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安息なき夜 -23-

 12月2日、未来はCVC本部がある「防空壕」から出て陽の光を浴びることが叶わなかった。暗いうちからクワンティコの地下にこもり、画像解析担当のスタッフと共に監視カメラの映像の解析を続けていたのだ。その作業が終わったのが夜の8時で、当然のことながら冬の弱々しい陽光はとっくに地平線の果てに去っている頃である。

 そして限界まで酷使した目と肩の重さを堪えてCVCの自分のオフィスに戻り、個人仮想端末にログインすると、未来はそこで激しい不快感から来る胃の痛みに襲われることになった。

 デスクトップ画面の隅に表示されたレモンイエローの電子付箋には、エミリオの自宅の住所や郡警察の担当者名とともに「12月1日、午後2時より捜査開始」と入力されていたのだ。

 もう疑いようがなかった。

 彼女はこの付箋に誤った捜査開始時間を打ち込み、メールの掲示板書き込み用フォームにコピーし、宛先をミスして送信してしまったのだ。単純なミスを重ねた結果情報がジェイコブに漏れたのだと、認めるしかない。

 結局彼女は帰宅する気にもなれず、FBIアカデミージェファーソン棟の硬いベッドで悶々としながら一夜を明かす羽目となった。

 翌朝も体中に淀む敗北感にまみれて動きたくなかったが、仕事は待ってくれない。未来は自宅に比べて寝心地が悪い宿泊室から、フレデリックスバーグ駐在事務所に渋々出勤せねばならなかった。以前と違って朝一番に出勤しなくて良くなった分まだましだが、それでもなお足取りは重い。

 彼女はジェイコブとだけは顔を合わすまいと、わざわざ聞き耳を立ててから職員用のドアをくぐり、自分のオフィスの椅子にどすんと腰を落とした。未だに自分のミスを認めたくないと言う気持ちが胸の中で渦巻いていて、気を抜くとやり場のない憤りが独り言として零れそうになってくる。

 が、それでもまだ幾つか腑に落ちない点は残っていた。

 ジェイコブは、未来が2時から急な別件の捜査が入ったため、同時刻に始まるエミリオの家の捜索に参加できないから、代理で自分が行ったのだと主張していた。

 もしこの付箋に最初から間違った情報が書かれていたのだとしたら、郡警察との電話打ち合わせ段階では5時に捜査開始予定だったと、何故彼は知っていたのだろう?

 予め郡警察側のスケジュールも知らなければ、掲示板に未来の嘘のスケジュールをでっち上げることもできないし、わざわざ郡警察に連絡して捜索開始を2時に繰り上げることも不可能だった筈だ。

 しかし、11月30日の土曜日に駐在事務所に出勤していたのは未来一人だったのだ。

 もしかして、本当に電話が盗聴されているのではないか?

 未来はいい加減そう疑いたくもなってきていたが、すぐにその短絡的な発想を打ち消した。FBIはたとえ地方の駐在事務所であっても、情報の流出に関しては極端に気を使っている。電話に細工されていたら、たちまち発見されて大騒ぎになるはずだ。

 考えれば考えるほど、頭の中が混乱してわけがわからなくなってくる。

 とにかく情報がどこから漏れているのか不明である以上、個人仮想端末も迂闊に触らないほうがいいだろう。

 釈然としないために苛立っているのを抑え、未来はそう判断を下した。クワンティコから持ち出してきた映像も携帯ターミナルから個人仮想端末には移さず、外部メモリを差し入れた状態で鍵つきのキャビネットに保存せねばなるまい。

 持ち出した映像は、ホワイトクロウの防犯カメラから抜き出した一部の動画を拡大し、ノイズを除去して鮮明にしたものだ。11月25日のものが最新で、それ以前では11月19日、11月16日の分からも、エミリオの姿が映っている箇所が見つかった。

