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異世界バトルドロイド軍団  作者: サイリウム


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19/39

19:やばいのと小豆


『魔物の大討伐計画』。


白髪赤眼戦艦艦長こと、ミクニが音頭を取って行われた作戦である。


主目的は今後大量に必要となるだろう『魔石』の大量確保ではあったが、時たま彼女たちの拠点に襲い掛かって来る魔物たち。それらを、これを機に間引きしておこうという意味合いも持っていた。


確かに彼女達からすれば、襲撃をしてくるゴブリンやオークは雑魚の部類。


しっかりと狙ってブラスターを当てるか、とりあえず数撃ちゃ当たるの精神でばら撒いておけば勝手に死ぬか逃げ帰っていく。時たまドロイド側がポカをやらかして破壊されることは有れど、特に何かしら対策を練らなければならない相手では無かった。


けれど、ウザいものはウザいのである。


言ってしまえば、目の前をウロチョロ飛び回っている虫みたいなもの。払っても払っても沸いてくるし、向こう見ずな突撃もしてくる。さらに後処理の為に船の中でも各段にヤバいドロイド、『マッド』の所に死体を運びに行かなければならない。本当に勘弁してほしい。


とまぁそんな意見がドロイドたちの中で溜まり、ストレスになっていたのだ。


そんな時。彼らの頂点であるミクニが、



「魔物たくさんぶち殺して魔石手に入れるぞ♡ 沢山集めた奴にはご褒美上げちゃう♡」



などを言い始めれば、もう大騒ぎである。


戦うために生み出された彼らは、血の気の多いものが多い。上の指示から合法的にムカつく対象をぶっ飛ばせて、なおかつ上手く行けばご褒美までもらえるのである。中には意気込み過ぎて指示を聞かず、勝手に森の中に突っ込んでいくドロイドもいたが……(その後確保され“再教育”処分)。


まぁとにかく、バチバチにやる気が入っている。


D1ドロイドだけで構成された、この『第227臨時魔石回収小隊』もその一つだ。



『うぉ~! コロスコロスコロス!』

『コイツ物騒だな……。』


『う~ん、良い天気☆』

『遠足だ遠足! オヤツ欲しい!!!』

『こっちは暢気すぎるだろ……』


『ハイ! 頑張リマス! ハイ! 仕事シマス!』


『……こいつは?』

『“再教育”で人格コアがイカれたらしい。』

『マ?』



武器を振り回しながら呪詛を吐く戦闘のドロイドに、あまりの剣幕に思いっきりひくドロイド。空を眺めながら一句詠もうとするドロイドもいれば、食事機能など付いていないのにおやつを所望するドロイドまで。


一応彼らは作戦行動中なのであるが……。本当に何とも言えない雰囲気を醸し出していた。


まぁコレが、D1ドロイドクオリティ。指揮官がいない場合のドロイドたちである。本当に、不安しかない。何故編成担当者ここにもう少し真面なドロイドを入れなかったんですか、と問い詰めたいところだが、彼らには致し方ない理由があった。


何せ小隊長を拝命したD2ドロイドが、本来ありえないはずの胃痛に苛まれ急遽後方に移送されたのだ。



『小隊長、大丈夫かなぁ~。』

『大丈夫じゃないだろお前……。』


『勝手に隊列から離れて迷子になりかけたのが駄目だったか……!』

『ダメに決まってるだろ馬鹿。』

『後なんか先頭に立ってるアイツが、動体物すべてにぶっ放してるってのもあるだろ。』


『うぉ~! コロスコロスッ!!!』


『『『こわァ……』』』


『ハイ! 頑張リマス!』



隊列から離れどこかに消えようとする同僚を押しとどめ、風になびく草木にすら発砲する同僚にため息をつくドロイドたち。これほんとに任務ちゃんと熟して帰れるかなぁ、という言い知れない不安が彼らの中に漂っていた。


まぁそもそもの話。今回の作戦では部隊指揮官が退却した時、同行していたドロイドたちも一緒に帰るよう指示が出されていたのだが……。一見マトモそうに見える彼ら含めたその全員が命令を忘れ、そのまま任務を続行してしまっている。


故に帰れば全員大目玉が確定しているのであるが……。ドロイドたちはそんなこと一切知らず、てくてくと魔物を探し森の中を歩いていた。



『というか、そこの“頑張る!”とか、“仕事する!”ってずっと叫んでる奴は何? なんか再教育とか言ってたけど。』


『あ~。アレだよアレ。やらかしたドロイド用に色々ぶち込むやつ。基本教練指導プログラムとかだっけ? D1ドロイド用の奴は質が悪いみたいでさ。偶にあぁ成っちまうらしい。』


