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第二十五話

 「じゃあ、全員参加で決行だね」ケロリとした顔で隆之介(りゅうのすけ)が言った。

「そしたら、いつにする?」(れん)が言った。

「みんな、この日は用事があるっていう日があったら教えてくれる?」隆之介が尋ねた。

手には紙とペンを持っている……さすがだな。


 「あ、おれ、土曜と日曜がむずかしいわ。(なお)の相手しなくちゃいけないし」蓮が答えた。

「おれは……今のところ決まった用事はないよ」智生(ともき)も答えた。

「了解……ぼくは……と。月曜、金曜は1日中と土曜日は午後から用事が入ってる。悠斗(はると)は?」隆之介が聞いてきた。


 「ぼくは今のところ用事は入ってないよ」

「だとしたら……」隆之介がしばらく考えて言った。

「火曜、水曜、木曜の中から選ばないといけないわけだね」

今日は水曜日……。


 「じゃあ、一番早いのは明日か?」蓮が言った。

「そうだね。明日をのがすと来週の火曜日になる」隆之介が言った。

「じゃあ……明日行くか?」蓮が言った。

「だね」

「だな」

ぼくと智生も同意した。


 「じゃあ、明日の一時に」隆之介が言った。

「OK!」

「了解」

「ラジャ!」

三人は口々に言った。

「あ、帽子とタオル。もちろん水筒も忘れたらいけないよ……熱中症が怖いからね」隆之介が念押しで言ってきた。


 そして……木曜日。

いつもの場所に今日はみんな自転車で集合した。

忘れ物も遅刻も、一切ないなんて珍しいことかもしれない。

「じゃあ、行くよ!」


 道がわかっているのは、隆之介ひとり。

ぼくたちは隆之介を先頭に縦一列に並んで自転車をこいだ。

しばらく走った頃、隆之介が自転車を止めた。

そこは小さなお店がある交差点だった。


 「このあたりが校区の端っこ。道路の向こう側は違う校区になるから、自転車はここに置いていくよ」

そういうとお店の中に入って行った。

「こんにちは!おばさん。昨日お願いしに来た事だけど。しばらくの間、お店の横に自転車停めさせてもらいます」

そう言っている声が聞こえた。


 「ああ、昨日の子ね。いいわよ。邪魔にならない所だったらどこでも……お友達も一緒なんでしょう?偉いわねえ、宿題のためにこんなところまで来るなんて。気をつけて行ってくるのよ」

そう言ってるおばさんの声が聞こえた。

「宿題……?違うし!」智生が言った。

「シッ!いいからそういうことにしておこうぜ」蓮が言った。


 たしかに、ただ行くよりは宿題のために行くと言った方が印象が違ってくる。

『ぼくたちの力だけで調べたかったんですって言った方が、オトナ受けがいいんだよ』って隆之介が言いそうな気がした。

「さ、行こうか」出入り口から出てきた隆之介にうながされて、ぼくたちはお店の横の空き地の邪魔にならなそうな場所に自転車を置いて鍵をかけた。


 「ねえ、あのお店のおばさんって知ってる人?」ぼくは隆之介に聞いてみた。

「いいや、全然知らない人」

「ええ!知らない人なのに、自転車のこと頼みに行ってくれたの?」


 「うん。だって、適当な場所に置いていたら放置自転車って思われるかもしれないし。行き方を調べてたら、ちょうど良さそうなところに店があったからね。かあさんに連れていってもらって頼んだんだ。ちなみに宿題って言ったのは、かあさんだよ」

「ありがとう……って、(りゅう)はおかあさんには何て言ったの?」


 「ん?みんなでわき水を見に行きたいって。霊水って聞いた友だちも見に行きたがってるけど、自転車では行きづらい人がいるからみんなで歩いていくことにしたって言ったら手伝ってくれたんだ。まあ、『どうせまたなにかやるんでしょ?』と思っているとは思うけど」クスクスと笑いながら言った。


 「隆のかあさんって、すげえな」蓮が言った。

「おれんちだったら、そんなところに何しに行くの?そんなことして何か意味があるの?って言われるよな。もしくは、行けない子は連れて行かなくていいじゃない。かわりに直を連れて行ってあげなさいよ、お兄ちゃんでしょって言われる」蓮がうらやましそうに言った。


 「うわあ、それってイヤかも。おれんちだったら……それってほんとに宿題なの?口実にして遊びに行きたいだけなんじゃないの!って言いそう」智生も言った。

「そう?べつにすごくなんてないと思うけど。ぼくのかあさん……とうさんもだけど“なんでも、やりたいようにやりなさい”って教育方針なんだ。知りたいことを知り、やりたいことをやる。ただしうそをつくことと、だれかに迷惑をかけることは絶対不可」


 ……確かに。

お店の人に頼みに行く時も天狗さんのことを伏せてるだけで、あとはほんとのことしか言ってない。

「隆って、家の人に信用されてるんだね。ぼくだったら『まだ子どもなんだから、親の言うことを聞きなさい』で済まされそう」


 「信用とか、そういうわけではないと思うけど」隆之介が言った。

「子どもの育て方とか教育方針とか、その家それぞれだし。親の性格によっても変わると思うよ。たまたまぼくのとこは両親揃って“自分のことは自分で”派だからね。必要なお金とアドバイスはくれるけど、あとは“自分で考えて行動しなさい”だよ。あ、あの点滅信号のところを曲がるみたい」


 自分で考えて行動?……ぼくにそんなことできるかな?

ぼくだったら、どうだろう。

隆の両親みたいな人に育てられてたら、ぼくも隆みたいな行動ができていたんだろうか?

それとも今と同じで、おばあちゃんとか友だちに頼って助けを求めているだけだろうか?


 「それにしても暑いな~。まだ着かないの?」智生の声がした。

「もう少しかかるかな。ちょっと休憩しようか……木の陰に入ろう」隆の声に従ってぼくたちは木陰に入り水筒のお茶を飲んだ。


 

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