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超強い剣士が老人に化けて武闘大会に出ていたら、相手は気づく? 気づかない? ざまぁ編1

 『剣聖』ミダスは俺たちの手を取った。


 まだ半信半疑の節があったため、クレアの魔法で変装させて民から話を聞かせたり、こちらが持っていた情報を共有したりなどした。


 そして、自分の存在が計画的に抹消されそうになったことを知ったからか、国に刃を向ける決意を固めたようだ。


 だが、別に俺たちも直接手をくだすつもりはない。


 今回の話は、単に誰かを殺して終わりというものではないからだ。


 勇者ビジネスという狂った構造を壊す。

 そのために必要なのは民意である。


 俺たちへの同情を誘い、そんなシステムいらないと思わせる。

 

 もちろん、一発でひっくり返るとは俺たちも思っていない。


 それだけ、勇者と魔王という存在は身近にあった。


 それを覆すには、幾度にわたる民意への問いかけが必要だろう。


 そして、そのために利用できるものは利用する。


 例えば――前にやったドッキリ配信とか、な。


 推定悪人の相手がぎゃふんと言うのを、おもしろおかしく放映して、俺たちの味方を増やす。


 もちろん、俺たちが好まれていない場合もあるだろうが……だとしても、人は気持ちよさを求めるものだ。


 世界が変わっても、時代が変わっても、公開処刑が存在しているのはそういうことだろう。

 ストレスが発散できればなんでもいいのだ。


 そして、俺たちがやるのは公開処刑と変わらない。


 国の恥部と、王の失態を同時に晒すのだ。


 少なからず、国の運営に影響が出るだろう。


 とはいえ、やることは単純だ。


 今回の企みは――。


『かねてよりご要望があった、ドッキリ企画。今日はその第三弾をいたします。題して、『超強い剣士がおじいちゃんに化けて武闘大会に出ていたら、相手は気づく? 気づかない?』です! 超強い剣士の正体は皆さんにも秘密でーす。是非誰か考えてみてくださいね!』


 画面の中のクレアが宣言すると、コメントが一気に沸く。


 :うおおお待ってた

 :今度は武闘大会か

 :今日はいままでと違って純粋に娯楽系か

 :順当にいくとパーティーメンバーのロイドか?

 :当てっこ要素もあるのはいいな


 まさか国を相手取った暴露企画とは思いもしていないのか、コメントは楽しそうだ。


 この武闘大会がお祭りのような特色があるので、それも致し方ないのだろう。


 お祭りと言えど、内容は本格的だ。


 戦う場所は前世で言うコロッセオそっくりの建物で、中心にはかなり広いステージがある。

 そのステージには身体の傷を試合前の状態に戻す魔法がかけられているので、派手な試合が見られるのだ。

 その上、国が胴元となって賭けができるから、見てる方も熱くなる要素があった。


 出る方にもメリットがあって、優勝すると、国王にお伺いを立てられる権利を貰える。


 ただ、不思議なことに、いままでの優勝者の大半は歴代勇者であり、そうでなかった場合も、優勝者のほとんどが勇者パーティーへの加入希望を奏上している。


 とまぁ、なんともきな臭い感じの武闘大会だが、見てる方にはあまり関係ないのかもしれない。


 いまも、コメントでは勇者か仕掛け人かの賭けコメントが流れている。


 この賭けも勇者ビジネスの一環だと思うと憎々しい思いが募るも、今日はそれをぶっ壊すための作戦だ。

 

 そして、クレアは民意を誘導する肝となる。

 もちろん剣聖ミダスが勝ち進まねば意味はないのだが、クレアの手腕によって、民意の傾きは変わるだろう。

 だから、配信を見る手にも力が入る。


『さて、それでは件のご老人の試合が始まりますよー! 皆さん、盛り上がる準備はいいですかー!?』


 :うおー!

