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石にされたはずの仲間そっくりの石像を持ってこられたら、その仲間たちは気づく? 気づかない? ざまぁ編1

 ドッキリなるものを決行すると賢者様がおっしゃられてから、少しの時間が経ちました。

 地上に送っていただいた私は今、賢者様の様子を撮影して、全世界に配信しています。


 使用するのは、パーティー共用の配信チャンネル。

 私たちパーティーも、そこらの冒険者の例に漏れず配信活動をしていて、それなりに人気があります。


 賢者様にお会いしに行く時は録画だけして後で公開する運びでしたが、私が欠けた今、その動画は投稿されていません。


 しばらく音沙汰がなかったからか、久しぶりの配信はそこそこ盛況であると同時に、いま映っている光景に疑問を持つ声が多数上がっています。


 それもそのはず。

 映っているのは、視聴者目線では誰かも分からない男の人。そして、担がれている謎の荷物。

 正体は私の石像なのですが、布が被せられているのでぱっと見では何かわかりません。

 案の定、通行人に不審がられています。


 賢者様の名前は有名とはいえ、正確なお姿は残されていないため、誰も彼を判別できません。

 配信についているコメントも、不思議がるようなものばかりです。


 配信には十分な人が集まってきたので、そろそろ私の出番でしょう。


「こんにちは、皆さん。クレール・ロマリアの一員であるクレアです。こうして配信するのはお久しぶりですね。私一人での配信は、おそらく初めてではないでしょうか?」


 私が言葉を発すると、途端に画面上へコメントが流れていきます。


 :今日は五人じゃないんだ?

 :久しぶりに見れて嬉しいけど、この映ってる人誰?

 :あんまりにも配信がないから全滅したかと思ってた


 その多くは、私たちを待っていた声と、この配信に対する疑問。

 まずは、視聴者さんに状況を説明するのが、私の役回りです。


「実は、私たちパーティーは、『冤罪の賢者』様がお隠れになったと言われる、『深淵の穴ぐら』ダンジョンに行っていました」


 :出た、超高難易度ダンジョン

 :最下層がどこかも分からないって言われる、あの

 :よく無事だったね


 行き先を公開すると、視聴者さんからは心配の声があがりました。

 賢者様がおられたダンジョンは、それくらい難易度が高いのです。

 告知なしで賢者様を見つけ、名声にはずみをつけようという計画ではありましたが、違う形で叶うとは思っていませんでした。

 久しぶりの配信だからか、徐々に人が増えていっています。

 その方たちに、軽く事情を説明することにしました。


「無事かと言われると微妙なところなのですよね……奥深くの階層で、私は大蛇の魔物に石にされまして。そこを賢者様に助けて貰ったのです」


 :石!?

 :冤罪の大賢者って実在したんだ

 :もしかしてだけど、画面に映ってるあの人って……


「ええ。実際にお話ししたのでわかりますが、本物の賢者様だと思います。そして、察しのいい人がいますね。そうです。画面に映っているお方が、その賢者様です」


 そう伝えると、コメントの流れが早くなりました。


 :すげー、本物初めて見た

 :盗撮?

 :初めて見たってお前、全員初めて見るだろ


 疑う声もありますが、多くの人は、ひとまず信じている様子。賢者様のお姿が残っていないので、誰も判別できないというのもあると思いますが、まずは前提を信じようということなのでしょう。

 こちらも、話の流れを潰さないよう、状況を説明していきます。


「盗撮といいますか、賢者様のご指示で追いかけて撮影しています。知っての通り私はシーフなので、誰に気が付かれることなく、撮影できるというわけです。スキルも高レベルなので、意図的に解かない限りは声が漏れることもありません」


 :いつも思うけどクレアちゃんがシーフってなんか意外だよね

 :さすが実力派パーティーのシーフ、隠蔽魔法はお手のものだね

 :なんのためにこんなことしてるの?


 本当はマチルダの所業を全世界に明かしたいところですが、まだ確定と決まったわけではないので、賢者様に咎められてしまいました。

 なので、今は彼女の所業を明かさずに配信を進行していきます。

 

「褒めていただきありがとうございます。理由は言えないのですが、今日は皆様にお見せしたいものがあって、配信をしています。是非、ご自分の目でお確かめになってください」


 :見せたいもの?

 :一体なにするの?

 :理由言えないって、やましいことでもあるのか?


