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12話 S級冒険者と出迎え

「私なんかがいていいんですか……?」


 琴音(ことね)が不安そうに呟いた。


「もーまんたい」

「いや、問題大有りだろ」

「琴音は私の弟子第二号だから」

「……………」


 私は滑走路を見つめる。

 もう少しで、第一便が到着するはずだ。


 オーストラリアのS級冒険者、ブライト・ライト・クリオネット。

 韻を踏む名前だが、実際はとても暗いキャラである。

 名前とは正反対なので、ノンブライトなんて冷やかされていた。


 第二便は中国から。

 ()美雨(メイユイ)(リン)小龍(シャオロン)である。

 中国勢は二人いるのだ。


 次に来るのは、ハワイアンズだろうね。

 アメリカ勢のうちのハワイの方、リージェット・パール。

 私より一つ下の十九歳で、響木の次に若い。


 アメリカ勢のニューヨークの方。

 レタンティオ・シェーファー。

 ハーバード大学の秀才である。注目度も高めだね。



 あとはヨーロッパ勢かな。


 まずはロシア。

 アナスタシア・バーベリ。

 狙撃の名手で“スナイパー”。もちろん【必中】持ちのマジモンの遠距離型である。

 その他にも【追撃】、【拡散】というスナイパー向きのスキルを所有している。


 イギリス。

 レオ・グリフィン。

 剣士で、有名ライバーの一人である。


 そしてもう一人。

 カナ・ブラック。

 職業(クラス)は“死霊術師(ネクロマンサー)である。

 昔から霊感があり、幽霊と話せるらしい。

 一人だけ、死んだ後の冒険者の霊が見えたため、かなりのトラウマを持っている。

 私と同い年で、かなり仲が良い。ちなみに毒舌。


 イタリア。

 フィリップ・ロッソ。

 イタリアらしく、陽気な奴。

 しかし、最年長の二十五歳で皆んなの頼れる兄貴でもある。


 最後にアフリカから。


 南アフリカ。

 アーノ・ルルース。

 “十二勇者”唯一の黒人冒険者で、黒人の間ではかなり英雄視されている人物である。




「あ、来ましたよ」


 オーストラリアからの飛行機が到着した。

 普通の便に乗っているあたり、ブライトの小心者っぷりが見てとれるだろう。


 彼は一般人に紛れて入国し、そそくさと私達の隣に立った。


「………やぁ、元気だった?」


 彼なり精一杯声を出したんだとわかった。

 私達の周りには記者がそれなりにいるのだが、仲間の隣だと安心するのだろう。


「元気よ。それより、飛行機が墜ちないか心配だったんじゃない?」


 ブライトはキョトンとしてふふふと笑った。


「そうなんだよ。よくわかったね」

「わかるわよ。あなた臆病なんだもの」

「帰りも怖いよ。もう日本に住もうかな」

「船は?」

「タイタニック見たことないの?」

「……………」


 マジでこういう奴だったわ。



 

