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有名商人に、ホンモノとニセモノを交えて鑑定を頼んだら、見抜ける? 見抜けない? ざまぁ編2

 店内には沢山の従業員がいます。

 ガランのおじさんは従業員を引き抜かれたと言っていたので、彼の知り合いもいるのかもしれません。

 ぎりり、と拳を握る様子が伝わって来ました。


 しかし、ここでボロを出しては作戦が台無しです。

 隠蔽の魔法をかけたまま、彼の背中を小突きました。


 これが今回の合図です。


 作戦が順調でないときには、背中を押す、という合図が決められています。


 私が合図を出したことにより、ガランのおじさんは、従業員に話しかけました。


「買取を頼みたいのだが、お願いできるか?」


 目障りな同業者であるガランのおじさんのことは、ゴルディンの従業員なら知っているはずです。

 ですが、彼らはガランのおじさんであることには気がついていません。


 それもそのはず。私が念入りに変装魔法をかけたため、誰もガランのおじさんとは認識できないからです。


 無警戒の相手の懐に入った彼が取り出したるは、グレイシャルウルフの毛皮と、シルバーウルフの毛皮を交えた束。


 まずは、これでゴルディンを引きずり出せるか様子見です。


「はい。買取ですね。少々お待ちください」


 そう言って、毛皮を持って、店の奥に引っ込む従業員。

 その間に、私は視聴者さんに状況を伝えます。


「いま彼が買取依頼したのは、グレイシャルウルフの毛皮と、シルバーウルフの毛皮を交えた物です。両方とも非常に間違えやすいものですが、どういう査定がなされるのでしょうね」


 :いきなりいじわるな引っ掛けするなー

 :あの人はただの従業員で、有名商人ではなくない?

 :毛皮を売りに行った男の人は誰?


「いきなり店長が査定はしてくれないでしょうからね。まずは紛らわしい査定で、この場に呼び出すのが目的です。従業員の教育が行き届いていれば、そんなことにはならないと思いますが、どうなるのでしょうね。ちなみに、売りに行った人は特別ゲストです。あとで正体が判明するのでお楽しみに」


 万が一ゴルディンが配信を見ていた場合に備え、核心的な部分はぼかします。

 

 ライバル商会の店主だと判明すれば盛り上がるでしょうが、まだその時ではありません。


 しばらくしてから、従業員の方が戻って来ました。


「お待たせいたしました。全部で金貨80枚の買取となります」


 なるほど。内訳を言わないことで、買い叩こうとしていますね。

 どうやらグレイシャルウルフとシルバーウルフの毛皮が混合していることは見抜いたようですが、これらを混ぜるような相手は、数をごまかしてもわからないと踏んだのでしょうか。


 :これってどうなんだ? 正当な評価をしてるのか?

 :シルバーウルフの毛皮だけだったらもっと安いから、見抜けてそう

 :これ、ごまかせるギリギリのラインでぼったくってもわからなさそう


 コメントの中に鋭い指摘がありますね。

 

 そうです。今回の内訳は、シルバーウルフの毛皮が4枚、グレイシャルウルフの毛皮が6枚です。

 

 シルバーウルフの毛皮1枚の相場は、銀貨8枚。

 グレイシャルウルフの毛皮1枚の相場は金貨15枚。


 銀貨10枚が金貨1枚と等価なので、毛皮が5枚ずつであったなら、提示された値段くらいになります。

 

 賢者様は私の隣で「80万円くらいか。シルバーウルフが8千円、グレイシャルウルフが15万円と考えると、1枚分ちょろまかそうとしているな」とおっしゃっていますが、円というのは賢者様がやってきた世界の通貨の単位なのでしょうか?


「円というのはわかりませんが……グレイシャルウルフの毛皮が6枚なので、金貨90枚は越えているのが普通なんですよね」


 :ちょっと安く買い取ってるだけにも見える絶妙な値段だな

 :もっとぼろ出すのかと思った

 :ここからどうするの?


「そうですね……査定が相場より安ければ、ごねて店主を呼ぶ、という流れになってます」


 :うーん。すごくぼったくりってわけでもないからわざわざ呼ぶほどでもない気がするな

 :今回は見どころなく終わるかもね

 :こっちが迷惑な客になってるだけな気がする


 査定額にそれほど大きな乖離がなかったからか、コメントの流れはこちら向きではありません。

 ガランのおじさんはコメントが見えないので、手筈通りにごねはじめます。

 

「この買取額はおかしいのではないか? 相場より安いのだが、きちんと査定したのか?」


 ガランのおじさんがごねると、従業員は困った顔をして一度引っ込み、目論見通りにゴルディンが表へでてきました。

 そして、怪訝な顔で第一声。


「こちらの買取になにか不都合でも?」

「グレイシャルウルフとシルバーウルフの毛皮の買取をお願いしたのだが、査定額がグレイシャルウルフの毛皮1枚分ほどごまかされているようだ。明らかにそちらのミスだと思うのだが?」

「その二つは紛らわしいのでね。一枚間違えるのは仕方のないことでしょう。人間、ミスはあるもの。むしろ、紛らわしい査定を任されたこちらとしては、技術料を差し引いた正規の買取額としてもいいぐらいですな」


 :そう言われるとそうかも

 :別につっつくほどでもない気がするよな

 :これくらいは、まぁ普通……なのか?


 うーん。コメントもあまりいい流れではありません。

 大きな出来事でもないと、流れはこちらに傾かない気がしますね。


 ここで粘っても仕方ないと判断したのか、ガランのおじさんは素直に売却。

 

 このタイミングで、仕掛けの第二弾である賢者様が一度店を出ます。

 いきなり現れたら怪しいですからね。


 隠蔽魔法を解いて店に入り直した賢者様が、ゴルディンめがけて話しかけました。


「大口の買取をお願いしたいのだが、店主はいるか?」

 

 

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