『はぇー、怖ぁ。』


『ハイ! 頑張リマス!』



そう元気に叫ぶのは、ちょっとおかしくなっちゃったドロイド。


元々はこの星にやって来てすぐのころ、始めてゴブリンを見つけた時に誤って攻撃してしまった『第334臨時偵察小隊』のドロイドだったのだが……。ミクニから“再教育”処分を受け、彼らの言う基礎教練指導プログラムをぶち込まれちゃった存在になる。


元々このドロイドは若干攻撃的ではあったが、モフモフなペットを所望する可愛い奴だった。しかし今では同じ単語を繰り返すだけの悲しい存在に。



『まぁ仕事は熟すし、時間経過で元の性格に戻っていくらしいから煩い以外の問題はないぞ?』


『……煩いの嫌じゃね?』


『わかる。艦長も「え? 今回砲兵使わないのか、って? あはー! 使うわけ無いじゃん! あの砲撃結構煩いし! 後ただの魔物程度じゃ弾の無駄でしょ!」とか言ってた。』


『あ~。なるほど。だから支援砲撃がないのか。』



納得のポーズとして、合点をするドロイド。


彼らの基本戦術は波状攻撃ではあるが、今回のような閉所での戦い。森の中ゆえに障害物が多く視界が遮られる際は、先に砲兵による支援砲撃で全て平らにしてしまうというモノがあった。砲兵もドロイドであるため、数で押し切る彼ららしい方針であるのだが……。


ミクニとしては魔石が欲しいだけであり、可能であれば『継続的』に欲しい所である。魔石を運んで来てくれる魔物を完全に消し飛ばすのではなく、間引きながら一定量を残し、また増えてきたら適度に刈り取る。継続的に入手することを考えていた。


故に自然破壊を避け、一定数のドロイドを派遣するのみに止めた、というわけである。



『にしても、ご褒美ってなんだろ』

『アレダロ、アレ。新開発ノ“魔法銃”ッテヤツ。』

『あ~、アレ! 確かに試し撃ちとかしてみたい。』

『わかる、やってみたよな~。』


『うぉッ!? なんか動いたッ! 死ね~~~!!!!!』



そんな雑談に花を咲かせていた時。急に虚空に向かってブラスターを乱射し始めるD1ドロイドの1体。周囲が『またかアイツ』の視線を送り、彼の行動を無視して更に森の奥へと進もうとするが……。


彼らが一歩踏み出した瞬間。


本来聞こえるはずのない、『弾丸が弾かれた』音。



『……ぇ?』


『やっぱなんかいるぞ! コロスコロスコロス!』


『ま、まて! 無暗に撃つな馬鹿ッ!』



急いで仲間を止めようとするドロイドだったが、やはり乱射されてしまう真っ赤な光弾。そのすべてが目の前にある木々によって生まれた陰に吸い込まれていくが……。


やはり、“弾かれる”音がする。


彼らの武装であるブラスターはドロイド用の安価なものではあるが、その威力は決して軽いものではない。無力化するには一部の合金か、特殊なコーティングが必要な代物。


少なくとも、ドロイドたちが元居た銀河と比べると、各段に劣っているはずのこの惑星で“弾かれて”いい筈がない。


けれど、その願いを否定するように。



『ッ! 何かくるぞッ!』


『う、撃て撃て! やっぱり攻撃ー!』


『『らじゃらじゃーッ!』』


『ハイ! 仕事シマス!』



幾重にも放たれた光弾たちが、やはり弾かれていく。


そしてゆっくりと響く、蠢く音。


大きな足音を鳴らしながら。


その存在が、こちらに近づいてくる。



『ッ! 来るぞッ!』



木々の陰からゆっくりと伸び出るのは、長く赤い首。


固く厚い鱗に覆われ、思わず後ずさってしまいそうな威圧感。


周囲の温度が急上昇し、鼻から噴出される赤い炎


誰もが“ドラゴン”と呼ぶ存在が。


そこにいた。





『『『で、出たぁぁぁあああああ!!!!!』』』


『うぉ~! コロスッ! 死ねぇ!』





思わず叫んでしまうドロイドたち。


しかし彼らとは違いずっと殺意を維持していたドロイドが攻撃を行う。これまでの闇雲な乱射ではなく、しっかりと狙いをつけた精密射撃。そんな彼の研ぎ澄まされた殺意が功を奏したのだろう。本来信用できないドロイドの照準機能が正確な情報を叩き出し、引き金が力強く引かれる。


