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概ね善良でそれなりに有能な反逆貴族の日記より  作者: ふーろう/風楼
第三章 幸福への道

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行動開始



 先触れ……と言うか正式な使者が来た。

 

 軍務伯が結婚式への招待を受けて参列してくれる旨を知らせるものだ。


 思っていた以上にあっさりと決まって驚かされたが、もしかしたら滞在先であるカーター子爵が気を利かせて上手くやってくれたのかもしれない。


 そして先触れも来た。


 南から……南領領主と王女がやってくるという先触れだ。


 驚いたことに南領に来ていたのは王女だったらしい、そして二人は結婚式とは全く関係なくこちらにやってこようとしているようだ。


 いや、関係ないということはないか、結婚式のことは嫌でも知っているはず、知った上で無関係という体でこちらにやってこようとしているようだ。


 王城には招待状を送ってある、それには当然王女も含まれている……招待状と入れ違ってしまってそのことを知らないという可能性もなくはないが、王族ならば連絡方はいくらでもあるはずだろうし、噂やら何やらで知っているはずだ。


 つまりは知った上でなんでもない顔をしてやってこようとしている、参列はしないという意思表示でもあるだろうが……だったら時期をずらすなりしたら良い訳で、わざわざ今来るということは何か他に思惑があるということだろう。


 ……そしてそれは絶対にロクでもねぇことなんだろうなぁ。


 結婚式の妨害か、他の何か……我が家の名誉を傷つけようとしているのかもしれない。


 本音を言うとそんな相手、良い機会だからと先んじて殺してしまいたい所だが、王兄に続いてとなると流石に問題がありそうだし……王兄程のことをやらかした訳でもない。


 それにせっかくの慶事が待っているというのに、こちらからそんな騒動を起こしたくはないし……向こうから何かしてくるまでは様子を見るべきだろうなぁ。


 そうすると先触れにどう対応するかが重要で、俺が出した答えはバトラーに『何の用事か知らないが、また今度にしろ』という伝言をさせる、だった。


 当然の反応だろう、これから結婚式で忙しいのに先触れ寄越して時間作れって何事だよ、空気読めよ。


 しかも相手は絶賛敵対中の王族……関係が良いならまだしも、この状況ではなぁ。


 そんな対応をされて先触れに来ていた執事風の男は、目を丸くして絶句していたようだが、逆にどう対応してもらえると思っていたのやら……機会があれば聞いてみたいもんだ。


 そんなトラブルもありつつ、その日が近付いていって……軍務伯の到着を皮切りに次々と招待客が我が領へとやってきた。


 と、言うか恐らく他の貴族達は軍務伯に遠慮していたのだろう。まず軍務伯、それから自分達……みたいな形で。


 そんなご来賓の方々に俺はお祖父様の助言に従って過剰にならない程度の挨拶をし、用意した宿へ案内していった。


 元々迎賓館のようなものを建てるつもりで、ある程度の枠が出来ていたので、そこを急遽仕上げた高級宿……前世のホテルを参考にした最新の宿だ。


 そこでのサービスを受けてもらいながら当日までは自由に過ごしてもらうことにし、特に予定がない人達用の催し物や見学コースなんかも用意して……そこからはもう目の回るような忙しさだった。


「これでも本格的な社交場よりは楽なんだがな」


 なんてことをお祖父様に言われながら駆け回り……お祖父様と母上が手伝ってくれたことで、どうにか問題なく全ての客に対応することが出来た。


 特にお祖父様の存在はありがたいもので、変な難癖をつけようとしてくる客に対して「ではお祖父様に相談してみます」という言葉は最強のカードで……色々と悪名高いお祖父様のパワーを実感することになった。


 俺がそうする間にコーデリアさんも社交に挑戦することになったのだけど……これは全くの予想外だったのだけど、一切トラブルがないどころかほとんどの客に喜んでもらえての大成功となったようだ。


 我が領で受け入れられていると言っても国を挙げての歴史的な迫害対象、それなりのトラブルはあるものと思っていたけども……母上と予想もしていなかった味方、エリザベス嬢が上手くやってくれたらしい。


 既に何度かコーデリアさんはエリザベス嬢主催の茶会に顔を出していて、そのおかげか思っていた以上に仲良くなっていたらしく、そんなエリザベス嬢がしっかりとサポートをしてくれた上に母上のプロデュースが上手くいった結果、なんだとか。


