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第二十一話

 「なぁに?(へこ)んでるの?」

ただいまもそこそこにリビングに入っていったぼくを見ておばあちゃんが言った。

「うーん。凹んでるっていうか……」

ぼくはおばあちゃんに、昼間のことを話した。


 「そうねえ。けんけん飛びは練習すれば上手になっていくから、練習あるのみね。天狗さんのことは……確かに難しいわね。なんとなく秘密にしちゃってるけど、オープンにしたときのメリット・デメリットを考えると、ちょっとね。現代では“伝説上の存在”なんだから、居るといっても信じてもらえないだろうし。信じたら信じたで要らない騒動がおこるかもしれないし」


 「要らない騒動?」

悠斗(はると)は『ツチノコ』って知ってる?」

「ツチノコって、へびだよね?伝説の……“UMAユーマ”の本に載ってたよ」

「そのツチノコが、昔ブームになってね。いろんな目撃談が出たりして。見たって言われたところに多くの人が殺到して、いろいろとトラブルがあったのよ。昔ですらそうした記事が横行してたのに今みたいにネットが普及していると……」


 「あ、もしかしてフェイクニュース?隆之介(りゅうのすけ)が言ってた言葉だけど」

「そういう心配もあるっていうこと。それに天狗さんがどう思っているかが一番大事ね。ゆっくりでもちゃんとしっかり探してほしいのか、スピード第一でお祭り騒ぎよろしくわいわいと探してほしいのか……」

 

「そういえば天狗さん、『何年かかっても大丈夫』みたいなこと言ってたよ」

「だったら、ちゃんとしっかり探したがよさそうね」

「うん」

明日みんなに確認しようと思うけれど、やっぱりこのまま秘密にしておいた方がよさそうだと思った。


 翌日、昼ごはんのあといつもの公園に行ったら(れん)と隆之介が来ていた。

「みんな早いね。あれ?智生(ともき)は?」

「まだみたいだよ。そのうち来ると思うけど……昨日は大変だったみたいだね」


 待ってる間に昨日の話を蓮から聞いたようだった。

「大変と言うか……報告したいことがあったのにできなくってさ」

「そっちもだけど、悠斗ってけんけん苦手なんだってね」


 「え~!そっち?」

蓮も隆之介もニヤニヤ笑いをしている。

「もう!あとからはちゃんとできるようになっただろ!」

「ああ、ごめんごめん。悪気はないんだよ。いろんな事、そこそこできる悠斗にも苦手なものあったんだな~って思っただけ」隆之介が素直に謝ってきた。


 「ところで、報告したかったことって?」蓮が言った。

「あのね、昨日の朝おばあちゃんに頼んで……」

言いかけたところに『お~い!』と聞こえた。

声のする方を見ると、智生がこっちにむかって手を振りながら走ってくるのが見えた。


 「ごめん!遅くなった」近くまで来た智生が息を切らしながら言った。

「大丈夫だよ。ぼくたちが来るのが早かっただけ」隆之介がフォローする。

「ちょうど悠斗の話を聞こうとしていたところだったんだ」

「あ、なにかあったの?」


 智生の問いかけに、隆之介がぼくの方を見て話をするようにうながしてきた。

ぼくは昨日おばあちゃんと豊田神社にある井戸に行った事、そしてそこで起こったことを話した。

「……不思議な事があるもんだな」蓮が言った。

「ぼくも、その場に立ち会いたかったな」隆之介も言った。


 「その姿って、ぼくたちにも見えるの?」

「たぶん見えると思うよ」

ぼくはポケットから玉を取り出して隆之介に渡した。


 手にした玉の中をしばらくすかして見た後、隆之介はなんだか興奮したような顔になっていた。

「ほんとに、身体がもどってる。それに玉も少しだけ大きくなってる気がする」

「ほんとに?おれにも見せて」智生が隆之介の手から玉をとってのぞきこんだ。

「ぶわっはっはっは!」突然、智生が笑いだした。


 「なんだよ、このカッコ。まるでダルマ……いてててて!」

頭を押さえて智生が座り込んだ拍子に、玉が地面に落ちた。

【その下品な笑いはなんじゃ!だるまとかいう呼び名も、わしをばかにしておるようにきこえるぞ】

「相変わらず、進歩がないね」ためいきをつきながら玉を拾った隆之介は、蓮に渡した。


 「このまえも、急に水につけようとして痛い思いをさせられてたんじゃなかったっけ?」

「そうだけどさ。その姿見たら、そうとしか見えなかったんだもん」ふくれ顔で智生は言った。

「それに、この前よりもずっと痛かったぞ」

 

 そりゃ、そうだよ。

だって身体が戻った分、能力も戻ってきてるんだから……そう思ったけど、あえて言わないことにしておいた。

「へえ……ほんとに身体が戻ってる」

蓮が玉をのぞきこんで、感心したように言った。


 「じゃあ、『水にかかわる場所』っていうのは間違いじゃなかったんだ」

「そうだね」隆之介が言った。

「でもなあ……水ってだけじゃ、次を探すのは大変じゃねえ?」蓮が言った。

「うーん。いままでの話だと、『たまった水ではないこと』『汚けがれた水ではないこと』は確かだし。わき水とか、そういった場所をさがして試してみるといいかもしれない」隆之介が言った。


 「水にかかわる場所……あと四ヶ所だっけ?」蓮が言った。

「えーと……戻ってないのが両手と両足だから、あと四ヶ所だね」隆之介が確認するように言った。

「手と足、セットでおいてあると見つけやすいのにな」智生が言った。


そんなに、たやすくは見つけられないようにしてあると思うよ?確か『反省せよ』って感じで試練を与えられているんでしょ?見つけるのは大変と思っていた方がいいよ」隆之介が言った。


 

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