連続窃盗事件を起こした少年が逮捕されたという話題は放送されていない。番組を見ていない喰頼も知っている。


「いーや? あのガキは社長が聞きたいことがあるとかでな。連れて行っちまった」


「聞きたいこと……?」


「ああ、詳しくは知らねえけど、あいつを捕まえたら情報を吐かせろって別の依頼があったらしい」


 部外者である凪木がいたせいか、現場に到着した都日が“聞きたいこと”について喰頼に教えることはなかった。気にはなるのだが、凪木の検査と昼食の方が大事だ。

 都日もそれを理解していたのか、午後からの休みを言い渡された。仕事は終わっている。事務所にいてもやることはない。


「そうだったの。じゃあ都日さんに連絡する前に犯人が警察に捕まっていたらそっちの依頼は失敗になっちゃった訳か」


「あー、まあそうだな。けど、俺が捕まえた場合に関しては通報の前に連絡しろって規則だし……先越されない限りは問題なかったんだよ」


 そう考えると、朽が運良く警察の目を逃れていたことには感謝したい。鳶の仕事が減ってしまっては、喰頼と凪木の生活にも関わってくる。



 山吹は「それにしても」と前置きして話題を切り替えた。


「こういう話が聞けると、あんたも真面目に働くようになったんだーって少し感動しちゃうね」


「は? しょっちゅう話してるだろ」


「だからしょっちゅう思うんだよ。あんたがこの地域に流れてきたときから見てるけど、当時は『働き方が分からない』なんて言って破産しかけてたじゃない」


 頬が熱くなる感覚。「うるせえよ」と吐き捨てたところで赤くなった顔は平時の物には戻らない。昔の話は恥ずかしいからしないでほしい。そう視線に込めて反論したが、山吹はケラケラと笑いだしただけだった。



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