無論標的は、眼前のドラゴン。


真っ赤な光弾がまるで吸い込まれるように打ち抜かれるのは……、敵の目玉。




『GYU、GYURUWaaaAAAAAAAA!!!!!』




響き渡る、悲鳴。


どうやら先ほどまで弾かれていた鱗とは違い、目玉の防御力はあまり高く無かったのだろう。文字通り彼の目が吹き飛び、その痛みのせいか声を上げてしまっている。けれど……、攻撃を通してしまったということは、『脅威』として見られてしまったこと。


残った方の目玉が、ドロイドたちに憤怒の視線を送る。



『ひ、ひぇ!?』


『うぉ~! まだまだ! 撃つぞ撃つぞ撃つぞ!!!』

『ハイ! 仕事シマス!』


『ばッ! お前ら! 逃げる、逃げるぞ! ブラスター弾かれたのなら意味ないって! 撤退、撤退ー!!!』


『わ~! 逃げろ逃げろ~!』

『通信兵ー! 支援要請を出せー!』

『死にたくなーい!!!』



ドロイドVSドラゴン。


SFとファンタジー。その戦いの、始まり始まり。







◇◆◇◆◇







「んふんふ~! トロピカルな感じでいいですな~! ……このジュース美味いな。もっと買っておけば良かった……!」


『何やってるんですのこの人。』



煩いなぁおばさん! 見てわからないの!


素敵なパラソルに、ビーチチェア! あとはサングラスとトロピカルな飲み物! 夏真っ盛りのビーチ気分ってやつですよ! ほらほら、そろそろ暦上は夏なわけですし! 気分だけでも整えていきませんと!


あ、ちなみにこの星の季節は多分春なので、思いっきり季節外れになります。はい。


で、でもこっちの銀河なら時期的に夏なんだからねっ! 勘違いしないでよね!



『何を勘違いするので? というか、また新しいのが出てきましたわね。一体どれだけ食料溜め込んでますの貴女?』


「ざっと50万食くらい?」


『ごじゅッ!? ……頭おかしいですわね。うん。』



ひどいな~、もう!


悪口を言って来るおばさんこと、交渉ドロイド。彼女にお返しにとべー! と舌を出してやりながら、ちょっとだけ思考を回していく。


私の趣味の一つが食事ということは以前も伝えたが、この巨大な船には幾つか食糧倉庫のようなものが存在している。普段はドロイドしか乗らない船だが、偶に人間さんがやって来ることもあるのだ。客室などと合わせて多少の備えはしているわけだね。


んでこのミクニちゃんはほぼそれを独占しまして、一部改造。巨大な食糧倉庫を作り上げちゃったわけです! んふ~! 連合国の古今東西の食材を粗方叩き込んだ素敵な倉庫なんですよ!


あ。ちなみに私食べる時は滅茶苦茶食べるので、腐らせたりとかの心配は皆無です。そもそもの保存技術が“現代”とは違いますし。



(ん~、それにしても。工作兵にでも頼んで小さなプールでも作って貰うべきだったかな?)



そんなことを考えながら、再度ジュースに手を伸ばす。


現在私の配下のドロイドたちが、魔石を集めるために大規模な作戦行動に入っているのだが……。トップである私は、絶賛暇を持て余している。


何せ大規模作戦と言ったが、『私が全力を出す必要がない』規模のもの。流石に惑星丸ごとどうにかしろ! って話になったらこちらも重い腰を上げなければならないが、今回の作戦範囲はこの墜落した森のみ。限られた範囲でしかない。



(下の子達、戦術ドロイドたちで十分熟せるのなら、やってもらうべきだよねぇ?)



どんな組織でも、トップが下の仕事を取るわけにはいかない。


何せ頂点に立つのであれば、全体の方針を定め引っ張って行かなければならないのだ。社長が一般社員でもできる書類仕事にかかりっきりで会社が傾くなど、やってはならないこと。故に私も、部下が出来る仕事であるならば、全部任しちゃうというわけだ。



『……貴女の場合、自分が楽したいだけでは?』


「あ、バレた?」



んまぁそんなわけで。ミクニちゃんはとっても暇してるわけである。


持ち込んだ食料で料理してみたり、未だ格納庫にいるドロイドたちと遊んでも良かったのだが、たまには違うこともしてみたい。というわけでパラソル引っ張って来て、話し相手におばさんを召喚。ビーチチェアに寝転びながら、怠惰な時間を過ごしてるってわけです。


あ。プールは作ってないけど、その辺をほっつき歩いていたD1ドロイドを徴用して、波の音は出させてるよ! ほらざるに小豆を乗せて傾けさせて再現する奴!



