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第十五話

 「そんなことがあったんだ!」

翌日のお昼過ぎ、いつもの公園に集まった時にぼくは昨日のことをみんなに話した。

一番最初に反応をしたのは、思ったとおり隆之介(りゅうのすけ)だった。


 「うん。(りゅう)のおかあさんに分けてもらったセージ?っていうのがすごく効果があったみたいで。ありがとう」

「そうなんだ。きっとかあさんも喜ぶと思うよ、役に立てたって。元気?っていうのは変かもしれないけど、それだけ会話ができるようになったのってすごいことだよ」


 「だよな。えっと天狗の望みはもとの姿を取り戻すことだっけ?ほかの身体がある場所の手がかりも言ってたんだろ?あとはそこに行くだけ。ちょろいって」智生(ともき)が親指を立てた“グッ”のポーズをしながらそう言った。


 「でもさあ」

(れん)が口をはさんだ。

「手がかりっていっても『天狗にかかわる場所』ってだけだぜ?どこかっていう場所は全然わかってないんだよ?」


 「そうだね。いくら広くはないといっても、市内のどこに行けばいいのかまったくわからない今の状態では、行くこともできないよね」隆之介も言った。

「天狗って、市役所の近くに立ってるアレだろ?あれ関係があるんじゃないの?」智生が言った。

「いや」隆之介が答えた。


 「あれは、つい何十年か前に建てられたものだって聞いたよ。天狗が封じられたのはずっと前って話だったよね?」

「うん。自分が何歳かわからないくらい長いこと生きてるって言ってた」ぼくは答えた。

「市っていう言葉も知らなかったし。人が住んでいる場所のことは里とか村って言ってた。おばあちゃんも『ずいぶんと昔の話っぽいわね』とも言ってたし」


 「そんな昔からあの場所に建ってたとは思えないし。それにもしそうだったとしたら『関わる場所』なんて言い方はしないと思うよ。だってあの像は『そのもの』だもん」隆之介が言った。

「だよな~。そんな単純なはずはないよな。なんたって反省しろって罰みたいなものなんだろ?」蓮が続けた。


 「それにさ、悠斗(はると)が見つけた玉が頭で、あと五ヶ所分隠されているんだよな?」

「うん。そう言ってた」

「あの像、市内に五個もたってないだろ?俺、こっちに来たばっかりでよくは知らないけど」


 「うん。たぶん二~三個だと思うよ」隆之介が蓮の問いに答えた。

「ぼくもしっかりと数えた事はないから、ちゃんとした数は知らないけど。かあさんの車で移動するときに、二ヶ所くらいでしか見かけてないもん」


 「じゃあ、まずは場所の特定からか」“あ~あ”と言いたげな顔で智生ともきが言った。

「天狗にかかわる場所って、いったい何なんだ?」

みんなもそれぞれに腕を組んだり、頭をひねったりしていた。


 しばらくたった頃、蓮が口を開いた。

「なあ、今ここで考えてても何も思いつかないと思うんだけど。そんなことよりかくれんぼしようぜ」

「そうだね」場所が全然思いつかなかったぼくは、すぐに同意した。


 「賛成」

「だね。下手の考え休むに似たり」隆之介がまとめた。

遊び終わったぼくは、みんなと別れてまずおばあちゃんの家に行った。


 ほんとは今夜も泊まって天狗さんとの話を続けたかったけれど、今日はママも帰ってくるし明日は学校があるから、そういうわけにはいかない。

「ただいま~。おばあ……みやさん、なにかあった?」


 「おかえり。天狗さんはずっと静かなままよ」

「そうなんだ。あ、あのね、みんなに天狗さんといっぱいしゃべったことを話したのね。でも、手がかりってなるとやっぱりみんな何も思いつかないって。智生が天狗の像じゃない?って言ったけど、蓮も隆も違うだろうって言ってた」


 「そうね。さすがに像は違うと思うわ。それはそうと。悠斗の家ではクコ茶は続けられるけど、さすがにセージを焚くのとはちみつ湯は難しそうね。天狗さんの体調?っていうのかわからないけれど、調子が悪くなった気がしたら持っていらっしゃい」

「うん。ありがとう」

「あと、手がかりのことも考えておいてね。わたしもちょっと調べてみるけど」


 家に帰りついたら、まだママは帰っていなかった。

とくにおつかいとかも頼まれてなかったから、手を洗って部屋に帰りポケットから玉を出して机の上に置いた。

玉を見ながら、ぼくは昨日のことを思い出していた。


 ママの急な出張のおかげで、浄化っていうこともできたし、はちみつ湯で天狗さんの元気を取り戻すこともできた。

それに今までよりもたくさん話ができて、天狗さんのことをいっぱい教えてもらえた。


 手がかりの謎はまだ全然解けてないけれど、玉を拾ってすぐの時よりはずっと天狗さんの助けになれるような気がしてきた……まだ気がするってだけだけどね。


 あ~あ、ママの出張がもっと増えたら、天狗さんの手助けがもっともっとできるのに……おばあちゃんに手伝ってもらって、だけど。

そんなことを考えてたら玄関のチャイムが鳴って鍵をあける音が聞こえた。


 「ただいま~。悠斗、帰ってる?」

「おかえり、ママ」

ぼくは部屋を出て玄関に行きながら答えた。


 「ごめんね、遅くなって。夕ご飯、冷凍ピザで我慢してくれる?」

「ぜんぜん構わないよ。ピザ大好きだもん……あ、ぼくが焼こうか?ママ着替えとかあるでしょ?」

「あら、珍しい。でも大丈夫?ちゃんと焼ける?」

「大丈夫だよ、まかせて」


 

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