22話 【封印】発動
「リヴァドラム!」
リヴァドラムは私の元は飛んで来た。
「【反転】で【封印】解けない?」
リヴァドラムは申し訳なさそうに首を振る。
やっぱりか。
おそらく、【封印】はスキルの使用や回復を禁じる状態異常だ。
つまり、冒険者をただの人間にする状態異常。
しかし、問題はそこではない。
あらゆる状態異常には時間制限がある。
もちろん、ARマシンで全て見えていた。
花鹿が蹄を鳴らした瞬間、【封印】の時間が恐ろしい程延びたこともね。
「………………」
「どうしましたか、ユーキ?」
花鹿はしらばっくれている。
こういう馬鹿みたいな芸当ができるのは、最近会った奴ではリトルゲッコーくらいだ。
アイツ、「僕は敵じゃないよ」とか言ってたくせに!
直接攻撃しないって意味? 結局敵よ!
「あー、もう!」
【聖剣】もしばらく使えない。
他の人に行ってもらう? だけど、花鹿のスキルの全容が見えない。
大人しく負ける? 論外。私達は勝ちに来たのに。
ただ、S級冒険者のうち、誰が“二周目のサバイバー”かわからない以上、手を貸してもらうのは怖い。
「琴音、オルト、レオ、トム!」
とりあえず、信用できる者に声をかけた。
間違いなく、この四人は大丈夫だ。
「私に、合わせて!」
覚悟を決めた。
絶対、倒す。
「わかった。私を守ってちょうだい」
アナスタシアがすぐ近くの美雨に声をかけた。
「わかったヨ」
琴音はアナスタシアの隣に立つとARマシンをつけた。
「サポートは、付けたが良いですよね」
「ええ。周りを見て、けれど、視覚だけで判断し過ぎないこと」
私もそれに同意する。
落ち着いた様子の琴音に対して、突然指名されたオルトは目を白黒させていた。
そう言えば、彼らは“二周目のサバイバー”については何も知らない。
「大丈夫よ! ほら、しっかり!」
私の声にビクリと肩を震わせたが、すぐにコクリと頷いた。
「準備はできましたか?」
わざわざ待っていてくれたらしい。
親切な気遣いは、こちらを舐めていることと同義だ。
「リヴァドラム、【ブレス】!」
「キュァァァ!!」
私達は同時に走り出す。
花鹿が構えた。
「【神秘ノ光】!」
琴音の状態異常防止スキルにて、花鹿のスキルは不発に終わる。
私はもう、【聖剣】を使えない。
だが、諦めるわけにはいかない。仲間が死ぬかもしれない。それだけは、絶対に。
私は【ヴィクトリム】を【カスタム】した。
神剣【ヴィクトリム】の属性は【炎】と【武】である。
それを、【炎】と【毒】へと変えた。
花鹿はおそらく、草木を操るので【炎】が弱点だ。
そして、草木は当然【毒】にも弱い。
「レオ! オルト!」
私達は同時にそれぞれの武器を振るう。
まずは、オルトが鉄パイプを振りかざす。
花鹿は問題ないと判断したのか、鉄パイプを立派な角で受け止めた。
ガーン!という、決して大丈夫ではない音が響く。
あの鉄パイプ、ただの鉄パイプじゃないよな?
「【追撃】!」
今度はバーン!という音が辺りに響く。
上手い、としか言いようがなかった。
【追撃】は一度命中した攻撃の二倍の攻撃を必中で当てるというもの。
不可思議な力での攻撃になるので、魔法系スキルの一種と言ってもいい。
オルトは鉄パイプを避けられると、【追撃】が発動しないので、本来の威力の少しだけ弱い威力の一撃を加えた。
不自然に弱いと、逆に警戒されるし、【追撃】の威力も弱くなる。
敢えて、自分は武器よりも弱い人間と見せかけることで、必要量のダメージを稼いだのだ。
琴音同様、育て甲斐のありそうな小童だな。
レオが怯んだ花鹿の首筋に、【炎ノ剣】を打ち込む。
さすがに避けられなかった。
花鹿の首が焼け爛れる。
苦痛の鳴き声を上げた花鹿に、味方から歓声が上がった。
「リヴァドラム、サポート!」
「キュ!」
私は最後の一撃を放つ。
二人のように物理攻撃向きのスキルはないので、レオが作った火傷に【毒】属性の一撃を叩き込んだ。
花鹿が【毒状態】になる。
「リヴァドラム!」
「キュア!」
リヴァドラムが【ロック】というスキルを使う。
これは発動した時のステータスを十分の間固定するというもの。
味方のステータスが上昇している時、状態異常がないとき、敵の場合はその逆の時に使える。
そして、この状態の時、傷を治せなくなる。
それは味方にも言えることだし、これを使うことでステータスが下がらなくなってしまうが、問題ない。
「トム!」
「了解」
静かな声が響く。
「【流星弾】」
花鹿が踏ん張った。
彼女の前に一輪の花が咲く。
巨大な盾のような。
「っ!」
衝撃波が私達を襲う。
「こざかしい」
花鹿はアナスタシアの一撃を防いでいた。
「いくら小技を使おうと、私には勝てない」
花鹿は蹄を鳴らす。
ヤバイ。頭がカンカンと警鐘を鳴らした。
「【花園】」
一面に花が咲いた。
これ、避けられない!?
「【封印】組は後退して!」
時、既に遅し。
花園は【封印】組の手足に絡まり、根を生やし、生気を吸い取っていた。
「あ、え?」
琴音が間抜けな声を上げる。
「うわぁああああああああ!!!!」
一人が大声を上げた。
ダムが崩壊したかのように、悲鳴が響きわたる。
生き、てる?
あの状態で? なんで?
私は花鹿を見る。
【ロック】により、回復はしていない。
おそらく、本来なら………。
「そう簡単に死ねませんよ」
花鹿は得意気に言う。
そうか。そうなら。
十分経つ前に、殺さなきゃ。
私は息を吐いた。
こんなこと、いつだってあった。
麗華の時も、そうだった。
今更、罪が増えたところで、私はそう。地獄行きだから。
「ごめんなさい」
【ヴィクトリム】の属性を【死】へと変えた。
その瞬間、ブライトが目を見開いた。
「嘘、だろ? 僕らは」
踏み込んだ。
そして、味方に向かって加速する。
皆んな驚いた。
花鹿も、S級冒険者も、皆んな。
けれど、すぐに反応した者もいた。
「オルト!」
琴音が叫んだ。
すぐにオルトが私の後を追いかける。
鉄パイプを振りかざす。
そして、首を思いっきり叩いた。
頭と胴が分断され、力無く倒れる。
私はそれを横目見て、ブライトに向き直った。
「許して、なんて言わないから」
ブライトの目が怒りに染まる。
口を開いたブライトの言葉を待たず、私はブライトの首を切り落とした。
私に、助けるという選択肢はない。
いつだって、あり得ない。
この状態で、スキルを使えない一般人を助けたところで、足手まといにしかならない。
それなら、いっそ、片付けてしまおう。
「キュ?」
全員、殺した。
どうして、頬が濡れるのか。
「工藤さん」
オルトが次の指示を待っている。
強い子だ。
人殺しなんて、初めてだろうに。
「ごめん」
「いや」
「絶対仕留める」
そして、私の方針は変わった。
絶対、この化け物をぶっ殺す。
うーん、ライバーになるのにもう少しかかりそう?