 ただ、その中に溜息をつきたくなるようなものが一緒に映っていたことを、昨日の時点で確認している。

「……これって、やっぱり」

 未来はデスクで頬杖をつきながら、携帯ターミナルの小さな画面を見つめた。小さくとも解像度が高い画面に映し出されているのは、ホワイトクロウの防犯カメラが11月25日の夜8時前後に記録した映像だ。

 カメラのレンズが店の入口の上から広い店内を見下ろしており、その真正面にあるボックス席で若い黒人の男が飲み物を傾けている様子が映っている。そして彼の隣には、互いの脚が触れ合うほど近くに寄り添う、白人らしい金髪の男がいた。その白人男性は人目を気にしているようで、さり気なく席の仕切りが作る影を利用して顔を隠している。

 が、画像処理担当のスタッフが処理を施した映像は皮肉なほどに鮮明だった。顔全体がはっきりと見えるわけではないが、拡大した映像の横に写真を並べて見比べれば本人だと断定できるぐらいのレベルではある。

 未来の溜息が深くなる。

 ある程度は予想していたものの、ここまであからさまだと逆に扱いに困るし厄介だったが、ルイにはエミリオの隣に映っている人物と思しきの写真を見せておくべきだろう。

「ミキ、今時間は空いてるか?」

 そこで普段滅多に声をかけてこない同僚が、未来の後ろにあるパーティションの隙間から顔を覗かせて呼びかけてきた。

「ブラウン?大丈夫だけど。何かあったの?」

 未来が椅子をぐるりと回して振り返ると、オリヴァー・ブラウンがパーティションの狭い隙間をすり抜けるのに苦労しているのがわかった。

 ブラウンはフレデリックスバーグ駐在事務所で、主任に次いで寡黙な男だった。詐欺やマネー・ロンダリングのような知的犯罪をほぼ専門としている元会計士の特別捜査官で、いつも皺のないスーツといかつい表情を身につけている。声を立てて笑うことも滅多にないが、服務規定や勤務態度には人一倍うるさく、未来がある意味ジェイコブと同じくらい苦手な同僚だった。最初の頃に丁寧な言葉遣いをしなくてもいいと注意されたことがあるが、未だに軽口を利く気にはなれない。

 その彼が無表情に、未来の小さな身体を見下ろしてきていた。

「今朝の2時頃、オフィスで仕事してたか?」

「え……してないけど、どうして?」

 ブラウンから低い声音で最低限のことしか聞かれないと、却って落ち着かない気分になってくる。未来は居心地の悪さを感じながらも素直に答えた。

「ミキの仮想端末に、その時間にアクセスがあったらしい。仮想端末管理ソフトのログに履歴が残っていると、マイケルから注意されてね。そんな時間まで仕事をしてるなら、ちゃんと勤怠記録をつけておいて欲しいとのことだ」

「私、昨日はクワンティコにいたけど、そんな時間に仕事してないよ。私のIDでログインされてるのは確かなの?」

 ブラウンの言葉にぎょっとした未来は、つい早口になってしまった。

 個人仮想端末から最後にログアウトしたのは、昨日の夜9時頃だったのをはっきり覚えている。それからすぐにしたくもない食事をしてジェファーソン棟に行ったのだから、アクセス履歴が残っている筈がないのだ。

「いや、端末のローカル管理者IDでのアクセスだったらしい。だからてっきり、端末をメンテナンスでいじっていたのかと思ったんだが」

 未来が何も知らないことにすぐ勘づいたブラウンの声に、早くも訝しげな響きが混ざった。

 ローカル管理者IDはOSのアップデートなどを行うシステム管理用のユーザーで、各々が通常の業務で使用する個人IDとは扱いが全く異なる。個人IDはFBIのシステム自体に対してアクセスできるのに対し、ローカル管理者IDはそれぞれの個人端末、つまりパソコンそのものに対してアクセスの権限を持つものだ。

