白雪姫は悪役令嬢
好きになった人はこの国の王子様だった。
彼は、別の女と呆気なく結婚してしまった。
かと思えば、お妃様が死んだ。そして次の妃にと迎えられたのは私だった。
長い時を経て今ようやく愛する男と結ばれて幸せになれるのだと思ったら、娘がいた。前の妃との子供だ。別の女との子供だ。私ではなく、違う女を抱いて生まれてきた子供だ。
名前は白雪姫という。
嫌いだった。可愛い顔が嫌いだった。お義母様と呼んでくる姿が嫌いだった。愛くるしい笑顔が嫌いだった。
私も子供が欲しい。私とあの人の子供が欲しい。男の子がいい。けれど、いくらたってもできなかった。
私に懐いてくる白雪姫が嫌いだった。死ねばいいのにとさえ思った。私の思いとは裏腹にあの子は綺麗に綺麗に育った。
「お義母様って私が嫌いなのね」
だって父は私が好きだものね。そう言葉が続いた。
「私じゃなくても、父の関心を奪う人はみんな嫌いなんでしょう。そうよね、お義母様は父のこと大好きだもの。それなのに気付かないなんて父は愚かだわ」
わかったように口をきかないでほしい。だって、惨めになるのは私だから。
白雪姫が何を言いたいのかわかりかねていると彼女は口を開く。
「私じゃ代わりになれないかしら」
可愛い可愛い彼女が私の手を握ってそう言った。
「父の代わりには、なれないかしら」
前王妃にそっくりの顔で、瞳は彼の色の、そんなあの子がそう言った。