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第三話~調査~

2018年も後わずかですね。限られた時間を有意義に過ごしたいものです。

 僕たちは山道を歩き自宅に向かっていた。辺りには新緑の木々が生い茂り蝉の声が鳴り響いている。


僕が先頭に立って後ろの二人を案内する。


 それにしても暑い。


 テレビやネットで地球温暖化が進んでいるというが、彼ら異世界人に頼んで解決してもらう事はできないだろうか?


 そんな事を思い正孝は後ろを振り返る。不思議な男女、ヒンターとサヨ。そして僕たちの頭上に浮かびついてくる透明なピラミッド型の物体。サヨが取り出した物だ。


「すみません。さっきから気になっていたのですが、この物体は何ですか?」


質問するとすぐにヒンターが答えた。


「あぁ、こいつはカリウスと言って使用者と異なる言語を話す生命体の脳波を読み取り解析する事で互いの会話を可能にする画期的なアイテムだ。突然、僕らが君たちの言葉を話すようになって驚いただろう?僕達も君が流暢なラギスト語を話してるように聞こえる。それはこのカリウスが自動翻訳してくれるおかげなのだよ。」


「......す、凄いですね!」


 正孝はそう言うより他が無かった。次々と驚くべき事が起きる。まるで夢を見ているようだ。


ズガシャ!!


木の根に足がつまずき転んでしまった。


「おい大丈夫かい⁈」


後ろの二人が声をかけてくる。


「あ、大丈夫です。ご心配なく。」


 正孝はそう言って立ち上がると足を見た。少し擦りむいて痛みを感じる。それは自分が決して夢や幻覚を見ている訳ではないという確かな照明であった。

 

 再び歩き出した三人は山を抜け正孝の家に着いた。

「どうぞお上がりください。あ、そうだ靴は脱ぐようお願いします。」


 「それではお言葉に甘えてお邪魔します。」


 二人の異世界人はそう言って手を合わせ少年にお辞儀をすると家に上がった。

 

 正孝は今、家族の内で自宅にいるのが自分だけなことに感謝した。父は海外に出張中、母は古くからの友人と旅行に出かけている。もし両親がいたら息子が不審な外国人を連れてきたと怪しむはずだ。


 「こちらになります。」

 二人を二階にある自分の部屋へと案内する。彼らは異界の家の作りにとても興味があるのだろう。

きょろきょろと好奇心旺盛な目で辺りを見渡している。


 お茶とお菓子を出して少し落ち着いた所で三人の質問合戦が始まった。

今、自分たちがいる世界の名前から始まり国の政治体制や国際情勢、気候や風土など彼らは色々と聞いてくる。

 正孝はタブレット端末や本などを使いながら彼らにできるだけ丁寧に説明した。正孝も彼らの故郷や機械の構造について気になる事を思いついた端から説明した。

 二人の説明を要約するとこうである。

  その1・・・惑星ヨーデンはチェル・ラギスト人類帝国によって全土が統治されていて他に国家は存在しない。

  その2・・・巡洋艦第一号の具体的な構造や性能については説明が専門的すぎるのと軍事機密もあるのか詳しい事は教えてもらえなかった。

  その3・・・異世界は無数に存在して正式に確認できるものだけで100を超える。


 彼らの話がどこまで本当なのかは不明だが今まで見たり体験したことから事実なのだろう。


外を見るとすっかり日がくれている。ふとヒンターが立ち上がり窓の外を見てこういった。


「美しい夕焼けだ。チキュウの夕焼けは私の故郷の夕焼けにも劣らぬ美しさがある。マサタカくん、今日は色々とありがとう。」


 「あ、いえいえこちらこそ貴重な体験をさせていただきありがとうございます。」


人から感謝されるととてもうれしくなる。それは相手が異界の住人であってもおなじなのだ。

 正孝がそんなことを感じているとサヨが横から口をはさんできた。


「あの~、船の修理と食料の確保がまだなのですが…。」


 こうして僕達は町に買い物に出ることになった。まず船の修理に使うアルミとニッケル(サヨ曰く本当は別の金属が欲しかったが地球上には存在しないと判明したのでこれで代用することにしたらしい。)、そして三週間分の水と食料を調達する。

 費用は全て僕が出す。ヒンターは旅行鞄からタイプライターのような機械を取り出して日本円をコピー生産しようと言い出したがきっぱりと断った。彼らに犯罪をさせるわけにはいかない。


