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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【第四回】地の文コンテスト 〜責任と答え〜

【責任と答え】憎悪の先に……

作者: はらちー

 頬に滑りとした生暖かい感触を感じて目を開ける。目の前には恨んでも恨み切れないほど憎悪した彼女のヴィーザの顔が映る。その瞬間ほとんど反射的に太腿に着けた鞘からナイフを取り出し斬りつけようとした。


 後少しで切りつけられた所で手がビープ音とともに引っ張られた。事前に腕と近くの木に縄で結ばれていた。その変わらない用意周到さに頭が一瞬真っ白に漂白された。そして来るのは怨嗟を多分に含んだ怒り、煮詰めに煮詰めた呪い、恨みが吹き出してくるのを目を瞑り、抑える。ここで頭に血を上らせるのは愚の骨頂だと既に理解しているから。


「よぉ、元気にしてたか? 」


 湧き上がる怒りを理性で持って捻じ伏せる。口がカラカラに乾いているのを感じる。同時に身を少し捻る。


「……どの面下げて戻って来やがった」


 言いたい事はいくつもある。でも喉から捻りだした言葉はそれだけだった。


「別に? 普通の面で良いだろ。何か変える必要があるか? 」


 村の秘宝を盗み出していった彼女、ルナシアは日常のようにそう宣った。絶句、そして俺の火薬庫に盛大に点火した。


「あぁ、あるだろうが......アンタのせいで......あんな事に!! アンタさえ居なけれ

 ばッ!!! こんな事になっていなかった!!!! 」


 住居地を覆っていた結界の起点、高価な情報結晶を盗まれたせいで村は異化エネミーの餌食になったのだ。


「ん? ハッハッハッハッ......俺のせいだと? 俺が居なければ状況は変わっていただ

 と? それは面白くない冗談だなァ......!! 」


 それに何も言い返せず、俺は黙る。


「……」


 結界に頼り切りで身を守る術を、技術を少しずつ捨てたのは歴代の村の人間だ。


 俺の様子に構わずルナシアは続ける。


「本当に俺のせいかァ!? 俺だけのせいか!!! 」



 だが、ヴィーザが結界を破ったから、優しかった両親も、兄も、村のみんなも死んだのだ。


 怨嗟を、この身に宿る憎悪を、村の皆んなの呪いを込めて叫ぶ。


「そうだ、全ては貴様のせいだ!! 」


「フンッ、ガキみたいな意見の一点張りだな。もう少し頭を使ったらどうだ? 」


 昔も同じことを言われた。棒で剣術ごっこをした記憶が蘇る。


 ヴィーザにボコボコにされ、不貞腐れてたときに言われた言葉をまた聞き、茹だった頭が急激に冷えていく。


 俺には恨みしか、呪いしか残らなかった。だから、この想いを静かな殺意と沸滾る憎悪でもって塗装する。


「......あぁ、アンタに言われてたから......何度も頭を使ったさ、どうすれば良いかずっ

 と考えた。これが、この答えが!! 俺の考えた結果だ!!! 」


 コード『レーヴァテイン』……認証開始……所有者『ロキ』


 必要量の憤怒を確認。完了。システム解放します。


 システムメッセージが表示。いつも通り展開された事を確認してからヴィータを睨む。


 ヴィーザには、一瞬驚きの表情が刻まれ、その後すぐに嘲りに変わった。


「ハッ......ハハハッ!! その程度で、今の状況が変わるとでも!? たかがその程度

 で!!! アハハハ!!!! 」


 ヴィータはこの俺に勝てるのかと言いたいんだろう。


「変わるさ......変えてやるんだ、絶対に!! 」


 意思を込めて、殺すと宣言。同時に縄を斬りヴィータに接近する。


「なら変えてみるが良いさ、俺には出来なかった事を......お前がその手で、やり遂げて

 みせろ」


 ヴィータも剣を展開し、こちらに向かってくる。


「言われなくてもそのつもりだ。このくそったれ女がぁ!」


 俺たちの杖先が、剣先が叩きつけられた。

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