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櫻木紘の場合 ③

あの日の三日前、僕は別のクラスの女の子から放課後、呼び出された。

(ま、まさか本当に!この間あんな大口を叩いてすぐ!?)

言ってみるものだ。この世の中には言霊という言葉がある。口にすればそれは実際に形、魂を持ち実現させてしまう。母親からの豆知識程度に頭に入れておいたが、こんな思わぬところで活かすことができるとは微塵も感じていなかった。

一人放課後に廊下の前でしょうもないことを考えていると、昼休みに話しかけてきた子がきた。もう一人の子を連れて。


「あっ、ごめーん!まった?ってあれ、日野くんは?」

思わぬ出来事に動揺してしまい、おどついてしまう。


「えっ?あっ、えっと、秀?どうして?」


「いっつも一緒にいるから来ると思ったんだけど。今からでも間に合うなら呼んでみたら?男の子一人じゃ寂しいでしょ。」


「...一人って?」 

思考が追いつかない。なにを言ってるんだこの人は。僕に告白的なことをしてくれるんじゃなかったのか。


「ね、ねえ、佳奈。ちゃんと、その、伝えた?」


「えっ?伝えたよ。放課後待っててねって。」


「そ、それじゃぁ、伝わるわけないよ!」


「え!?嘘?わかんなかった?」

と、こちらを振り向き、驚いた顔をしていた。


(いや、まず何の話なんだ?)


「えーと、今日は何をしにきたのかな?」


「だから放課後どっか遊びに行こうって。」


「えっ、遊びに?誰が?」


「私と志保と櫻木とあと日野?」


「き、聞いてないんだけど...」


「ほ、ほらー!櫻木くん困っちゃってるじゃない!」


「ありゃりゃ、こりゃあダメだねぇ。」


「初耳なんだけど!?....ていうか、告白とかじゃなかったのかぁ。」

消え入るような声で愚痴をこぼすと、これから始まろうとしていた櫻木セルフ反省会を遮るように、佳奈が催促を出す。


「それより、さっさと日野呼んだ方がいいんじゃない?帰っちゃうんじゃ..」


「あ、ああ。それなら大丈夫だよ。あいつのことだから電話すれば直ぐに...」


数分後。

「悪い!待った!?」


「誰も待ってないよ。」


「やっ!日野くん!この後暇だよね?」


「もちろんですたい!むしろ予定があっても暇にしてましたよ!」


「よーしっ!その意気だ!んじゃまぁ、遊びに行きますか!」


「ガッテンです!」


「...なんなんだあの二人は。」


「さ、さぁ..」

明かにテンションの違う二人とそれを遠い目で見る二人。行き着く先も不明なまま、足を動かした。


「ところで久しぶりだね。鏑木さんと話すの。クラス変わっちゃってから会わなくなっちゃったし。


「は、はい!そうですね...」


「どうかした?」

前までとは違い、少し会話に壁を感じる。いつも静かな性格だったけど、今日はあの時より口数が少ない感じがした。


「久しぶりだからね。何喋っていいんだか...はは!」


「いえ!あの、その、そうですね...」


「今日はどうしてこのメンバーで遊ぶことになったの?僕たち、鏑木さんと僕とは関わりがあるけど、五十嵐さんとはあんまり喋った記憶がなくて。」


「あの、それは、私が佳奈に櫻木くんのこと話して、それで、佳奈が面白そうだからって。」


「あ、そうなんだ。けど、驚いたな。鏑木さんが僕のこと他の人に話してくれていたなんて。」


「あっ、その、去年のクラスメイトのこと聞かれて、それで、櫻木くんがいつも話しかけてくれていたからで..」

少し驚いた。女の子がクラスメイトの話をする時にまさか僕のことを話題にするなんて。それと嬉しかったのだ。鏑木さんにとって自分が唯のお喋り相手じゃなく、一人の友人として接してくれていたことに。


「そうなんだ。なんだか嬉しいな。」


「えっ!あっ、いえ、こちらこそいつも話しかけてくれてありがと。私、クラスじゃあんまり喋らないかったから、櫻木くんが話しかけてくれていつも楽しかったっていうかなんというか...」

それからわからぬ目的地に着くまで、お互いの近況報告が始まった。クラスの雰囲気はどうなのか。新しい友達はできたか。今度のテストはどうか。そんな他愛もない話。


「おーい!二人とも!もう着くぜ!」

少し前を歩いていた二人も話が弾んでいたのかこちらの会話には入ってこず、あちらも二人で話していた。

そして、こちらを振り向きながら前を指差し、目的地の場所を教えてくれていた。


「ボ、ボーリングか...」

それまで、会話を楽しみ、歩いていたが、目的地がわかった瞬間、頭の血の気が一気に引いていくのを櫻木は感じた。

ありがとうございます

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