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第二十三話

 そんな……。

もしかしてって期待できる場所がわかったのに、また校区外?

そりゃ、天狗さんはいくらでも待つって言ってくれてるけど。

大人だったら……ううん、せめて中学生だったらぼくたちだけで自転車で行けるのに。

このまえ、おばあちゃんと見たような不思議なことを隆之介(りゅうのすけ)たちと一緒に体験できるのに。


 ぼくがうつむいて爪をかんでいると、(れん)が口を開いた。

「なあ、その場所って校区の端っこからどのくらい離れてるんだ?」

「えーと……一キロちょっと、かな。測ってないからわからないけど」隆之介が答えた。

「距離が、どうかしたの?」


 「こないだから言ってる『校区外に保護者の許可なしで行ってはいけない』というのは、おれたち子供だけで自転車で……ってことだよな?」

「そうだよ」隆之介が答えた。

「ということは、逆にいえば校区内だったらどこでも、許可なしで自転車に乗って行っていいってことだよな?」

「そう……だけど。あ!!」


 「ど、どうしたの?」

隆之介が急に大きな声を出したのでびっくりしちゃった。

隆之介は蓮と顔を見合わせてニヤニヤしてる。

どうしたんだろう??


 「だろ?」

「だね」

二人だけは話が分かっているみたいだけど。

智生(ともき)を見ると、ポカンという顔をしている。

たぶん、ぼくも同じような顔をしているんだろうな。


 「……わかんない?」隆之介がぼくたちに聞いてきた。

ふたりしてコックリとうなづく。

「ふたりとも、校区外に許可なしで自転車で行ってはいけないのは知ってるよね」

「もちろん」智生が言った。


 「ところで、校区外に家族と車ででかけてて、行った先でひとりで歩いてて注意されたことは?」

「それは、ないよ」と、ぼく。

「つまりは、そういうこと。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だったら注意をうけない、もしくはうけにくい」


 あ!!そうか。

智生も気がついたようだ。

「「校区ギリギリまで自転車で行って、そこから歩けば校区外へも行かれる」」

……ハモってしまった。


 「正解」隆之介が拍手しながら言った。

「まあ、歩くのがちょっと大変かもだけどね」

「でも、もしも『どうやってここまで来たの?』って聞かれたら?」ちょっと気になったので聞いてみた。


 「バスに乗ってでもいいし、家族の車ででもいいし。なんならずっと歩いてきたって言ったら、ビックリはされるけど怒られることはないと思うよ」隆之介がこともなげに答えた。

「それにしても……まさか蓮がそんな妙案を思いつくなんて……ぼくも、まだまだだな」

同感だった。


 「ねえ、どうやってそんな名案を思いついたの?」

「なんとなく……かな。校区外へ自転車で行くのがダメっていうだけで校区外に行くことは問題ない。だったら自転車に乗ってないならいいんじゃないか?って思っただけだよ」

「もちろん、校区からすごく離れているところになると使えないけどね。今回の場所だったらクリアできると思う」隆之介が言った。


 ……なんだかワクワクしてきた。

「じゃあさ、いつ行く?」同じようにワクワクしてきたらしい智生が言った。

「できるだけ早く行きたいのはやまやまなんだけど。まだ梅雨が明けてないし、雨だと自転車に乗られないから……夏休みまで待つっていうのはどうかな?悠斗は待てる?」隆之介が聞いてきた。


 夏休みまで、もう一か月もない。

「うん。待てるよ」

「じゃあ、夏休みになったら、決行しよう。それまでにちゃんとした場所は確認しておくよ。あとできれば一番近い、自転車を置いておける場所を探しておく」

「ありがとう、(りゅう)


 そして、待ちに待った夏休みがやってきた。

いつも夏休みは待ち遠しいけれど、今年は特別に待ち遠しかった。

……成績表は、うれしくなかったけどね。

終業式の今日も,普通に授業があるから帰る時間はいつもと同じ。


 だから、作戦会議は明日の午後と決めた……決めたと言っても普段通りに公園に集まるだけなんだけどね。

「ただいま!」

「おかえり、悠斗。帰ってすぐで悪いんだけど、おばあちゃんの家におつかいを頼まれてくれない?」

「いいよ。今日は、なにを持っていったらいいの?」


 実はここ数日、おばあちゃんってば夏カゼをひいたらしくって。

だから学校から帰ってから、おばあちゃんの家に頼まれたものとかママが作ったおかずを届けていたんだ。

おばあちゃんのカゼが治るまでまだ日にちがかかるようなら、わき水の場所に行く日をずらしてもらわないといけないよね。


 「こんにちわ~!おばあ……みやさん、具合はどう?」

「はーい……(ケホッケホッ)悠斗かい?具合ねえ、熱もないし体のだるさもないんだけど、咳がなかなかおさ(ケホッ)まらなくてね」

「なかなか治らないねえ。あ、これママから」


 「いつもごめんなさいね(ケホッ)。そういえば、天狗さんはどうされてる?」

ぼくはポケットから玉を取りだして、おばあちゃんに見せながら言った。

「えーとね、クコ茶は毎日続けてるよ。身体が戻ったからか、養分の吸収が早いと喜んでるみたい。あ、でね。二ヶ所目の候補の場所を隆之介が探してくれたんだ。お父さんから聞いた話らしいんだけど。そこに夏休みになってから行こうっていう話になっているんだ」


 「あら、今度の場所はどこ?」

「場所はよくわかんないんだけどね。観音様の像があってわき水があるんだって」

「ああ……一度行ったことがあるわ。そういえばお水を汲んでいる人がいたわね」

「なんかね、霊水と言われている水なんだって」

「そういえばそんなこと書いてあったような、なかったような。だめね……近くていつでも行けると思うと説明文なんて飛ばし読みしちゃうわ。あら?でも、あそこは悠斗の学校からは校区外になるんじゃないの?」


 



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