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第四十話

 「歩くって、どれくらい?」

「二十分ぐらいかしらね、ナビアプリだと」

「上り坂をのぼるんだよね?二十分……」

「のぼらないと行かれないわよ。行った先には水もわいているし、山の中だから、ここよりは涼しいと思うわ。それに」


 「それに?」

「行きが下りで帰りが上りよりは、ずっといいでしょう?」

「それは、そうなんだけど」

「とにかく、あとでお友達に会う時にこの地図を持って行きなさい」

「はぁい。あ、そういえばおば……みやさんって、昔、学校の先生だったの?」


 「ずっと昔ね。まだ真智まちが小学生だったころ。それが、どうかしたの?」

「ううん。この前隆之介(りゅうのすけ)智生(ともき)のおかあさんが教わってたって聞いたから。なんで、先生やめちゃったの?」

「続けててもよかったんだけど、他にもやりたいことが色々出てきちゃったからね。でも、今でも先生をしようと思えばできるわよ」


 「わあ!じゃあ、先生やってよ。ぼく、おばあちゃんに習ってみたい」

「先生になってもいいけど、厳しいわよ」

「え~!」

おばあちゃんの家でお昼ごはんを食べてから、隆之介の家に行った。

(れん)と智生はもう着いていた。


 「ごめんね、遅れちゃった」

「ううん、大丈夫。ふたりともついさっき来たとこだったし」

「よかった」

「じゃあ、さっそく……と言いたいところだけど。ごめん、昨日から探してみたんだけど見つからなかったんだ。公園がなかなかヒットしなくってさ」


 「それなら、おばあちゃんが見つけてくれてたよ」

そういって、おばあちゃんが持たせてくれた地図を二枚とも取りだして、目の前のテーブルに置いた。

そして、おばあちゃんに聞いたとおりの説明を三人に聞いてもらった。

「自然公園……そうか。名前に『公園』って入ってない可能性は考えてなかった」そう言うと隆之介はPC(パソコン)を操作しだした。


 数分後『ここか』と言って、ぼくたちの方に画面を向けてくれた。

「そこも、結構有名な場所みたい。ブログとか紹介している記事もいっぱいあるし。ただ、悠斗のおばあちゃんが言うように、ちょっと不便だからあまりたくさんの人は行かないみたいだね」

「知る人ぞ知るってやつか?」蓮が言った。

「そこまではないだろうけれど、この前のところよりは少ないと思うよ」


 「この前って……ああ!拓也が閉じ込められたあそこか!」智生が言った。

「そうそう!」

ぼくたちはあの時の、拓也が慌てふためく姿を思い出して大笑いした。

ひとしきり笑った後、隆之介が言った。


 「じゃあ、今度はここに行くとして。悠斗のおばあちゃんに甘えちゃって、ほんとにいいの?」

「うん。いいよ。使ってないパパの車を借りようって、おばあちゃんが言い出したんだもの」

「じゃあ、甘えさせてもらう。智生と蓮は、それぞれ家の人に了解取るのを忘れないようにね」

「もちろん……でも、今度はどうする?わき水くみにって言うのか?」蓮が言った。


 「そうだねえ」

隆之介はしばらくPCを操作していた。

しばらくして『これなら、行けるか?』とつぶやいて、ぼくたちの方に向きなおった。

「この広場の奥には川があって、水辺で遊べるようになってるんだ。泳ぐとかじゃなく水辺遊びね。そこに連れて行ってもらうというのはどうかな?」


 「そうだな。それ、いいかも!」

「じゃあ、目的はそれとして。いつ、行く?」

隆之介がこの前見せてくれた自作カレンダーをテーブルに置いた。


 「来週って、お盆に入るんだよね。ぼく、お盆はかあさんたちと出かけるんだけど、まだ日にちが決まってなくて。だから来週はフルで空けておきたいんだ」

「あ、おれんとこも出かけるからそのつもりでねって言われてる」蓮も言った。

「じゃあ、最速で再来週の火曜だけど……火曜日に最終打ち合わせして、行くのは水曜か木曜ということにしていいかな?」


 「ぼくは大丈夫。日にちは、おばあちゃんに聞いてみるね」

「おれも、大丈夫」智生も言った。

「じゃあ、そういうことで」


 翌週のお盆休みには、パパが単身赴任先から帰ってきてくれた。

久しぶりにパパに会えて、ぼくも嬉しかったけれどママはもっと嬉しそうだった。

ぼくは天狗さんのことは隠して、石窟に行ったこととか水風呂に入りに行ったことをパパに話した。


 「楽しそうなこと、やってるな」パパもニコニコしてぼくの話を聞いてくれた。

「来週も、どこかに行くんだって?」

来週おばあちゃんに車を貸すことを、ママから聞いていたらしいパパが聞いてきた。

「うん。なんかね、水辺で遊べる場所があるんだって。そういうところって行った事ないから楽しみなんだ」


 「今年は冒険三昧だな。お義母(かあ)さんには世話になりっぱなしだな」

「いいのよ。お母さん他人(ヒト)のお世話するの大好きなんだもの」

「そういう真智(まち)もいつも世話になってるんだろ?母の日……は過ぎちゃてるから、お義母さんの誕生日にでも食事に行くか?お礼を兼ねて」

「そうね、それもいいかもしれないわね」


 お盆明け。

約束どおり、火曜日にいつもの公園で遊びがてら打ち合わせして、水曜日に行くことに決定した。

集合場所は、この前と同じで市役所の駐車場にした。

まず、おばあちゃんがぼくの家に来てパパの車に乗り換えてみんなを迎えに行くんだ。


 「お母さん、運転気をつけてよ?久しぶりでしょ?普通車の運転。それによそのお子さんも乗せるんだし」

「私の安全運転は、真智が一番よく知っているでしょう?」

「それはそうなんだけど」

ママはおばあちゃんの運転が心配みたいだけど、少なくともママの運転よりは安心して乗っていられるんだよね。

でも、それは言わないでおいた。


 

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