 流行の最先端を行くドレスやアクセサリーに、ケチのつけられない化粧などなど……言葉通りの蛮族のままだったら色々と言われていたのかもしれないが、洗練されたその姿を批判するのは難しく、流行のドレスなどを生来の可愛さで着こなしたコーデリアさんの努力もあっての完勝、ということらしかった。


 もちろんそれなりの「攻撃」はあったようだ。


 可愛さに嫉妬した人もいただろうし、内心で認めながらも立場上そうせざるを得ない人だっていたはずだ。


 しかしコーデリアさん、母上、エリザベス嬢の連携を突破することは出来なかったようで……それを見てか、今後のことを考えると味方をした方が良いとの流れが出来上がり、攻撃していた人達は今ではすっかりと鳴りを潜めているそうだ。


 ……もしかしたら俺よりもコーデリアさんの方が上手くやっているのかもしれない。


 俺の方はどうしても若輩と舐められる部分があるし、本当によく分からない難癖をつけられるしで、お祖父様カードがあっても大変だった、面倒くさかった……。


 特に多かったのが性犯罪関連の難癖で……何の証拠もないのに俺を性犯罪者にしたがる一派が存在していた。


 王都付近から来た連中が証拠もないのにやいのやいのと……そもそも王都付近の連中がどうして俺のそういった事情を知っているというのか、難癖にしてもやり方も質も悪くて呆れるばかりだった。


 お祖父様からもまともに相手してはアレと同類に見られるし、必死の否定は逆効果というアドバイスがあったので、相手をしないことにしているが……何なんだかなぁ。


 ……恐らくは王族絡みの連中なのだろうなぁ、王太子関連なのか王女関連なのかは判断に迷う所だが、変に焦っている辺りを見るに劣勢の王家をどうにかしようと動いているのだろう。


 迷惑な話ではあるけども、その程度で済んでいるのなら笑い話の範疇だ、式にも参列してくれるのだから文句はない。


 そして……軍務伯は何というか、いかにも貴族貴族した貴族だった。


 イメージする貴族そのまま、仕草も言動もいかにもな貴族、だけども嫌味さはなく爽やかで……洗練された貴族らしさがあった。


 金持ち喧嘩せずと言うけども、この場合は上位貴族喧嘩せずと言うべきか……余裕があって小さなことにはこだわらず、多少の無礼も笑って許せる度量があって、確かな知性も感じ取れる。


 試してみろとお祖父様に促されて俺がわざと「リュート軍務伯」と家名を間違えた際には、表面では笑って許してくれた訳だけど後でこっそり、


「試し方にユーモアがなくていかんな。

 ワインを傾けながら笑い話に出来る内容なら文句無しだった。

 ああ、あの招待状は中々のユーモアだった、ああいう形であれば良い話題となるだろう」


 と、そんなことを囁いてきて……全てを見透かされていたことに驚いたものだ。


 何しろ軍務伯にはあの招待状を送っていないのだからなぁ……どこで情報を仕入れたやら、本当に驚きだ。


 そんな軍務伯も、あれからも何度も何度も何度も諦めることなく先触れを寄越し続けていた南の動向を把握している様子だった。


「南の貴人については私は承知していない。

 全くもって不愉快な話だ、私の苦労を何だと思っているのか、こちらは介入しないから好きにしたまえ」


 なんて言葉も頂戴した。


 確かに仲介のために動いてくれている軍務伯に無断でそれは何をしているんだという話になるよなぁ。


 ただこの言葉を素直に受け取ることは出来ない、軍務伯が味方だとは言い切れないし、こちらに面倒事を押し付けているようにも取れるからだ。


 介入しないだけで見逃すとも言っていない点がポイントで、下手な動きをしたなら咎めてくることは明白……結婚式後に行われる予定となっている会談でのカードにしてくる気なんだろうなぁ。


 という訳でまずは王女対策をしながらの結婚式を無事に行い、それから軍務伯との会談を行い……王兄騒動の賠償を引き出しての勝利を目指す、というのが俺に課せられたタスクとなっている。