 中国勢が到着したみたいだ。

 かなり大きめの専用機が滑走路を滑っている。


「よっす!」

「よぉーっす!」


 私は次にやって来た美雨(メイユイ)に抱きつく。

 すぐ後ろに黒髪美形男子が歩いてきた。


「やあ」

「久しぶり」

「後ろのどうにかして?」


 ブライトが不満そうに小龍(シャオロン)に呟く。

 美形について来た大量の女と、控えていた記者達がそろそろと出てきた。


「あれ?」


 小龍(シャオロン)は琴音に気づいた。


「可愛いね、どこの子?」

「そこ、私の弟子にナンパすんな」

「うわ、ほ、本物だぁ」

「この女たらしめ」

「たらされる奴が悪いんだよ」

「コラ、早く退散させるんダヨ」


 美雨(メイユイ)の指示には大人しく従うので、何とかなった。




 ハワイ便が到着した。

 アロハシャツにビーサンのグラサンがテクテクと近寄ってくる。

 その後ろに死んだ魚の目をしている眼鏡がいた。

 どうやら一緒に来たみたいだ。


「リージェット。レタンティオ」

「やぁやぁやぁ!」

「黙れアロハ近づくんじゃねぇ」

「うわーん、レタンティオーボク泣いていい!?」

「勝手に泣けよアロハ野郎。泣きたいのは俺の方だ」


 何かあったらしい。

 レタンティオはブライトと小龍(シャオロン)と楽しそうに話し始めた。

 大学の難しい用語が飛び交ってるから、研究内容の情報交換でもしてるのかもしれない。


「にしても、久しぶりだねぇ! 元気してた?」

「うん。元気よ」

「リヴァドラムは?」

「興奮するからお留守番」

「そっかー」


 リージェットは変わらない。




 ロシアからやって来たのはプライベートジェットだった。


 優雅に歩いてくる、白髪碧眼の美女がいた。

 いや、どこの強キャラだよ。


 しかし、そんな彼女が持つ四角い箱にはおそらく彼女の得物が入っているのだろう。

 アナスタシア・バーベリの登場である。


 バーベリ財閥社長の一人娘であり、大金持ちだ。

 貧乏人の私とは価値観の違いにより、すれ違いも多かったが、近遠距離コンビとしてはかなり優秀な働きができたので、相性は悪くないと思う。


「あら、久しぶり、ジェリー」

「久しぶりです」


 小柄な私と大柄なアナスタシアは、(トム)ネズミ(ジェリー)なんて呼ばれている。

 仲悪いのに、いざという時は協力できる喧嘩するほどなんとやらの関係である。


「相変わらず仲悪いねぇ」

「あらノンブライト、少しはお話できるようになったの?」

「まあね。僕も大人になったみたいだ」


 偉そうに、飛行機にビビってたくせに。


「あと四人ね」




 意外なことに、次にやって来たのは南アフリカ便だった。


 アーノは鋭い目で私達を見ると、軽快な足取りでやって来た。


「リージェット! 会いたかったぜ!」

「ボクもさ、相棒!」


 ブライトは無言でオクラホマミキサーを流し始める。

 いや踊るや。

 私が音楽を止めると不満そうに三人の視線が集まる。

 いやブライト。お前はなんなんだよ。


「トム。イギリスとイタリアはまだなの?」

「さあね、ジェリー? 私の住むモスクワからは二人の国は離れてるし」


 琴音はもうすでに失神寸前である。


「でも、ジェリーは面白い子を拾ってくるのね」

「逸材よ」


 みんなが琴音にフレンドリーに接しているのは、皆んなが優しいからではない。

 琴音の隠れた才能を、どこかで認知したからである。

 この後のボス戦は、琴音にとってはターニングポイントになるんだろうな。




 イタリア便が到着した。


 イタリアの国旗が描かれた専用機に乗っての登場である。おそらく準備に時間がかかったんだろうな。

 どこも、見栄張りすぎだって。


「兄貴ー」「兄貴ー」


 フィリップは嬉しそうに、リージェットとアーノを迎え入れた。

 少し大人になったか?

 彼女でもできたんだろうか。


「よお、アレぶりだな、ユウキ」

「リーダーも、お元気そうで」

「いや、元気じゃないぞ? 機内でアニメ鑑賞に忙しくてだな」

「お暇そうで良かったです」

「おい」


 フィリップは他の者とも楽しそうに話している。


 にしても。


「レオ、遅いなぁ」

「何? 元カレが心配?」


 ブライトが私の隣に来る。


「別にそんなんじゃない」

「“二周目のサバイバー”の話って本当なの?」

「…………」

「君は死んだらしいじゃないか」


 ブライトは口籠った。

 何かを言いかけている。


「わかる気がするよ、君が死んだ理由」

「え?」

「君は知らないだろ。僕ら第四十四層で四つに分断されただろう?」

「ラピリンス?」


 アレは確か、四十四人が十一人になって一つの組が全滅、二つの組は無事に無傷で合流。

 そして、レオとブライトの組は、二人を残して死んだ。

 その間に何があったのかは、二人の口からは語られていない。


「明らかに、操作された組み合わせだったよね」

「?」

「僕は、いや、僕らはまんまとその“サバイバー”に嵌められたんだ」


 強い憎しみが、ブライトから溢れた気がした。

 そして、一つ確信する。

 ブライトは、“二周目のサバイバー”ではない。



『お知らせします。

 イギリス便の中でハイジャックが発生しました。

 その影響で、遅れが発生しています』



「やばいな、それ、レオとカナが乗ってるやつじゃないのか?」

「馬鹿だねー」

「同情するよ」


 私達はほぼ同時に呟いた。



「犯人かわいそー」



 ハイジャックは死のカウントダウンに気づかない。

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