方針会議
久しぶりのキャラ解説
・バルトロ・デルモ
お祖父様の紹介で雇った騎士、真面目で堅物、堅実な腕を持つライデルに次ぐ副官。
普段は屋敷の外で様々な仕事をしていて不在がち
・マイクロフト
バルトロの副官、バルトロに比べれば劣るが、真面目で堅実な腕を持つのは変わらず、地味で目立たない。
・ジョージナ
美人で貴族達に注目されてあれこれとあった女性騎士、ブライトに雇われてからは姉上の護衛をしながらのんびりとした日々を過ごしている
「母上達は随分とまぁ、やらかしてるみたいだなぁ」
今日も今日とて執務室、だけどもメンバーは少し違い、ライデル、アレス男爵、地方法院に法的なあれこれを確認させるために出向させたバルトロの代理としてマイクロフト、王都の戦力に詳しいジョージナ、そしてフィリップと軍事方面の人物を集めてある。
これから追討軍がやってくる……かもしれないとなっての会議という訳だ。
ただし本当にやってくるかはまだなんとも言えない、そもそも追討軍が狙っているのは男爵であってこっちじゃない、それでこっちに喧嘩吹っかけてくるかは未知数で、現状の士気の低さを思うとそう決断したとしてもすぐに瓦解してしまうだろうなぁ。
「……おかー様はまだ動いてるの? まだなんかやらかすつもりなの?」
俺の言葉に最初に声を返してきたのはフィリップで、相変わらず本棚に寄りかかっているフィリップ以外は、それぞれ用意した椅子に腰を下ろした状態となっている。
「何をするつもりかは知らないがまだ動いてはいるみたいだな。
つい昨日もキャロラインを呼び出して何かをさせようと画策していたみたいだ。
……正直社交界でキャロラインがどう役に立つのか想像もつかないがなぁ」
「ああ、キャロばーちゃん? ならなんかやってくれるんじゃないかな。
ばーちゃんはあれで頭の回転は早いし、肝が据わってるからねぇ、社交界とかでも意外な活躍するんじゃないかな」
「……そう言えばフィリップってキャロラインと仲良かったんだったか」
「うん、ばーちゃんは好きだよ、優しいし可愛いし、それでいて絶対に譲れないことは譲らない強さがあるからねぇ。
兄貴みたいに正面からぶつかるんじゃなくて、裏から手を回してって感じだけどさ。
勝てない相手には無駄に逆らわない冷静さもあって、だけどそのことを絶対に忘れないしつこさもある。
敵に回したら最悪な人だろうねぇ」
確かにキャロラインにはそういった強さがある。
世が世なら警察官とか裁判官とかになっていたのではないかと思うくらいに正義感があって、芯がしっかりしている。
そんなキャロラインの影響は当然俺達にもある訳で、特に影響を受けたのが兄上なんだろうなぁ。
そういう訳で兄上もまた正義感があって芯がしっかりした人物だ、しっかりし過ぎて頑固になり過ぎる部分もあるのだが、それもまたキャロラインによく似ている。
と、そんな事を考えているとライデルが声を上げてくる。
「動いていると言えばシャーロット様も動かれていると報告がありました。
教会関係者に何かを働きかけているようで……数日以内にセリーナ司教様もいらっしゃるそうです」
「……ああ、うん、なるほど。
キャロラインとシャーロット、苦手な二人が同じ目的で動き回っている訳かぁ……」
俺がそう返すとライデルは半目となって、それから言おうか言うまいか悩んだような顔をしてから言葉を続けてくる。
「キャロラインの目的は奥様のために働くことであり、シャーロット様の目的はブライト様のために働くことですから、同じ目的とは言い切れないかと。
特にシャーロット様はその先に良くない目標もありますから、常に警戒をすべきかと考えます」
そんなライデルの言葉に一同がざわつく。
シャーロットのことを知らない者もいれば、名前だけは知っているという者もいて……実際に会ったことのあるフィリップなんかは目を丸くしている。
「……ライデル、あまり勘違いさせるようなことは言うな」
シャーロットの思惑はまぁ……うん、なんとなくは察しているが、流石になぁ。
「……シャーロット様を救出した時、ブライト様は今よりも若く幼さがまだ残っていました。
だから自重をしていただけで、その表情、声、態度からその目標……思惑は露骨でしたよ」
と、ライデル。
うん、まぁ、うん……その頃はまだ中学生って年齢だったからなぁ、それに露骨な態度を取ったシャーロットにも問題があるのは分かっているがなぁ……。
「しかし何かを言ったり何かをしたりした訳でもなく、つい最近まで女性達のケアと保護に徹していた訳だからなぁ、その点は評価してやらないとな」
俺がそう返すと、ライデルは少しだけ渋い顔をする。
結婚はあり得なくても愛人にはするかもしれないと、そんなことでも考えていたのだろうか、それこそライデルの態度と警戒感は露骨に過ぎる。
そもそもとして俺は愛人なんて持つつもりはないからなぁ……そう言えばしっかりとそういう考えだと公言したことはあっただろうか?
