有名商人に、ホンモノとニセモノを交えて鑑定を頼んだら、見抜ける? 見抜けない? ざまぁ編4
じっと素材を見ていたゴルディンは、賢者様に話しかけました。
「失礼ながら、この素材はどちらで手に入れた物で?」
「深淵の穴ぐらの、浅瀬から少し進んだところまでの素材だ。ダンジョンへ辿り着くまでに倒した魔物の素材も拾ったから、少し紛らわしいかもしれないが……」
深淵の穴ぐらは、一層目から最上級魔物が現れ、浅瀬を過ぎれば、そこからは伝説級魔物ばかりが蔓延る魔鏡です。
もちろん、私たちも道中の伝説級魔物は何匹か倒していますが、主目的は賢者様とお会いすることでした。
どこまで深く潜るか定かでなかったため、荷物は減らそうと、泣く泣く素材を見逃しています。
帰りもほうほうの体だったらしく、私を欠いたまま伝説級魔物を倒す余裕もなく、素材は全くと言っていいほど持ち帰れなかったようです。
私たちの得意とする戦術が、隠蔽魔法からの大火力で一撃必殺でしたから、私が欠けたままでは先手が取れず、戦うにはリスクがあると判断したのでしょう。
それくらい、伝説級魔物と戦うのは危険な行為なのです。
それを分かっているのか、いないのか、ゴルディンは欲深げにこちらの懐を探りに来ました。
「いえいえ、これくらいなら目利きできるのが、腕利の商人の証。して、そこまで進まれたなら、まだ素材が残っておられるのでは?」
「あぁ。だから、いくつかに分けて各所で素材を売り、一番高い値段をつけたところに全部売ろう、とパーティーで決めたんだ。ここでの買取額が良好なら、全て売ろうと思っている」
賢者様の言葉に反応してか、ゴルディンの目が光ったような気がしました。
そして、やおら口を開きます。
「上級魔物の素材が2つあわせて金貨40枚。最上級魔物の素材が7つで金貨1000枚。お客様がよければ、金貨はまとめて白金貨10枚にしてもいいのですが……あとひとつは見たこともない素材なので、価値を判断できかねます。お客様次第ですが、、最上級魔物の素材と同額でいいなら買い取りますよ」
なるほど。一番高い買取額のところに売ると伝えたからか、伝説級魔物の素材以外は、明らかに相場より上の値段を提示しています。
物にもよりますが、上級魔物はおおよそ金貨15枚、最上級魔物は金貨100枚くらいが相場と言われていますから。
ガランのおじさんの査定と比べると、かなり高めの値段ですが……肝心の伝説級魔物の素材を買い叩くためでしょう。
一個はごまかし、もう一個はこちらの意思で値段を下げさせようとするのですね。
この対応に、コメントではゴルディンをさげすむ声が流れました。
:一個は見抜けなかったのか、わざとなのか
:明らかに価値が高いってわかってるのに、最上級魔物と同じ値段ってどういうことだ
:伝説級以外はガランより高値つけてるけど、これは……
流れがこちらに傾きかけているので、ここぞとばかりに、追撃をしておきます。
「実は、賢者様が地上に出た時、伝説級魔物の素材を彼に売っているのです。それらは、全て金貨100枚程度で買取されました。その時にもガルガンクローの爪を売っており、それは今回、最上級魔物の素材としてカウントされているようです」
:は? わかっててやってるってこと? 最低
:なんか、さっきも絶妙にバレにくい買い叩き方してたもんな
:俺、この店で買取頼んだことあるんだが。ぼったくられてた可能性があるってこと?
うんうん。いい感じに懐疑的ですね。
これが撮影されてると知っていたら、ゴルディンも真摯な対応をしていたかもしれませんが、これは抜き打ち。
本性がダダ漏れのようです。
ここで、賢者様は仕掛けに出ました。
「失礼。最上級魔物と判断された素材のひとつだが、戦っていて明らかに強かった気がするんだ。それこそ、価値がわからないと判断された魔物と同じくらいに。おそらく伝説級の魔物の素材だと思うから、その値段なら、この二つは買い取ってもらうのをやめようと思う」
そう言って、伝説級魔物の素材を、一度しまう賢者様。
せっかくの伝説級素材の入手チャンスを無駄にしたくなかったのか、ゴルディンは少し慌てたように引き留めました。
「わかりました! 価値が判断できない以上、ご要望通りの金額を提示できるかはわかりませんが、その二つの素材は、ひとつ金貨1500枚で買取いたします!」
ふむ。伝説級魔物と言えども、ピンキリです。
本当に浅瀬の魔物なら、それくらいの値段でも妥当かもしれませんが、実際は深層も深層。賢者様の住まわれていた階層の魔物の素材です。
足元を見ているか、価値を判断できていないか。
どちらにせよ、買い叩いているのは事実です。
ガランのおじさんが事前に査定していたため、視聴者さんはその落差に驚いています。
:これ、どっちが適正なんだ?
:効果を考えると、ガランが正しい気がする
:価値が高すぎてわからなかっただけじゃないか?
ふむ。まだ擁護する声がありますね。
しかし、ここで前回の配信が効いてきます。
「皆さん、前回の配信を覚えていますか? ヴェノムチェイサーの目を、私たちのパーティーが買い取る流れになったと思うのですが」
:あー、そんなのもあったね
:あんときは金貨5000枚だっけ
:あれもいくらになるんだか
「金貨5000枚は私たちのパーティー資金に合わせた値段で、実際は国庫に匹敵しかねないほどの価値、というのは前回の配信でも言及されていると思います。今回査定に出した素材は、そのヴェノムチェイサーと同じくらいの階層の魔物の素材です。価値がわかっていないなら仕方ないのですが……前に賢者様から買い取った素材を、ゴルディンは王城へ献上しているので、それもないでしょう。彼は、明らかに低い金額を提示しています」
:うわ、クズじゃん
:守銭奴商人だったか
:どうするの? ここで追い詰めるの?
コメントの流れは良好ですが、ここで私が出ていくわけにはいきません。
賢者様は騙されたフリをして、懐から出した素材を買取に出しました。
「わかった。その値段で頼む」
:おーい、だまされてるぞー!
:あれ、買取拒否しないんだ
:賢者様も価値がわかってない?
「いいえ。わかっていますよ。次の仕込みで、お金を出し渋りたくなるように、わざと買い取りさせています」
他の素材も合わせたら、金貨4000枚近いですからね。
次の仕掛けの成功率をあげるため、わざと買い取ってもらっています。
それに、賢者様が再び取り出したのは、別の素材です。
マチルダにやったのと同じように認識阻害のチートなるものをかけてあり、先ほど見た伝説級の素材と勘違いするようになっています。
これは、あとで王城に献上した際、信用を無くさせるための策だとか。
もちろん、じっくり見られたらバレてしまうのですが、査定は先ほど終わっていますし、なにより早く手に入れたいと気が早っている状態では、まともな鑑定もできないでしょう。
無事取引を終えましたが、まだ終わりません。
いま種明かしをしても、無断撮影をしたこちらが悪者になってしまいますが……ここでトドメとなるシローネを投入します。




