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スライムになった私が拾った体を使って好きに生きる話  作者: あやちん
<四章> Crossworld ―『異』世界からの帰還―

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〘九十一話〙ミーア、落ち着き先確保!

香住(かすみ)氏宅の寝具に付着していた人型の残留痕はDNA鑑定の結果、香住氏本人のもので間違いないそうだ。これで死亡は確定した。さらにミーア君が持っていた遺灰も鑑定には苦労したようだが先の鑑定結果と一致、同一人物のものという結論に至った」


 取り調べ室に入り、席についてまず聞かされたのはこれでした。

 仕事早すぎだし、九歳の女の子にする話でもないと思います。


「賊が侵入した形跡もなく、争った跡もない。布団で横になって亡くなっていたという君の言を信じるのならば、事件性は著しく低いと言えるだろう。とは言うものの遺体がないおかげで、死因は永遠にわからず仕舞いだ」


 うんうん、そりゃそうですね。


「それに君の証言だけでは証拠としては著しく不十分で信ぴょう性に欠けると言わざるを得ず、また、遺体を焼くなどという問題というか異常行動と、その()()……についても、見せてもらった今でも未だに信じがたく、その扱いに苦慮している。合わせてそのような行動にでた君の精神的な状態についても懸念があり、今後どう対応するべきか結論は出ていない」


 リーダーおっさん、相当疲れがたまったお顔をしてらっしゃる。

 なんか大変そうだね。


 うん、私のせいか。すまぬ!



「そもそもの問題としてだ」



 リーダーおっさん、そこまで言うと座っていた席から立ち、私の方に歩いて来て目の前にしゃがみ、私をじっと見つめてきた。


 やだ、恥ずかしい。

 おっさんに見つめられても全然うれしくないです。茅野(かやの)さんとチェンジ!


「結局君はどこの誰なんだ? 訳の分からない不思議な能力といい、もうわかることの方が少なすぎて我々は捜査一日目にしてお手上げ状態だ」


 実際そうやって見せてくれるリーダーおっさん。

 いや、一日でここまでやってれば十分すごいと思います。


 でもなぁ、「異世界から来ました。女神から送り返されてきた元香住風太(かすみふうた)です!」って言っても絶対信じないだろうし、頭大丈夫かって疑われるの間違いないでしょうし……。


「ミーアはミーア。どこの誰だとか体のことだなんて私だって知りたい!」


 うん、安定の何もわからない子設定!

 白々しくて無理ありすぎるにも程があるけれど、これで押し切るしかないのです。


 しかし、これから何回同じこと言わされるのやら?

 面倒くさいね。


「……そ、そうか。まっ、まだ一日目だ。そのあたりは後日調査とカウンセリングするなどして進めていくしかないか。正直、手詰まり感は否めないが……とにかくだな、君の特異な体質というか、見せてくれた手品まがいの現象のこともある。それに犯罪行為を犯したのも事実だ。さらには君はつまるところ住む家もない訳だろう?」


 て、手品って。そう思いたい気持ちもわかりますが、存外頭固いですね、リーダーおっさん。とは言っても、まぁ追々調べられるんでしょうけれど。


 とりあえず住むところがないのは事実。

 なのでこう答えるしかない。


「うん!」



***



 そんなこんなであっという間に一週間と少しほどが過ぎました。


 自称九歳、実際の見た目も九歳以下の幼女にしか見えない私は、少年保護法などというありがたい法律のおかげで逮捕されることもなく、色々紆余曲折(うよきょくせつ)あったみたいだけど最終的に保護的処置をとるとなったみたいです。よくわかりませんが。

 通常なら私の身柄は一時保護所などに送られた後、しかるべき対応となるらしいのですが、私の存在があまりに特殊で少々危険性もはらんでいるためそうも出来ず――、在宅による保護観察を受ける感じとなりました。


 住むところがない私にはある意味願ったりな処置ですが、保護観察ですからその為の観察官が要るわけです。


 で、在宅させてもらうそのお宅が実は観察官さまのお宅な訳なのです。



「ミーアちゃん、お風呂準備出来たよ? 早くいらっしゃい」


「ふぁ~い」


 茅野さんに呼ばれた私は着ていた可愛らしいモコモコ部屋着をぽいぽい脱ぎ捨て、彼女が待つ浴室へとトテトテと向かいました。


「もうミーアちゃん、脱ぎ散らかしちゃダメ。お洗濯もしたいしこっちに持ってきて」


「え~、昨日着替えたばかり。まだいい」


「だ~め、子供は汗いっぱいかくんだから、部屋着とはいえ毎日でも洗わなきゃ」


「む~」


「可愛くむくれても、だめ。ほら、持ってらっしゃい」


「は~い」



 などと何とも生暖かい会話をしてる私と茅野さん。


 そう、私は警察署で知り合った茅野さん、茅野瑠唯(かやのるい)さん二十六歳独身! 彼氏なし。のお宅にて在宅保護観察を受けることになっていたのでした。


 私の存在は法治国家日本においてまだまだ宙ぶらりんのままですが、幼気(いたいけ)な子供を放置することも出来ず、かといって怪しげな行動をし、妙ちくりんで危険を伴う能力を持つ私を施設に放り込むことも(はばか)られる……ということで、どうするか? となったとき、茅野さんが手を挙げたらしいです。

 茅野さん、見た目は二十六歳には見えない可愛い系の美人ですが、本人曰く中々の武闘派らしいです。さすが刑事部所属といったところでしょうか?


