2
「やってません」
「最初はみんなそう言うんだ。被害者の女性が証言してるんだ。間違いない」
痴漢と間違われた僕は、駅員室に連れて行かれ僕の話をたいして聞くこともなく、警察を呼ばれた。こういったことはよくあるのだろう駅員の対応は、女性が満足するほどスマートで、僕が嫌悪感を感じるほど手際が良かった。
「ここでラチが開かなければ署まで来てもらうしかないな」
もし、ここで早く逃れたいが為に、嘘の証言なんかすると、自分に不利になる。逆にここで無実を証明できれば冤罪で済む。
だが、やっていないという確かな証拠がないのもまた事実。ないものを証明するのは、あるもの証明するより遥かに難しいのだ。
「あの、すいません」 駅員室に入ってきたのはどこぞのおばちゃんだった。
「私見てたんですけど、彼は違うと思います。本当の犯人はこっちです」
おばちゃんが、指を指した先には、中年の男がいた。どうやら痴漢犯を捕まえてきたらしい。なんともパワフルなおばちゃんである。
「ということは、彼は犯人じゃないということか……」
「だから、最初から言ってるじゃないですか」
真・犯人も捕まり無事、事件は解決した。
「いやー、悪かった。こういうことはよくあるんでつい疑ってしまいした。お詫びします」
疑いも晴れ、警察も駅員もころっと態度が変わった。
しかし……。
「いいえ、許せません」
事件は解決しても、僕に対する対応については解決していない。これからが本当の戦いになるだろう。