 ローカル者管理IDは、個人IDでは閲覧さえ許されないシステムファイルを操作できる強い権限を持つ。個人仮想端末にトラブルが発生した場合、ローカル管理者IDでなければ復旧作業できないため、IDとパスワードはどの個人仮想端末でも同じに設定されていた。

 そのため、ローカル管理IDとパスワードを知ってさえいれば、誰でも重要なファイルにアクセスすることができるのだ。

 もし捜査官の個人仮想端末に不正な侵入があったとしたら、FBIの信用を揺るがす一大事だ。

 未来の表情に緊張が走る。

「その管理ソフトのログ、今見られる?」

「マイケルに頼んでみよう」

 2人はすぐに駐在事務所の受付係であり、セキュリティ管理担当者でもあるマイケルがいる窓口へと向かった。幸い一般市民からの問い合わせも一段落していたらしいマイケルは、仮想個人端末を管理している端末のロックをすぐに解除してくれた。

 ブラウンがオフィスの隅にある管理端末用デスクの椅子に座り、彼の後ろから未来が画面を覗き込む。インターネットブラウザを起動すると、すぐに画面が仮想個人端末管理画面に移動し、ブラウンが管理者用IDとパスワードでログインした。

 画面が管理画面に切り替わり、小さなパソコンの形をした仮想個人端末のアイコンが白い画面にずらりと一覧で表示される。ブラウンは真っ先に未来の個人仮想端末のアクセス履歴を呼び出した。

 新しく開いたウィンドウには未来の仮想端末のログイン、ログアウトの履歴が秒単位まで表示され、その時に使用されたユーザー名も記されている。

 それによると、未来が自分の個人IDとして使っている「mhazama」は今日の朝と12月2日の午後9時7分20秒に使用されていたが、仮想個人端末のローカル管理者IDである「Lpresident」が12月2日の午前2時台、11月30日の日中や夜中に使われた形跡がはっきりと残っていた。

 無論、未来はローカル管理者IDでアクセスした覚えなどない。だが、彼女はまだ慌ててはいなかった。

「確かに履歴はあるね。でも私の端末だって、結局は仮想でサーバの中にあるデータに過ぎないんだから、外部からだってログインはできるわけでしょ。OSのアップデート作業とかは、ローカル管理IDを使って大体夜中にやることが多いんだし。誰かが代わりに作業してくれたんじゃないの?」

 未来は、FBIの堅固なセキュリティがそう簡単に破られるとは考えていなかった。ブラウンが背後に立つ同僚女性の落ち着いた声に振り返る。

「しかし、他の個人仮想端末ではOSのアップデートなんかされていない。ミキの端末だけ、というのは不自然だろう」

 ブラウンの口調は、とことんまで調べてやると言う圧力を否応なしに感じさせる。

 彼は、合点が行かないことはとことんまで突き詰める性分だ。目に見えるほどの迫力に押され、未来はやれやれと頷いた。

「じゃあとりあえず、誰かが私の個人端末に何かした、って言う前提で見てみることにしようか」

 未来の返事に、今度はブラウンが無言で頷き返してくる。2人は揃って前を向き、管理画面に出力されたアクセスログのブロック体を見つめた。

「ええと、ちょっと状況を整理させて。まず私の仮想端末だけど、システムへの接続を許可されたパソコンと、仮想端末接続用のソフトと、私かローカル管理者のIDとパスワードがあれば、アクセスはできることになるんだよね」

「そう。通常、私たちが仕事で個人仮想端末を使うのはその方法だ」

 基本となるシステムの構成について確認を始めた未来に、ブラウンがいちいち合槌を打つ。

 仮想個人端末は、実体がサーバ上にあるパソコンだ。それを使うには家庭にもある普通のパソコンと同じように、ログインが必要となる。違いといえば、情報漏洩対策に厳重なセキュリティが組まれていることぐらいだろう。