 いざという時安心だね。

 いや、いざって何でしょうね。


 でも結構裕福な家の出らしく、住んでるここもかなり立地のいいところに建つ高級マンションでありまして、エントランスにはコンシェルジュがいて私にもニコニコ笑顔で対応してくれたのにはさすがに驚きました。


 もう茅野さん、なんで刑事さんなんかしてるの? って感じです。


 ちなみに十五階建てで、部屋は十二階にあり、当然エレベータでの行き来となりますです、わ~い。



 ともかく、そうなった!




 会話に話を戻せば、スライム体に汗などという概念はもちろんありませんが、今の私の体は人の体ベース。スライム体で構成されているチートボディではあるものの、体の機能はもちろん、細胞や臓器、骨格に至るまで全てミーアボディ準拠となっております。

 したがって色々出るもの出るし、出せます。もちろん、出さないようにも出来ますが、わざわざ不審がられることもないので通常は普通に人になりきることにしてるのです。だから普通に着てる服は汗でべとつきもするし、汚れもするのです。


 ただ懸案事項としては、異世界人であるミーアの体と地球の人の体。外見上はまったく変わらないように見えますが、実際はどうなの? ってところでしょうか。

 見た目一緒でも中身は全然違ってたとなっても私には判断材料がありませんし、対応も出来ません。これについては出たとこ勝負としか言えません。


 ま、なるようにしかならないでしょう。

 ヤバそうになればまたいつものように逃げればいいですし。



 ついでに言うと体を成長させるかどうかは悩ましいところ。ぶっちゃけ現状のままだと成長もせず、永遠の幼女となります。


 ロリババアへの道しかない。

 うん、それはちょっといやかもしれません。


 ま、悩ましいと言ったものの、いつまでもこの現状に甘んじている訳にもいきません。

 成長を気にしなければいけないほど、ここに留まっているつもりなど更々ありません。とっととアンヌの所に還るんですから!




「今日も一日がんばったね、えらいえらい」


 大人二人が余裕で入れるバスルーム。

 私を椅子に座らせ、長い髪を洗ってくれながらそう話してくる茅野さん。


「うん、かやのさん、いつもありがとう。こんな私のメンドウみてくれて」


 素直な気持ちを伝えました。

 仕事とはいえ、怪しい私の観察官を引き受け、なおかつ一緒に住まわせてくれるなんて、ほんとあなたは女神ですか!


 いや、女神なんかと一緒にしてはダメです。茅野様と呼ぶ、べき!


「もう、お姉ちゃん、でしょ? いつまでも他人行儀はさみしいよ。署や研究所ではともかく、お家ではそう呼んでね」


「あ、うん、その……わかった、お姉ちゃん」


「うっ、うん、それでよし! ほーら、髪もきれいになったよ。ミーちゃん、一緒に湯舟につかって温まろうね」


 私の長い髪がお湯につからないようタオルで器用にまとめてあげてくれた、かや、いや、お姉ちゃん。そのまま、私の手を取りながら一緒に湯舟にイン!

 つるペタすとんのミーアボディと違い、見事なプロポーションを見せるその肢体を目の保養とばかりにガン見する私。こんなグッドな機会に見ないなどという選択肢、私には存在しません。


 うん、お姉ちゃんは体毛薄い方ですね。


 制服越しでは分からないナイスなボディはとてもグッドです。

 私は何を言っているのでしょう?


 スライム体である私に性欲などというものは存在しませんが、そんなものはこの際関係ないのです。美を愛でるその心こそが重要なのです!



 眼福です。




***



「ミーア君のDNAが人のものと一致しない?」


「はい、それもわずかばかりの違いどころではなく、全体の一割にも及ぶレベルで違います」


 訪れている研究所の主任研究員だという、班目(まだらめ)という男から聞かされた情報に俺は首を傾げた。


 正直言って違うと言われてもどう捉えたらいいか、判断に苦しむところだ。


「例えばです。見るからに外見が違う人とチンパンジーの遺伝子の相違はわずか0.5%程度でしかありません。ちなみに一割、10%の相違はどれくらいか、わかりやすく言うのならば(ねこ)です。ミーア君は、人とネコの違いほど遺伝子情報に相違があるのです!」


 所員が(つば)を飛ばす勢いでそうまくし立ててきた。


「ね、ネコですか? それはその、凄いのですか?」


「凄いなんてものじゃありません! 三木さん、これは大変な発見ですよ。見せてもらった、信憑性(しんぴょうせい)を疑ってしまったあの動画ですが、このDNA鑑定を見るとあながち嘘とも思えなくなってきました。ついでに言うと血液型も新たなタイプの可能性大であり、分類上の研究を要するでしょう。さあ、さあ、いつ会わせてもらえますか?」


 ミーア君のことを上司に報告し苦虫を潰したような顔をされ、その上で『生命情報科学技術研究所』などという何度聞いても理解できない、それでも一応文科省公認の研究機関であるここを紹介されたわけだが。


 正直引くレベルだ。


 最初、例の手のひらから火を噴き出した動画を見せればバカにしたような目で見られ、もう二度と来たくないとも思ったが、上司の手前そうもいかず。

 今日だって預けてあったDNAや血液サンプルの鑑定結果が出たというからいやいや訪れたくらいだ。


 それがどうだ。

 手のひらを返したようなこの出迎えっぷりな訳だ。


 何はともあれ、やはりあのミーアにはとんでもない裏がありそうな予感がヒシヒシ感じられ、俺の胃が悲鳴を上げそうだ。


 もう勘弁してほしいぞ、マジで。

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[一言] えーらいこちゃえーらいこちゃ
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