第二話~接触~
だいぶ遅くなり申し訳ございません。次回はもっと予定を考慮して書くようにします。
「あ、うわああ、あなた誰ですか?!」
「...jinemonjola;sa5torani,gerne,pao;kermo,suwa...」
僕は近づいてくる男に、そう言った。それに答えるように男も返してきたようだが何を言っているのか分からない。全てを見通しそうな青く澄んだ瞳がこちらを見ている。
茶色いスーツに紺色のネクタイ、ベージュの中折れ帽に身を包んだ姿は昔の紳士を思わせる。いったいこの人は何なんだ。
_「;serumaki,2non:」
「‼」
もう一人いた。さっき男が出てきた所から今度は女が現れた。年齢は18歳くらいだろうか。男より少し年下な感じだ。白い着物に薄い桃色の半透明な衣を羽織っている。男が一昔前の西洋紳士とするなら女は古代中国の巫女である。丸眼鏡から覗く鋭い目が僕を捉えた。
男「derma:pateno;2roki9s;tyerone:...」
女「fa4wojies,napapa2boji;zakan6:...」
_と、こんな感じで僕の方を向いて話し合いを始める二人。何を話しているのか気になる。
すると女が懐から何か取り出した。透明なピラミッド型の物体で光がキラキラと反射して奇麗だ。
_ヒューン ビィーン ビィーン
「え⁈」
その物体が不思議な音を立て宙に浮いたのである。そして、ゆっくりと回り始めた。いったいどんな仕組みで浮いてるのだろう。まさか女が超能力で浮かばせてるというのか。相変わらず彼らは解読不可能な言葉を喋り続けている。しかし、それを茫然と聞く僕は異変に気付いた。
男「...kuro3gya;semuruto,boKuラが去れば良いだけの事じゃないか。」
女「...bisuruke,derosaki;siBaラくは動けないと言った筈でしょう。」
二人の話している言語が日本語になったのである。どういうことだ。さっきまで未知の言葉で話していたのに海外ドラマの二か国語放送のように切り替わったのである。
「あ、あのすみません⁈」
俺は二人に話しかけてみた。すると彼らは僕の呼びかけに気付き、返してきたのである。先に流暢な日本語で返答したのは男の方だ。
「おや!やっと翻訳プログラムが完成したようだね。壊れてないか心配だったんだ。」
「あのすみません。あなた方は何者なのです?それに、その後ろの大きな機械とか...。」
男はニコニコ笑いながら話す。実に陽気な青年という感じだ。
「おっと、自己紹介がまだだったね。僕の名前はヒンター。ヒンター・カイフェックだ。この「船」の艦長をしている。ほら君も答えなさい。」
帽子を取り丁寧に自己紹介する男。女の方も男に促され話し出す。
「私はサヨ・リヒトホーフェン。この「船」の操縦士及び技術者をしている。」
船?艦長?という事はあの物体はやはりUFOで、この人たちは宇宙人なのか?僕は思考をめぐらすが考えても答えは出ない。この人たちに尋ねる他ないのだ。
「ぼ、僕は正孝。斉藤 正孝です!ヒンターさんでしたっけ?貴方は先程、この物体を「船」と呼びましたが、これは宇宙船なのですか?」
「ほう、君はマサタカという名前なのか。よく覚えておくよ。」
そう言うと男は「船」と呼ぶ存在について解説し始めた。
「こいつは宇宙船じゃない。まあ似たような物だけどね。正式名称は異次元渡航用試作巡洋艦第一号。通称巡洋艦第一号。四次元空間を移動する事で別世界への渡航を可能にする軍艦だ。」
なんということか。男曰く怪物体の正体は異界を旅する軍艦だと言うのだ。異世界から四次元空間を通り、この世界に来る方法。たしかに、この物体は空の空間が歪んだ所から現れた。全て説明がつく。という事は謎の男女は異世界人という事になるが彼らは具体的に何処から来たのだろう。僕は再び男に尋ねてみる事にした。