『ア、アノ~。艦長? コレ、イツマデ?』


「え、一生。」


『ソンナ!?』


『相変わらずドロイド使いが荒いですわねぇ。』



特に意味の無い会話を楽しみながら。


手元のトロピカルでケミカルなジュースを楽しんでいると……。急に飛んでくる、配下からの通信。……戦術ドロイド、信号のタイプからして、予想外の何か。即座に意識を“高位戦術ドロイド”のモノへと切り替え、応答する。



「何があった?」


『艦長ッ! ドラゴン! ドラゴンが出ました!!!』


「……はぇ?」



聞こえてくる言葉につい幻聴を疑ってしまうが、同時に送られてくる映像資料を確認し、正気に戻る。


巨大なトカゲのような肉体を持ち、長い首と羽。頭部には角が生えており、真っ赤な鱗で覆われている。一瞬だけだが鼻から火のようなものを吹いており、体内に発炎機関があることが推測できる存在。



「……ドラゴンじゃんこれ! いやかなりドラゴンだよコレ!!!」


『だからそう言ってるでしょうがッ! 支援要請が届いています! 救援するならば早めのご判断を!』


「ん~、おけおけ。ちょっち待ってね?」



そう言いながら、思考を更に高速化させる。


そして参照するのは、上がってきていた作戦資料。


助けるにしても、見捨てるにしても。近くにいる部隊の情報とか、周囲の地形とか。見るべきものは多いからね~。担当の子が自分では判断しきれないと考え、指示を求めに来てくれたわけだ。上としてはパーペキなものをお出ししませんと!



(……にしても、ファンタジーの代名詞さんが出てくるとはねぇ?)



支援要請が飛んできた位置を確認してみたが、私達がいるこの船からそれほど遠くない場所だ。


そして更に、ここは一度調べた所。最初の索敵、ゴブリンとかエリンちゃんを見つけた時に放った偵察小隊も同じところを通っていて、その時は何も見つからなかった。つまり、この短期間でやって来た存在だと言うことが分かる。


背中に大きな羽が付いていることだし、飛んでやって来たのだろうが……。



(それだと、ウチの防空網に反応していないのがおかしい。……今日見つけられて良かったな。)



不明点は多いが、見つけられたのであればそれでいい。


早急に問題を洗い出し、原因を見つけ、対処する。


まぁそのためにも……。



(このドラゴン。出来るだけ綺麗に仕留める必要があるね。『魔石』のことも、あるわけだし。)



送られてきた映像。ドロイドたちが見ていた映像を確認してみれば、相手はブラスターを跳ね返す鱗を持っていることが分かる。そしておそらく、そのうろこに“ステルス性能”が付いていることも。


現状こちらに生け捕り用の装備が無いため、とっ捕まえるのは難しいだろうが……。


ほぼ全身が残った状況で絶命させ、調査に回すことが好ましい。


それに今回の作戦の主目的であった『魔石』も、必ず欲しい所だ。



(エリンちゃんとか、村の人から聞いたんだけど……。魔石の大きさや質ってのは、魔物の強さに比例するらしい。あのドラゴンがゴブリンよりも弱いってことはないだろうから……。かなり良質なものが手に入る事だろう。)



ん~! そうと決まればパパっと決めていきませんとね!


正直に言うと、今回襲われてるD1ドロイドたちは替えが効く存在なわけだ。沢山いるわけだし。でも何もせずに見殺しにしちゃうのは……、寝覚めが悪くなちゃう。だから全員助ける方向性で、なおかつ相手に必要以上の傷を与えずに、倒す。


ちょっと難しいオーダーな訳だが、熟して見せるのが腕の見せ所。


とまぁそんなわけで。


高位戦術ドロイドの能力、とくとご覧いただいちゃいましょう!



「よし! 付近の『D3ドロイド』と、『砲兵ドロイド』に通達! お仕事の時間だよ!!!」





〇あずきD1ドロイド


D1ドロイドたちの通常業務の1つである戦艦内の警備を行っていた際、ミクニに捕まり急遽抜擢されたドロイド。ミクニが何処かから持ち込んできた『ざる』に一定量の『小豆』を置き、適度なタイミングで揺らすことで波の音の再現を命令されている。


最初は本人も面白く思い、楽しくやっていたのだが……。普通に3分後に飽き、若干苦痛になっている。早くやめたい。


実はその後、停止命令を貰い損ねてしまい、これから一月ほど小豆を揺らし続ける羽目になった。艦内で警備任務を熟しながら虚ろな目で小豆を揺らしているドロイドとは彼の事である。無論、あだ名はあずきになった。


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