 ほとんどの方はこれから何が起こるか不思議がっていますが、一部の人は、私に否定的な言葉を投げかけてきます。

 恐らく私を嫌いな人か、私たちを好ましく思っていないけれど粗探しをするために配信を見ている人でしょう。

 これから私が行うことを考えれば、私以外のメンバーのファンも味方ではないはずです。

 そんな中で馬鹿正直にマチルダの所業を伝えても、信じてもらえないどころか、私が非難される可能性があるとのことでした。

 なので、現行犯でマチルダの悪行を見せつけた方が効果があるとのことでしたが、彼女は本当にぼろを見せるのでしょうか?

 不安になりつつも、もうここまで来たら止まれません。

 成功したら、同情される悲劇のヒロインに。

 失敗したら、パーティーを掻き乱した悪者に。

 視聴者の皆様を巻き込んだ、一世一代の策を講じます。


「特定の状況に陥った時、クレール・ロマリアのメンバーがどういう行動を取るか観察します。賢者様曰く、ドッキリと言うそうなのですが……これで、メンバーの本性が分かるらしいですよ」


 :特定の状況ってなんだ

 :ドッキリって、聞いたことがない言葉だな

 :普段すましてる奴らの化けの皮が剥がれるのか


 メンバーの本性がわかる。これには否定的な意見の方も、少し興味を持った様子。

 一部過激すぎる発言は非表示にしてしまいたいところですが、一人では対処しきれませんし、気を取られたくないので放置します。

 これがどう転ぶかはわかりませんが、どうしようもありません。

 一体何をするのかと期待が高まったところで、賢者様に教えていただいたタイトルを伝えます。


「今回は、私自身を使った仕掛けをします。題して、『石にされたはずの仲間そっくりの石像を持ってこられたら、その仲間たちは気づく? 気づかない?』です」


 内容を伝えると、コメントは困惑気味に、流れが散発的になりました。

 

 :賢者様が担いでる荷物って、クレアちゃんそっくりの石像かよ

 :どゆこと?

 :まだよく分からないな


 どうやら、勘付いた方と、まだピンと来てない方がいる様子。まだ分かっていない方達に伝えるため、詳しく説明していきます。

 

「どういうことかというと……私が石にされているのはメンバー全員が見ているはずなので、賢者様がお作りになられた私そっくりの石像を見せ、どういう反応をするか観察し、最後に私が現れる、という流れになっています」


 分かっていなかった方も合点がいったのか、コメントが一気に流れました。

 

 :わぁ、悪趣味

 :たしかに本性はわかりそうだが、なんでそんなことを?

 :ちょっと面白そうだと思う自分がいる


「なにがあったかは詳しく話せませんが、石にされて置いて行かれた私としては、軽い仕返しがしたいのです。賢者様に助けていただかなければ、私は帰らぬ人になっていたと思いますし。置いて行かれた側の、ささやかな復讐と思っていただければ」


 :まぁ、見捨てられたなら当然の権利ではあるのか

 :なにもそんなことしなくても、普通に助けてもらったことを伝えればいいのに

 :あんたやっぱり性格悪いね


 企画への反応は、好意的なものと否定的なものが半々といったところ。

 先ほど賢者様の話題を出してから急に人が増え始めたので、どこかで拡散されているのでしょう。

 興味本位の人が増えたことを考えると、元々配信を見てくれていた人たちは、否定的な割合が多いと予測されます。

 

 まぁ、お気に入りのメンバーが恣意的な罠にひっかけられるような様子なんて、見たくありませんものね。

 元々のファンで好意的なのは、私を好いてくれている方たちだけのようでした。

 

 それ以外の好意的な反応は、初めて配信に訪れる方たちで、面白そうな企画に興味津々といった様子です。

 人間の残酷なサガが垣間見えますが、今この時に限っては追い風という他ないでしょう。

 マチルダがボロを出したら、確実に大きな話題となるでしょうから。


「私も良心が痛みますけど、こうでもしないと気持ちが収まらないのです。置いて行かれたことと比べたら可愛いものなので、どうかご容赦ください」


 :自分の尺度で卑劣な所業を軽く見積もるなよ、性悪女め

 :面白かったらなんでもいい

 :早くすましたやつらの間抜け面をおがませてくれ


 やることが突飛なせいか、配信の雰囲気はあまりよくありません。

 視聴者は確実に増えているのですが、一瞬数字が減ることもあるので、従来のファンの方たちは離脱している可能性があります。

 申し訳なく思いますが、なってしまったものは仕方ないでしょう。

 このまま行くところまで行くしかありません。

 

 ここから先は、賢者様の手腕次第。

 信頼していないわけではありませんが、長年、人と話していなかったそうなので、コミュニケーションには不安が残ります。

 うまくいくといいのですが……どうなるのでしょう。


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