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「ところで、この世界にも彼がいるのは何故ですか」

「夢の中に本人が出てくることがあるだろう」

「ここは彼の夢世界ですか」

「似て遠からじ……ではないかな」

「では彼が目覚めたらどうなるんです」

「それが厄介だ。おれたちが外に放り出されるかもしれん」

「……ならば、まだマシでしょう。彼の目覚めとともに消えてしまう可能性もあります」

「正直言えば、その可能性の方が高いな」

「怖いですね」

「きみは恐がっているようには見えないが……」

「興奮しているからですよ。ところで、この世界では彼は何処に……」

「普通に考えれば自宅だ」

「つまらない夢ですね」

「そうかもしれんが、だからこそ彼を探索できる」

「この近くですか」

「遠くはないよ」

「まだ行かれませんか」

「ここで暫くきみと話したが、その間、監視されたという気配はない」

「持ってきた警報器もそう示していますよ。まあ、これも情報でしかありませんが……」

「分散しないのが驚きだよ」

「この能力は彼独自のモノですか」

「そうであると言えばそうであるとも言えるし、そうでないと言えばそうでないとも言える」

「どういう意味です」

「人、あるいは何かの夢の中に入ってしまう物語は昔から多い」

「その代表が『胡蝶の夢」ですか」

「そうだな、だが、それ以外にも数多くある」

「映画も多いですね。ある期間毎に幾つもが同時にヒットする」

「一番最近のモノは政府が仕掛けた」

「えっ」

「一般大衆に彼の存在を恐れさせないために、だ」

「全世界で結託してですか」

「一応そうだが、アメリカ中心だよ。中国とロシアは裏で別のことをやっている」

「まさか、次の彼を探しているとか」

「それはアメリカでも同じだ」

「クローンですか」

「彼の能力が彼の身体由来ならば、当然それを考えるだろう」

「しかし、できるんですか」

「彼がもし彼女だったら、もうできていたかもしれん」

「人間の元は女性ですからね」

「おれもきみも女を改造して作られた」

「本来対称的な性染色体が非対称なのが男ですからね」

「そういうことだ」

「で、中国やロシアは彼の生態サンプルを……」

「アメリカの軍隊や諜報機関が真面目に働いていれば、持っていないはずだ」

「それならば安心です」

「彼らは彼の親族を襲ったがな」

「……」

「朝比奈くんも日本人か。そこで驚くとは……」

「面目ない」

「いや、真面な神経をしているだけだ」

「それで、どうなったのです」

「詳しい情報は漏れて来ない。だが、事実を鑑みると彼の能力は発現されていないようだ」

「そうですか」

「彼の父親は彼が幼いうちに交通事故で死んでいる。それが幸いした」

「試験管ベビーの兄弟が作れないというわけですね」

「だが、それに近いモノは作れる」

「理屈では……。第二の彼ができたら、彼らはその彼をどう使うのでしょうか」

「当然自分たち専用の避難所にするだろう」

「そんなことができますか」

「現時点で彼の防衛機能は彼の嫌悪感あるいは不信感だけだ。それらを彼に感じさせた人間は彼の中に入れない」

「その防御機能を毀すということですね」

「おれは方法を知らないよ」

「だけど仮にそんなことをして、キュリアスまで彼の中に入れるようになったら……」

「面白いだろうな。人類は初めて彼らの姿を拝めるだろう」

「一之瀬さんやわたしが、ここで本来の自分の姿をしているようにですか」

「そうだ」

「しかしキュリアスが単にエネルギー体だったら、どうなるんでしょう」

「昔のSF映画みたいに光球が見えるんじゃないか」

「可視光ならばそうですが、それ以外の電磁波ならば見えないでしょう」

「そのときは感じるしかないな……」

「感じるですか」

「そこに彼らがいるならば、できるだろう」

「一之瀬さんならできるかもしれませんが……」

「いや、きみにもできるさ」

「そうでしょうか」

「ああ、おれが保証する」

「ならば、心強いですね」

 一之瀬がそこで時計を一瞥し、コクリと首肯き、朝比奈に告げる。

「さあて、局の奴らが決めた時間が経った。彼の所に向かうぞ」

「はい、一之瀬さん」


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