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失敗

首元が、焼けるように熱くなった。

 遅れて、音が来る。

 高すぎて、もう音と呼んでいいのか分からない振動が、頭の内側を直接揺らした。

 ――あ、これは。

 そう思った瞬間、膝が折れた。

 床に落ちる感触はなかった。

 代わりに、身体の輪郭がほどけていく。手も足も、自分のものではなくなる。

「抑制装置、強制起動!」

「レベル三、対象霧島澪!」

「意識遮断、急げ!」

 声が重なって、遠ざかる。

 視界の赤が、白に滲む。

 最後に見えたのは、床に横たわる“それ”だった。

 途中まで、作り直されかけたもの。

 人の形を、思い出そうとして――止まった物。

 ――ごめんなさい。

 声にはならなかった。

 次の瞬間、世界が裏返る。

 目を覚ましたとき、私は天井を見ていた。

 白。

 でも、実験室の白とは違う。

 照明がなく、影がない。まるで最初から「見ること」を想定していない空間だった。

 身体が、動かない。

 手首、足首、腰。

 柔らかい素材で固定されているのが分かる。拘束というより、保護に近い感触。

 首元が、異様に軽かった。

 ――抑制装置が、ない。

 遅れて、怖さが来る。

 能力が使える状態で、ここにいる。

 それが意味することを、私は知っていた。

「起きてる?」

 横から声がした。

 視線だけ動かすと、ベッドの脇に椅子が置かれていて、そこに少女が座っていた。

 私と同じくらいの年。短く切られた髪。囚人服。

 目が、妙に生きている。

「やっぱり。目がそうだと思った」

 少女は立ち上がり、こちらを覗き込む。

「ここ、再評価区画。

 簡単に言うとね――」

 少し間を置いて、笑った。

「まだ廃棄するか、決めかねてる人の置き場」

 私は、喉を動かそうとして、声が出ないことに気づく。

 少女はそれを見て、肩をすくめた。

「あー、大丈夫。最初はみんなそう。

 そのうち慣れるよ。

 感情も、恐怖も、ここじゃ全部――素材だから」

 素材。

 その言葉が、胸の奥で引っかかる。

「ねえ」

 少女は、私の固定された手に視線を落とした。

「あなたでしょ。

 作る人」

 否定しようとして、できなかった。

 少女は、少しだけ真剣な顔になる。

「だったらさ。

 今度は、ちゃんと最後まで作ってよ」

「……何を?」

 やっと出た声は、自分のものじゃないみたいに掠れていた。

 少女は、にやりと笑う。

「決まってるでしょ」

 彼女は、自分の胸を指さした。

「――ここを、壊したもの」

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