 未来は小首を傾げながらブラウンの顔を見て、先を続けた。

「もしくはFBIから接続を許可されたパソコンがあって、管理画面のアドレスがわかっていれば同じことができると。ただしこの場合は管理画面に入るための管理者IDとパスが必要だし、今回の場合はローカル管理者のIDとパスワードもいるってことだね」

 外部からのシステム侵入が困難である以上、考えられるのはこのいずれかのアクセス方法だろう。アドレスや各ID、パスなどは、内部の者であれば比較的容易に知ることができる情報でもあるのだ。

 未来が眉間に皺を寄せながらも正しいところを突いていることを確認したブラウンが、鋭く突っ込んでくる。

「問題はそこだ。管理用画面からはIDとパスを使った通常のログインもできるし、その時に個人仮想端末にログインしているユーザーの画面を、こんな風に操作することもできる」

 と、ブラウンは実際に管理画面に自分の仮想端末のデスクトップ画面を呼び出して見せた。その中にマウスカーソルを合わせると、二重に重なった白い矢印がブラウンの手の動きに合わせ、グリーンのデスクトップをゆっくり移動していく。

 感心したように、未来が呟いた。

「ありゃ、本当だ」

 管理者画面からユーザー画面を呼び出してマウスを動かすと、個人仮想端末にログインしている本来のユーザーは、マウスカーソルが勝手に動いていると勘違いしてしまうだろう。

 だが、もしここで本来のログインユーザーが離席でもしていたら、画面さえ元のものに戻しておけば何かされてもわからないのは間違いない。

 未来の頭に真っ先に浮かんだのは、自分のデスクトップに貼ってあった電子付箋のことだ。彼女が付箋に正しい情報を書いておいたとしても、同じ手段を使えば管理画面から内容を書き換えることは可能だったのだ。

 管理画面を開くには、一般的なインターネット用ブラウザと管理用のアドレスさえあればいい。事務所にいなくても、未来の仮想個人端末の様子を窺うことはできたはずだ。次第にある疑念が湧き上がってきて、雨雲が広がっていくかのように心に影が落とされていく。

 が、表面上は平静を装い、未来はブラウンが開いている彼のデスクトップ画面を眺めていた。

「厄介なのは、この管理画面からログインしたのと私たちが通常やっているログインとが、管理画面上のアクセスログで全く区別がつかないことだ」

 ブラウンが自分のデスクトップ画面のウィンドウを閉じ、もう一度アクセスログを開いて見せる。確かにそこには対象の個人仮想端末にアクセスしたユーザー名と、時間とが羅列されているだけだ。それ以上の情報は何も表示されていないのである。

「個人端末側のアクセスログも?」

 未来が言い及んだのは、仮想個人端末のOSに残されるアクセスログのことだ。

 しかし、ブラウンは小さく溜息をついて首を横に振った。

「管理画面を介したのと通常ログインは、どちらもネットワーク経由のアクセスになる。それにさっきみたいにユーザーの画面に割り込んで操作した場合は、何もログが残らない。これ以上の追跡は、このままだと無理だろうな」

 無骨な印象の同僚はコンピューターセキュリティが得意分野なせいか、未来に説明する口調がいつになく滑らかである。それと同じようにこの問題の答えが簡単に導き出されれば良かったのだが、考えていたよりもずっと手強いようだった。

 未来が仮想端末についてなけなしの知識を頭の中から検索し、手がかりを探るべく必死に話を繋いでいく。

「この管理画面、どのIPのパソコンからアクセスされたかとか、個人仮想端末で何をしてたかって履歴までは見られないの?」

「残念ながら、そこまでは記録できないんだ。ミキが昨日の深夜に何もしていなかったと言うのなら、このローカル管理者IDで入った奴が何をしていたかだな」

 仮にこれが内部の者の仕業だとすると、ローカル管理者IDをわざわざ使ったのは、自分の身元を隠したいという理由があったからに他ならない。ローカル管理者IDは全ての個人仮想端末で共通の設定にしてあり、誰が使ったかは突き止められないのだ。