……普段の会話では何度かあるが、貴族として公言となると……覚えがない。
態度などでそう示してはいたけども、しっかり公言しておくことも大事なことか。
「一つ言っておくが俺はこの先、何があっても愛人などを持つつもりはないぞ。
コーデリアさんが側にいてくれたらそれで十分だ、貴族としては異例なのかもしれないが、俺はこの考えを生涯貫くつもりでいる、皆もそのつもりで考え、動くように」
この発言に対する反応は様々だった。
ライデル、マイクロフトは余計なトラブルにならなくて済むと安堵しているようで、アレス男爵はどこか焦ったような態度。
……さては、娘を押し付けようとか考えてやがったな。
ジョージナはなんとも意外そうな顔をしていて、フィリップは言わなくても分かっていたと頷いている。
「幸いにして兄上の結婚もそう遠くないだろう、仲睦まじい様子だという報告も届いている。
跡継ぎという意味では不安もないだろうから、余計な世話はしないように。
……で、母上達の動きに関してはフィリップ達に探ってもらうとしよう。
どう対応するかは詳細と目的が分かってから考えよう。
……と、いう訳で話を戻して追討軍だ。
母上が動く以上、更に士気は下がるだろう、離脱者も増えるだろう。
しかしそれでも王の命令とあれば動き続ける者がいるはずで、それにどう対応するか。
あるいは到着前に妨害してしまうか……どう対応すべきか、意見がある者はいるか?」
俺がそう言うと一同はしばらく考え込み、アレス男爵は早々に諦めの表情を浮かべての降参、特に考えはないようだ。
マイクロフトもそれに続く、同じく考えはなしと……まぁ、彼はあくまでバルトロの代理、特に案を出さなくても問題はない。
追討軍と相対するとか、追討軍をぶっ飛ばすとなったら流石に法院の意見意向を無視出来なくなるので、今回の件は法院ともしっかりと連携していかないとなぁ。
次に発言をしたのはジョージナだった。
「個人的には噂の追討軍とやり合うことに抵抗はないですね。
心情的にも戦力的にも問題なく余裕でやれます、伯爵は十分な装備を用意してくださっているので王都の連中と言えど負けることはないでしょ。
不安があるとしたら王太子が作ったという新兵器でしょうか、周辺一帯を容易に平定するほどの兵器ってことですから、伯爵の飛空艇を使っても楽勝と行くかどうかが分かりません」
新兵器か、恐らく戦車……あれから特に話を聞かないので忘れかけていたが、確かに持ち出している可能性もあるだろうなぁ。
戦車が出てきたとして恐らくは勝てる。
アレス男爵に仮想戦車との演習をさせているし対抗策も練らせている、飛空艇での支援や戦闘もどう戦うべきかの研究をさせてある。
数十台出てきたとしてもなんとかはなるだろう、苦戦はするかもしれないが。
……戦力的にも士気的にも問題なし、ジョージナを指揮官にして王太子のやらかしとの対決という象徴的なものに仕上げれば士気も上がることだろう。
後は法的な問題か、公式な追討軍だからなぁ……戦うにも相応の理由がいるし、法院の許可がいるだろう。
「マイクロフト、バルトロはどう言っている? 地方法院の反応はどうだ?
