ホルムズ海峡海戦(Three Knives in a Narrow Gate) #17-3
白昼のホルムズ、“角度”で勝つ回。砲窓(薄く広く)と斜角盾で迎え角を固定し、デコイで撃たせる位置を設計。外層はSeacat、下層はソノブイ“コの字”+Mk44でSSKの息継ぎを短くします。生活感(氷嚢/輪ゴム)も残して温度を可視化。
【場所:ホルムズ海峡 中部→東寄り回廊 時間:1963-08-14 12:05–12:20 GST】
12:05。Countyのレンジスコープに、小島の台船が細い爪痕のまま残っている。前進サイトは生きている。事前方位線は030°–060°。砲窓は薄く広く、4.5inが低空面の屋根を絶え間なく葺き替える。
「船団12kt据え置き、間隔600yd。列幅維持、針路340°。County、砲窓を西へ1目盛寄せ。英駆逐、斜角盾継続」
CICの白は乾き、表示灯の赤が熱で薄い。リシャールは真方位リングの縁に親指を置いたまま、息を一つ短くする。
12:06。医療補給船の後甲板。氷嚢が3袋目に替わる。金属コップが一巡し、包帯箱の底に輪ゴムが2本。誰も数えないが、手はそこで止まる。
右舷外弧のS-2はソノブイを追加し、先ほどのラインをコの字に補強。「右舷0.2nmオフセット、音紋弱、泡散り」
「Mk44は温存。息継ぎが見えたら1本落とせ」対潜士官は紙の端を指で揃える。
12:07。英駆逐の4.5inは見越し+1で連接を継続。白い珠が天蓋を重ね、海面効果へ潜ろうとする影の眼を刺す。
CountyはSeaslug即応2、Seacatは箱を開けたまま温存。電測士が淡々と繰り返す。
「Komar、方位206°、距離11nm、45ktで側面沿い。発射兆候なし」
「角度だけ奪い続けろ。撃たせる場所はこちらが選ぶ」リシャール。
12:08。掃海隊が短く入る。「曳索張力安定。水路幅600yd確保。音響むら有り–だが通用帯は繋がる」
参謀が紙片を差し出す。「実回廊、確保」
CICの空気が一瞬だけ軽くなる。リシャールは真方位リングの040°に小さな黒点を置いた。「列は組めた。崩さず通す」
12:09。デコイのコーナーリフレクタが陽炎に揺れ、擬似船団は右舷0.6nm先行、針路330°。レーダ上の腹は商船8隻分で、本船よりも立派に見える。
タンカーのブリッジでは双眼鏡のゴム縁が頬に黒い輪を残すが、見張りは拭わない。掌の塩が舵輪の革へ薄く移る。
12:10。S-2が高度1,500ftで旋回。「右舷ライン、泡の紐はぶつ切り。SSKの息は短い」
「Mk44はまだ。曳航ノイズメイカー発振はそのまま。爆圧は真後ろに置く」
床を伝う鈍い共鳴が一度、すぐに静まる。曳航ノイズメイカーは生きている。
12:11。Countyのミサイル主任。「前進サイト、送受信の間短縮。次のVampire間隔、詰まる見込み」
「Seaslugは即応2のまま。4.5inは低。Seacatは艇の芽だけ見ろ。迎え角は010°立て」
英駆逐の砲側では装填手が汗を拭かず弾帯を押し込み、砲尾の金属は乾いた布の手触りになる。
12:12。海面の白の上でKomarが逆光に溶け、黒い線がわずかに震える。
「艇、発射兆候。方位210°、距離11nm」
「Vampire(艇-1)、付番」
英駆逐の後甲板でSeacatが箱から跳ね、白い導線が斜め下へ走る。4.5inは先回りで低空面に玉を置き、事前方位線の下端を蓋にする。
「艇-1、逸走。海面衝突」電測士の声は乾いている。
歓声は生まれない。目は砲窓へ流れる。蓋は健在。Komarは退避方位240°へ折れ、45ktの線を薄める。Seacat再装填。
12:13。Countyが砲窓を西へ1目盛寄せ、Seaslugのセクター030°–060°を据え直す。英駆逐は4.5inの連接を0.8から0.7へ詰め、屋根の布を厚くする。
「前進サイトの息継ぎは?」「短いまま。送受信の間はさらに詰まり傾向」
「囮を0.1nmだけ前に出せ。虚像に角度を作らせろ」
デコイは小さく先行し、反射の腹をさらに大きく見せる。
12:14。タンカーのブリッジ。航海長は針路340°を保ちつつ、視界の右端で囮灯を拾い直す。
「速度12kt、間隔600yd、維持」
「列幅を保て」
船橋の風は砂を連れ、汗の筋を薄く研ぐ。
12:15。S-2が右舷のソノブイ列をまたいで低い円を描く。
「ノイズ、泡の影で散る。SSKは深度変化小。息は短い」
「Mk44、1本準備。投下は12:19の息継ぎで」対潜士官。
「了解。投下線、北北東へ0.3nm延ばして迎え角を取る」
CICの鉛筆が一本、机の上を転がり、誰かが静かに指で止める。
12:16。Countyの砲側電話。「低空面、弾帯2交換完了。VT低。Seaslug、即応2」
リシャールは真方位リングに細い線を描く。「椅子は届く位置のまま。次のVampireは間が詰む–屋根は持つ」
英駆逐の艦橋では、通信士がヘッドセットの肩紐を拭ってから、紙片を重ね直す。無線の雑音は砂の鳴き声に似ている。
12:17。見張りが短く告げる。「Komar、方位204°、距離12nm、遠ざかる。岸基のマスト、陽炎に沈む」
「追うな。角度だけ掴んでいればいい」
砲側の冷却水が一度だけ唸り、計器の針が細く呼吸する。
12:18。デコイのコーナーリフレクタが一瞬消え、すぐ戻る。陽炎が布をめくるみたいだ。囮は生き、虚像は堂々として見える。
掃海の曳索は低く歌い、水路幅600ydは維持。音響のむらは残るが、通る帯はつながっている。
12:19。S-2が声を落とす。「息継ぎ——今」
「Mk44、投下」
一本が水線下へ落ち、泡の紐がぶつ切りになる。金属音が低から高へひと跳ね。決定打の手応えは薄いが、息はさらに短い。
「曳航ノイズメイカー、発振一段下げ。ソノブイは維持。後扉の楔、確認」
「楔生存。圧力差問題なし」
艦尾の監視員が息を吐き、煙幕の名残が薄い積雲にちぎれる。
12:20。CICの灯は白いまま。線は揃い、砲窓は厚みを保ち、列は太い。
リシャールは親指の黒鉛を気にせず回線へ落とす。「このまま通す。計算を前に置き続けろ。次は必ず向こうが踏む」
読了ありがとうございます、幻彗(gensui)です。
#17-3は砲窓×デコイ×息継ぎ管理で「角度を渡さない」回でした。
Seacat逸走/4.5inの屋根/Mk44(12:19)が三層で噛み合います。
表記や運用の気づき(角度帯“–”統一、見越し+1の出し方、RCSの言い切りなど)をコメントでぜひ。
面白ければブクマ&評価(☆☆☆☆☆)お願いします。
#17-4は同時Vampire(#8–#9)→Masurca×Seaslugの二段迎撃、そして回廊突破の総仕上げへ。
次回更新は、明日 12:00 頃(JST)に公開予定。