 :どれくらい強いのか楽しみ

 :ネタでこのじいちゃんに賭けてきた


『なんて言ったって超強いですからね! きっと優勝しちゃいますよ! 試合の様子は実況していきますね!』


 :隠蔽魔法使ってるからか、カメラのアングルが特等席なんだよな

 :そこまでいうなら優勝予想にもいれとくわ

 :俺は相手が気づくのを早く見たい

 

 配信のコメントは結構な盛り上がりを見せている。

 あとは、剣聖ミダスに優勝してもらうだけではあるのだが……結構な重役を任せてしまっている自覚はある。

 王と謁見できなきゃ、効果は半減するだろうしな。

 

 見事優勝した暁には、王の目の前で正体を暴露して、更には隠していた事実も暴き、国民を混乱におとしめるという寸法だ。


 優勝できなければ、今回の作戦はほとんど失敗。


 外部の力に頼らざるを得ないのは不安な部分もあるが、あの数の魔物を一人で殲滅した実力の持ち主だ。


 そうそう負けることはないだろう。


 あるとすれば、卑怯な手を使われた時か、相手が想像以上に強いか、だ。


 だから、いざという時の切り札は渡してある。


 それに、卑怯な手を使われないために俺がいる。


 ただやることがなくて配信を眺めているわけではないのだ。


 ……まぁ、今はやることないけど。


 そんなことを考えているうちに、剣聖ミダスの試合が始まろうとしていた。


「なんだ。一回戦の相手はじじいかよ。こりゃ楽勝だな」


 ステージの近くで撮影しているからか、対戦相手の挑発もよく聞こえる。


 :なんだ。一回戦の相手はかませ犬かよ。こりゃ楽勝だな

 :実際どれくらい強いのかわからないから安心して見るのは無理だな

 :相手の驚く顔がみたい


 挑発されてコメントは盛り上がっているけれど、まぁ相手が侮るのも無理はない。

 見た目は杖ついて腰が曲がってる老人だからな。


 あんな姿勢でまともに戦えるのかと思うが、本人曰く大丈夫らしい。


 なんの変哲もないように見える杖を支えにして立っている姿は、本物の老人と見まごうほどだ。


「ほっほっほっ。お手柔らかに頼むのう」


 クレアの魔法でしわがれた声になっているミダスは、穏やかに返答した。

 そんな返事だけでも、コメントは盛り上がる。


 :まさか一回戦で負けたりしないよね?

 :挑発し返さないんだ

 :得物ないけど大丈夫そ?


 コメントの言うとおり、ミダスは杖しか持っていない。

 一見すると魔法使い風のスタイルは、配信を見ていなければ剣士だと判断するのが難しくなっている。

 そういう初見殺しも含めて、盛り上がる要素だろう。


「へっ。せいぜいぽっくり逝っちまわないように気をつけな」


 対戦相手は自分が辿る運命も知らず、ミダスを煽っている。

 ……まぁ、俺たちも魔物の群れが倒れているのを見ただけで、戦い方自体は知らないのだが。

 しかも、老人っぽく見せなければいけないので、縛りプレイを課しているようなものだ。万が一ここで負けてしまうと、正体を明かしても偽物だと思われる可能性がある。


 どうか勝ってくれよと願いながら、配信を見守るしかない。


 やがて進行側の準備ができたのか、試合開始前の確認が始まった。


「戦闘続行不可能と見做された場合か、ステージの上から落ちた場合。もしくは自主降参が入るまで、基本的に我々が戦闘を止めることはありません。怪我は試合前の状態に戻りますが、万が一の場合があるので、致死の攻撃を受けそうな場合は降参を推奨します。また、降参を表明している相手に意図的に攻撃した場合失格となりますので、ご注意ください」


 いよいよ試合が始まるとあってか、対戦相手の雰囲気が変わる。

 ミダスの方はと言えば、変わらず杖をついて突っ立っているだけ。

 それが逆に、強者の風格を思わせた。

 引き締まった空気の中、審判が合図をする。


「それでは、準備はよろしいですね? お互い良い真剣勝負を。始めっ!」

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