追討軍への対応について助言があれば聞きたい」
そう問いかけるとマイクロフトは背筋を伸ばして立ち上がり、力のこもった声を返してくる。
「は、法院にサー・バルトロが確認中ですが受け入れの拒否権はあるそうです。
調査や捜索に対し伯爵は応じるも拒否するも自由、地方法院もその権利を擁護するそうです。
……ただし戦闘となると話は別です、こちらから手出しをしたなら反乱と見なされ、地方法院とも敵対することになるでしょう」
「あちらから手出しした場合は?」
「それでも地方法院は冷静な対応を求めています、冷静に交渉で解決することが最善だと。
あるいは事前協議をし、追討軍を言葉で追い返すのが理想だとも。
……ポーラ嬢に関しては完全な被害者です、伯爵領に来た経緯も法院は理解を示しています。
暗殺騒動は保護中のことですので、無関係という点も保証してくださるそうです。
そんなポーラ嬢を捕らえること、そのために領内を荒らすことは許されていません、その点を交渉で突くべきだろうとのことです。
またマーカス卿から『私に任せてくれるのなら、全部交渉で最高の形で片付けてあげる、ただしこの老体を動かすからには相応の報酬を用意してね、美味しいお菓子をいっぱい食べたいな』との言葉も預かっております」
……なるほど。
マーカス卿のことだ、言葉の通りお菓子ではなく賄賂を寄越せと、そう言っているのだろうなぁ。
欲まみれの狸爺としては稼ぎ時って訳か……しかしまぁ、選択肢としては悪くない。
マーカス卿がそう言うのなら穏便に解決出来るのだろうし、ここで賄賂をたっぷり送っておけば印象も良くなることだろう。
……が、同時に良いカモだと見なされる可能性も高いし、その程度の男だったと侮られることにもなるだろう。
そうなると地方法院との協力関係にも悪影響が出るのは明らかで……マーカス卿はあくまで切り札、最終手段だと考える必要があるだろうなぁ。
そうなるとまずは事前協議を要求し、それに応じなかったらその点をついて非難をする。
応じたならばさっさと帰れと要求をし……それでもと来るのなら関所で迎撃。
しかし関所がある程度破壊されるまでは手出しをせずに耐えて、十分な被害が出たならそれを理由に反撃開始、かな。
……ああ、そのついでに戦車の攻撃能力も確かめておきたいな、俺が出来るだけ頑丈に作ったあの関所をどの程度破壊出来るのか、この目で確かめられたならそれだけでも価値ある情報となる。
戦車がなかったらがっかりなことになるが……その場合は向こうも関所突破なんて出来ないと早々諦めてくれるだろうし、問題はないだろう。
そう考えてその案を口にすると……その場にいる全員からの賛同を得られる。
「確かに戦車の性能は見ておきたいですね」
と、ライデル。
「相変わらず小賢しい事考えるよねぇ、本当に来ているならついでに走行能力とかもおいらが確かめてくるよ」
と、フィリップ。
「戦車を殴り壊せるものなのか、実物で試せるのはありがたいですな!」
と、アレス男爵。誰も殴り壊せとは言っていないのだが……。
「戦力差を考えれば戦闘も交渉もどちらも余裕かと、交渉の際には連れていってください、戦力差を見せつけた上で、彼らの愚かさを糾弾させていただきます。
それによって交渉も戦闘も有利になるはずです」
と、ジョージナ、拳を握って構えて……やる気満々にも程があるなぁ。
「サー・バルトロも交渉が前提であればお喜びになることでしょう。
戦闘の指揮をデイム・ジョージナに任せる場合は、サーか私を副官に据えてください、その命令を隅々にまで行き届かせてみせます」
と、マイクロフト。
……はっきりとは言わないがジョージナを女性だからと侮る者達も引き締めてみせると、そう言いたいのだろう。
雇っている騎士達にそんな愚か者はいないと思いたいが、男女平等という言葉もまだない状態だからなぁ、バルトロやマイクロフトといった真面目で堅実な、いかにも騎士だといった人物の補佐も必要になってくることだろう。
そしてアレス男爵やドルイド騎士達を先鋒として突っ込ませれば……うん、あっという間に指揮崩壊する様子が浮かんでくるな。
「ではこの方針で行く。
交渉が決裂、戦闘となった際には、関所に多少の被害が出ることになるだろうから今からそれに備えておくよう連絡しておいてくれ。
物資や人員の移動、市民保護のための手順確認、避難用の部屋の掃除……ついでにその時には記者でも呼んで、その様子を記事にでもしてもらうか」
と、俺がそうまとめると一同は頷いてくれて……そうして俺達はその方針通りに行動をし始めるのだった。
お読みいただきありがとうございました。
次回も追討軍のあれこれです