 ふと、未来はIDとパスワードの管理について気になったことを口にした。 

「この管理画面のパスとIDとか、個人仮想端末のローカル管理者IDとパスワードが書いてあるファイルは、鍵つきのキャビネットに入ってるじゃない。最近それが持ち出されたってことはないの?」

「キャビネットの鍵はマイケルが管理してるはずだが……」

 オリヴァーが言葉を濁す。

 仮想端末のローカル管理者IDとパスワードは駐在事務所単位で決まっており、管理も事務所に任せられている。そのIDとパスワードが書かれたファイルは、必要な時に氏名と年月日を申請欄に書き込んで借り受ける運用だ。このファイルは鍵つきのキャビネットに入っており、鍵の管理と夕方のファイル申請欄チェックは受付係のマイケルが行っていた。

 しかし、実はこのキャビネットは仮想端末管理専用の場所ではない。

 ファイルは他の機密書類が入っているキャビネットの中に一緒に入っていて、何かのついでに持ち出すこともそう難しくはない。キャビネットの鍵の管理は帳簿でしているが、中に入っているファイル類はその都度の管理をしていなかった。

 未来は納得したように頷くと、押し黙って再び管理画面に見入った。

 ここ数日間で起こった端末のトラブルの不明点について、だんだん全貌がわかってきた気がする。事務所内での書類管理の隙を突いてきたことからも、やはりある程度事情を知っている者の犯行である可能性は高い。ただ、ここに来てもまだ部外者の犯行でないとは言い切れなかった。

 彼女はまだ出し残していた質問を、ブラウンにぶつけてみることにした。 

「この管理用画面って、ブラウザなんだよね。ってことは、接続用サーバのIPアドレスと管理者用IDとパスがわかれば、外部からでもアクセスできるってことじゃない」

「しかし管理画面の接続用サーバは、許可されたIPの端末からでなければ接続できない。それに、ローカル管理者のIDとパスは変更されたばかりだ。やはり、ミキのIDとパスワードを知らない内部の誰かがやった可能性が高いと言えるだろう」

「FBI内部で盗難に遭ったり、紛失したパソコンはないんだよね?」

「今朝の時点では、そういう情報はない。あればすぐに本部が騒ぐはずだからな」

 知的犯罪に明るく、FBI内の規定にうるさいブラウン捜査官は、そういった情報を掴むのが誰よりも早い。その彼が断言するのだから、外部からの不正アクセスである可能性は除外しても差し支えはないだろう。

 そうなると問題になるのは、所有者以外の者がメンテナンス以外の目的で仮想個人端末に勝手にログインしたということだ。

「外部からの不正侵入じゃないならまだいいけど、私の仮想端末で何をしたかったんだろ?何もないことくらい、みんな知ってるはずなんだけど。メールもローカルには残さないようにしてるし」

 未来に犯人の見当はもうおおよそついていたが、それでもまだ胸の内はすっきりしない。

 仮にジェイコブが一連の侵入をやってのけていたとして、果たして彼に今日の深夜、未来の個人仮想端末で何か探らねばならないことがあったのだろうか?

 唯一彼が気にかけそうなものとしては、郡警察から12月1日に送られてきたティアーズの証拠品リストくらいのものだ。しかし彼も郡警察スタッフ同席の上で証拠品検分に立ち会っているのだから、わざわざそれをどうにかしようとして危険を冒すとも考えにくい。

 証拠品リストは、検分時に手書きで作成された証拠品一覧を元にして作作成されているものである。もし実際の証拠品と食い違いがあったら、調べればすぐにわかるのだ。

 念のため駐在事務所の証拠保管室の入室記録も確認していたが、ジェイコブはこの数日一度も入室していなかった。彼が未来の仮想個人端末にアクセスしてくる理由が、さして思い当たらない。

 目的がわからないと、却って不気味さを感じさせる。

 まさか嫌がらせ目的とも思えず、未来は動揺を抑えて話を続ける他はなかった。

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