「つまり、この物体は異世界から来た船で、あなた方もこの世界の住人ではないという事になりますが、一体どんな世界のどういう所から来られたのですか?」
男は頷いて何か自慢げに答えを返してきた。
「左様、僕達はヨーデンと呼ばれる惑星にあるチェル・ラギスト人類帝国から来た。ちなみに、この船は帝国海軍省特殊技術研究本部第三実験艦隊に所属しているよ。」
チェル・ラギスト…聞いた事のない国名だ。やはり異世界から来たというのは間違いないのだろう。そして別の惑星から時空を超えてやって来たという事は彼らの祖国がとんでもない科学技術を有している証拠に違いない。しかし乗組員の服装はどう見ても地球の歴史で言う半世紀か、それ以上前の物という感じであり、SF映画の未来人が着ているような服装ではないのが不思議でしょうがない。発展の仕方が違うのか昔のファッションを好き好んで着てるだけなのか気になるが彼らの目的も知りたい所だ。
「それではあなた方がこの地球…僕の住んでる星に来た目的は何でしょう?まさか侵略とかじゃないですよね⁈」
すると今度は女の方が答えた。彼女の声はどこか大人びた感じがして美しい。
「私たちは元々、こことは違う世界に行く予定だったが船が故障して偶然この世界に漂着してしまったのだよ。だから特に理由はない。あえて目的を言うなら壊れた船の修理と出来れば食料の確保がしたい所だね。君たちと争う気は全くないよ。船の規則でも正当防衛以外の理由で異世界の生物を殺傷することは禁じられている。だから安心してほしい。」
ひとまず僕は胸をなでおろす。もし彼らが地球の覇権でも唱えだしたら最初に殺されるのは間違いなくこの僕だ。そんな事を考えていると今度は男の方が僕に質問してきた。
「という訳で、すまないがマサタカくん、君の家にお邪魔させてはくれないか?ここはとても暑いし変な虫も寄ってくるのでね。」
思えば今は八月の初め。連日、異常な猛暑日が続いている。見知らぬ人を自分の家に招き入れるのは抵抗あるが史上初めて異世界人と接触しただろう僕には地球人代表としての責任があると思うと妙に納得できた。
「良いですよ。僕はもっとお二人にお聞きしたいことがありますので。それにサヨさんの言っていた食料の確保も出来ると思います。」
「それはありがたい‼」
口をそろえて言う彼らの顔に喜びが現れるのが分かった。そして僕は話を続ける。
「ただし、問題があります。それはこの船です。これだけ巨大な物体を放置すると他の人に見つかってしまう可能性があります。もし見つかると警察に通報され、押収されるはずです。そうなると最悪の場合、船が政府の手によって勝手に分解されてしまうかもしれません。勿論あなた方も拘束されて色々と面倒な事になると思います。」
船は全長約40メートル、高さも8メートル程あり幾ら山の中でも人目につかず隠すのは難しいだろう。
「その心配には及ばない。この艦は持ち運ぶことができるのだ。」
男の発言に耳を疑った。
持ち運ぶとはどういうことだ。まさかこの物体を担いで山を下りるとでもいうのか。
僕が不思議に思っていると男はポケットから小型で薄いガラス板のような物を取り出し操作を始めた。
_△×○dugiireeee#etrr%$doge&vaa▽‼gfjfhh・・・_
「あ⁈」
正孝は思わず声を上げた。「船」が異音を発し、急激な速度で風船が萎むかの様に収縮を始めたのだ。
全長40メートル、高さ8メートルはあった物体が一分と経たぬ内に軽自動車くらいの大きさに変わり、更に縮んで30センチくらいのプラモデルの様になってしまった。 男はそれをいかにも大事そうに掴むと茶色い四角形の旅行カバンに収納し、茫然と立ち尽くす少年に話しかけた。
「準備はこれで完了だ。さあ早く出発しよう。」
次の投稿は一週間後を予定しています。これからもよろしくお願いします。