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沖縄海戦(Three-Layer Shield)#09-4

#9-4 は戦闘直後のAAR回。戦果と損害を定量し、短縮コール・チャフ層・ソノブイ扇で運用を磨きます。紙と黒板で戦い方が変わる――三層の盾を“整流”する章です。

【場所:沖縄本島東方〜宮古・久米島海面 時間:1961-06-27 12:40 JST】


 正午過ぎ、海は落ち着きを取り戻した。タンカーの側板に開いた歪みは、応急用のパッチで塞がれ、揚錨機の鎖が鈍く鳴る。曳船が2艇、舷側に肩を貸している。甲板では、溶接の火花が静かに跳ね、焦げた塗装の匂いに潮の匂いが混じる。

 「あやなみ」は弾薬庫の点検に入った。3インチ/50 VTの木箱が2–3段、空になっている。補給表に赤鉛筆が引かれ、砲側の若い下士官が指で汗を拭う。

 「VT、残り2割。3インチ通常信管はまだある」

 「了解。次便で補給を噛ませる。チャフ・ロケットは?」

 「使用3、残8」

 佐伯はうなずいた。末端の手数は足りているが、次の波で削られる勘定だ。列を太くしても、弾が尽きれば網は破ける。


 13:30。米ミサイル巡洋艦の戦闘指揮所で、共同の戦闘詳報(AAR)が始まった。黒板に真方位の線が3本、太さを変えて引かれる。

 「まず戦果と損害」米側幕僚がチョークを持つ。「確実撃墜H-5 3、可能2。ミサイル艇1撃破、1損傷。P-15 2射、内1はチャフ偏向、1は日本駆逐艦の砲窓で海没。P-15発射台船はCAの座標射撃により無力化。自軍損害は軽微、タンカー1隻に至近損傷、続航可。人員損耗なし」

 佐伯は短く相づちを打ち、地図に目を落とす。

 「よかった点から行こう」

 米側が頷く。「3層の同期。特にBARCAPの押さえとTerrier/Talosの切り取りが低空群の『形』を崩し、日本側砲窓が“海面に触れる前”に仕事を始められた。船団側の列を太くは、射線管理を容易にした。被害の局所化が徹底されている」

 「改善点」佐伯が続ける。「砲窓の『第2』切替が1拍遅れる場面があった。原因は揺れではなく報告経路。レーダーピケット→艦橋→砲側の“言い直し”が1つ余分だった。次便からは方位コールの定型短縮を導入する。“方位のみ・レンジ不要・信管はVT固定”の3語で落とす」

 米幕僚が黒板に大きく書く。〈短縮コール:真方位→弾種省略→即応〉

 「チャフも」副官が口を挟む。「今回は間欠散布が効いたが、帯の長さが均一だった。末端の“見え方”が単調になる。次は長短交互で層を作る。間隔は30秒:15秒:30秒」

 「ソノブイ線は?」

 CVSの航空士官が前に出る。「前面右舷の生き接触は深度150〜190ft。S-2 1機で引きずり出すには時間がかかった。バリアの前出しをさらに1,000yd、船団の斜角に合わせて“扇”に敷く。爆雷は170ftで当たり。次は150→190ftの2段で落とす」

 「機雷標識は?」

 掃海隊長が答える。「出口でブイを増設した。が、見た目の安心が逆に『列の幅』を細くした。標識は残すが、“太い列で通過”の明示旗を増やす。隊形指示旗を2枚重ねで掲げ、曳航船にもミラー表示を持たせる」

 米側がチョークを置く。「対地の扱いも確認しておこう。日本艦の対地射は不可。座標の授受は今日の手順で正解だ。標準書式にする」

 佐伯はうなずいた。「座標は真方位(3桁+°)と距離(yd)、基準点は“標識ブイ1番”に統一。海図の版の違いは標識番号で吸収する」


 小休止。紙コップのコーヒーは薄いが、温かい。艦内の空気は油の匂いで満ち、無線は遠い雑音だけを流している。

 米幕僚が低い声で言う。「北方から要求が来ている。TRIDENTの第1波で、こちらのSAM艦を1隻、数日借りたい」

 佐伯は間を置いた。「こちらは船団を通し続ける。CVAのBARCAP枠は維持できるか?」

 「できる。北方は別のCVAと交代する案だ」

 「なら、こちらは砲窓の密度を上げる。VTの補給を前倒しし、3インチの発射間隔を1割短縮。弾着修正の手順は簡素化する。“被弾観測→真方位のみ訂正→次弾”」


 夕方、那覇沖の白い建屋が赤く染まるころ、次便の計画表ができあがった。

 ――出港 06:00/速力 11kt。

 ――列を太く:2列縦隊、列間横距離 450yd、各艦間隔 300yd。

――斜角盾:対潜接触ありのとき、真針路に対し5–7°の角度を保持。

 ――砲窓:第1 真070°–085°/第2 真090°–100°(状況で切替)。

 ――短縮コール:〈真方位のみ〉+〈“VT続行”省略〉。

 ――チャフ:長短交互、30/15/30秒。

 ――ソノブイ扇:船団前面1,000yd前方から展開、深度150→190ftの2段爆雷。

 ――座標射撃:基準点“標識ブイ1”からの真方位・距離(yd)。対地射は米艦のみ。


 紙片の束に、日付と章番号が記される。薄い紙は軽く、しかし列を動かすには十分な重さがある。

 艦橋へ戻ると、風が涼しくなっていた。佐伯は海図に手を置く。紙の下で、海は変わらない速さで動いている。

 「通す」

 独り言に近い声が、ガラスに当たって静かに返る。遠い無線が1度だけ鳴り、北の名を告げた。

 TRIDENT。ここでの仕事は、明朝も同じ。列を太くし、斜角で盾を作り、砲窓を開ける。それができれば、北の海で誰かが1歩、前へ進める。


読了ありがとうございます。幻彗(gensui)です。

AARで「何が効き、何が遅れたか」を言語化し、列を太く/斜角盾/砲窓域更新へ落とし込みました。

表記(JST/真方位3桁+°/距離=yd/速度=kt)や用語(3-inch/50、VT信管、Terrier/Talos、ソノブイ)で気づきがあればコメントでぜひ。

面白ければブクマ&評価(☆☆☆☆☆)で応援を。次回で沖縄海戦は終了です。

次回更新は、明日 00:00 頃(JST)に公開予定。

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