 この辺りの事情はライデル達にも共有した、結婚式中は対応が出来なくなるからある程度の裁量を与えた上で、対応をさせることにした。


 これで上手く行ってくれるかは分からないが……上手くやるしかない、コーデリアさんとの結婚式を無事成功させるために。


 そうこうしているうちにいよいよ結婚式前日……俺は明日の本番のために気合を入れ直し、今日のタスクに挑むのだった。



――――屋敷近くの倉庫で ルイス



「また南から侵入者だ、これで何人目かな、いい加減目的を吐かせたい所だけど……動きから見てお屋敷が目標かな」


 そう声を上げながらルイスに倉庫に入ってくると同時に、縛り上げられた男を放り投げる。


 すると倉庫の荷物の陰などからルイスの仲間達が現れて……縛り上げられた男の様子を確かめてからどこかへと引きずっていく。


「これから結婚式って忙しくしているお屋敷を探ろうとしていて……だけど連中の親玉は参列はしないつもり、と。

 そうなるとやっぱり邪魔したいんだろうね、貴族の女は他の男と一緒にいたってだけであれこれ言われるらしいから、そこら辺りが狙いかな。

 兄貴のお姉さんもその辺りの騒動で大変だったらしい。

 ……で、兄貴は待ち構えて対処するつもりらしいけど、それじゃぁ手遅れになるかもしれない、相手の思惑通りになるかもしれない。

 ってことでこっちは勝手に動くことにするよ、待たずに攻める、相手がそう来るならこっちも同じ手で行く。

 相手がどこの屋敷にいるかは調査済み、そこを狙って動けばあっちだって警備のために人員を割くことになるだろうから、攻め手が減るはず。

 兄貴達の警備には我が領の最強、ライデルさんとアレスさんがついてるからね……二人に任せて攻勢に出るよ」


 ルイスがそんな提案をすると反対の声はなく、倉庫の中の人影達はただ頷き、それに同調する。


「特にビフとボガーには期待してるから、凄く鍛えてもらってるんでしょ?

 ならそれに応えなきゃね。

 兄貴達が懸命に戦ってるんだから、こっちもそれ以上に頑張らないとだよ。

 ……兄貴の許可がない作戦だから報酬はないけど、それでも皆は構わないよね?」


 更にルイスがそう続けると、またも一同は頷き……それから本格的な話し合いを始める。


 目標を再確認し作戦を練り、用意した武器や防具をそれぞれ手に取り……そしてブライトの部下であることを最大限に利用して動き始める。


 ブライトは彼らに甘かった、甘やかしていた。だから彼らのために飛空挺まで用意してやっていた。

 

 自分のために懸命に働いてくれているからと……危ない仕事をさせているからと過剰な予算と装備も与えていた。


 しかしルイス達はそれに甘えきることはなかった、ブライトの好意だけは受け取って自重していたのだが……今回は一切の自重をせずにそれらを使うことにした。


 飛空挺の船長や船員はルイスが手配済み、準備万端なそれに乗り込んで……南へと飛び立つ。


 普段使っている航路に紛れ込んで、遠回りをしながら南に向かい、目標がいる屋敷からは離れた場所へと降下用のロープを使い降下。


 そこから屋敷へと向かい……ビフとボガーを先頭にして屋敷の敷地内に侵入していく。


 話し合った方針に従って黙々と。

 

 屋敷の破壊は良い、怪我をさせたり拘束したりするのは良いが殺害はダメ、目標は王女と出来れば南領領主、こちらは出来るだけ怪我をさせずに拘束が目標。


 ルイス達はその通りに行動し……次々に屋敷の中へと侵入していく。


 だけども当然ながら屋敷の内部には相応の警備が敷かれていて……侵入に気付いた警備達との戦闘が開始となる。


 まさか襲撃を受けるとは思っていなかったのだろう、警備は混乱している上に手薄……だが質はよくビフ達でも簡単に倒せる相手ではなく……そうして屋敷内の激戦が開始となるのだった。



お読みいただきありがとうございました。


次回は攻防戦!

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― 新着の感想 ―
この作品の血の気の多い描写大好物
今まで出てきた貴族が貴族だけに、 軍務伯がようやくちゃんと話ができる人が出てきたな、という印象になってしまうw 敵側にちゃんと話ができる人がいないと、相手を滅ぼすまで争いが終わらなそうだしなあ。 そ…
貴人の嗜み、権力者の遊戯として陰謀や工作を楽しんでいたら 無作法で優雅さの欠片も無い辺境の蛮人にカチ込みを駆けられたわけだ。 既に王太子が言動でも行動でも一線を越えている上に 王弟が騎士道の欠片も無い…
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