 家の物置にしまっていたリヤカーを引き出して近所の大型スーパーに三人は向かった。 


 夏の夜は蒸し暑いが昼間ほどではない。そのせいか外に出ている人が多い気がする。


 リヤカーを引いて大通りを歩く少年と奇妙な恰好の外国人。


 それが行きかう人々が三人に抱く印象で明らかに不審だが最近はコスプレをして歩く外国人も多いから余程おかしなことをしない限り大丈夫だろうと正孝は考える。


 ちなみに自動翻訳機カリウスもサヨに頼んで完全透明化してもらった。詳しい原理は知らないが人間が不可視とする光を反射させているそうだ。 


 「この国はとても賑やかで良いね~。夜が美しい。首都ならまだしも地方でこれだけ発展しているという事は日本がとても豊かな国だという事に他ならない。」


ヒンターがそういった。確かにその通りである。それに続いてサヨも話し出す。

 

「この世界は文明水準がかなり高い。スマートフォンだっけ?あれほど多機能な電子機器の小型化を実現し、一部の上流階級や特権層だけでなくほぼ全ての国民が所持していることが驚きだ。」


 「ハハハ、そうですね。スマホは現代人の生活に無くてはならない物になってますからね。」


 話しているうちに目的地であるスーパーについた。店内は冷房が効いてとても涼しい。

棚にいろとりどりの商品が並び見る者を飽きさせない。

 

 さっそく買い物に入る。最初に大工道具売り場に行ってアルミとニッケルの板をかごに入れ次に食品売り場でインスタント食品、缶詰、新鮮な肉と野菜。


 そして最後にペットボトル入りの天然水を何本も購入した。


店員の人が少し驚いた顔をしていた。

 おそらく防災の観点から沢山備蓄しようと買い込む人だと思われただろう。


 店を出ると駐輪していたリヤカーに重いレジ袋を積んで帰途についた。

 

 「ありがとう!買い物までしてくれて大助かりだよ。いつかこのお礼は必ずする。」


 ヒンターに再び礼を言われて嬉しくなる正孝であった。そして三人は家につく。

自宅に帰ると早速「船」の修理が始まった。

 サヨが旅行鞄から30センチ位に縮んだそれと工具と思しき道具を取り出して作業を始める。


 凝ったデザインをしたピンセットのような工具で船の黒い外装を外し、別の細長い針のような工具で内部の機械を操作しているようだった。


 「やはりエンジンと冷却パイプに亀裂がある。応急処置で何とかなると思うけど本部に帰ったら一度、全部ばらして修理する必要があるわね。」


 サヨが真剣な表情でそういった。ヒンターはそれを真剣な表情で聞いていた。


 「どのくらいで修理できそうだ?」


 「私の集中力にもよると思うけど遅くても明日の朝には完了していると思います。」


彼女はヒンターの問いにそう答えると術式を始めた。


 デザインの凝ったハサミのような物で買ってきたアルミ板の一部を切り取り小瓶に入った緑色の液体に浸すと数分でアルミが泡を立て溶解しドロドロした銀色の泥のような物に変化する。


 それを小さな計器が付いた金属製で注射器状の工具ですくうと船に入った亀裂に差し込んでゆっくりと埋めていく。 

 次に同じような方法で変化させたニッケルで埋めた部分をコーティングした。

 

 その他にも破損したとみられる小さな部品をスペアパーツと交換する作業が行われ全ての修理が終わる頃には夜の9時を過ぎていた。

 

「ふ~っ、修理完了だ。一時的な処置だが本部に戻るまでの航海は大丈夫だろう。」

 

「お疲れ様です。これで故郷に帰る事ができますね!」


 正孝は長時間の作業を終え一息ついた彼女にそう声をかけた。

 

「後は明日の始動運転を待つのみだ。大丈夫であれば物資を積み込み出発する。」

 

艦長ヒンターの発言にサヨと正孝はうなずいた。


 「あの夜遅くですが、せっかく修理が終わったので打ち上げと行きませんか?」

 

 少年の誘いに二人は笑顔で同意した。

 

  楽しい宴が始まった。買った食料の試食も兼ねてインスタントラーメンと缶詰に少し手を加えた料理などが正孝によってふるまわれる。



「これは美味しいぞ!簡単に作れてカロリーもしっかり取れる。祖国のインスタント食品はどこか味気ないものばかりだったがこれは店の物を食べてるような美味しさを味わえる。」


「このコーヒーという飲み物は独特の味わいがあって良いな。」

 

 ヒンターは日本のインスタントラーメンを気に入りサヨはコーヒーの味に魅せられたようだ。

 

 「お二人の口にあって良かったです。良かったらお土産にどうぞ。」

 

 この後、三人は正孝の部屋でカードゲームをしたりテレビを見たりして午前零時を迎える頃、明日の始動運転成功を祈って眠りについた。

 

 そして夜が明けた午前6時30分、出発の朝を迎えた。


 


 









 

  

次回は出発の話です。少し戦闘シーンもあります。

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