祝20周年 「テレビオワコン化」説
初出:令和4年10月1日
電通が2022年2月に「2021年 日本の広告費」を発表しました。
それによると「インターネット広告費」は2兆7,052億円(前年比121.4%)に達し、テレビ、新聞、ラジオ、雑誌を合わせた「マスコミ四媒体広告費」の総計2兆4,538億円を初めて上回りました。
広告費から分析するとマスメディアの主流はテレビではなく、インターネットの時代になったのでしょうか。
しかしながら、これまでマスメディアの”王様”は絶対的にテレビ、それも地上波テレビでした。
ここでクイスです。
Q:マスメディアのメインストリームはインターネットでしょうか、テレビでしょうか?
A:インターネット
B:テレビ
1.テレビがオワコンでない理由
ところで同時刻に同一のコンテンツを視聴したり、読んだりするメディアという点では、まだネットはテレビを越えていないのではないでしょうか。
テレビでは視聴率1%の番組でも100万人が同一のコンテンツを視聴している計算になります。地上波では1%で低視聴率とされ、番組が打ち切られる可能性があります。
一方、視聴率10%を越えたら1000万人が視聴していることになります。2021年のNHK紅白歌合戦は過去最低の34.3%。過去最低という数字がテレビのオワコン化を想起させますが、それでも3430万人が視聴しました。
ネットで3430万人がアクセスするというコンテンツはどれくらいあるでしょうか。
同時刻という枠をはずすとどうでしょう。こうなるとテレビの優位性は少し減退するものの、それでもまだまだテレビはネットより上でしょう。
ネットでは今「小説家になろう」をアクセスしている人を100人捕まえても、100人とも違う小説を読んでいる可能性があります。今、ツイッターをやっている人を捕まえても然り。PCの画面が100人とも違うかもしれません。
こうしたことを考えるとまだまだテレビはオワコンでないように思えるのです。
2. 芸人は地上波に出演できたら一流
最近、ユーチューブで、テレビオワコン説を唱えるお笑い芸人の動画を観ました。
地上波では見かけない売れないお笑い芸人が、最近のテレビがいかにつまらないかを説明していましたが、「バライティー番組にあいつらを使うぐらいなら、おれを使えよ。そうしたらテレビが面白くなるだろう」と絶叫すると周囲が大爆笑。
テレビオワコン説を唱えなえながらも、彼自身も地上波に出たがっているようです。芸人にとって地上波に出演できたら一流、ネットしか出してもらえない芸人は二流以下という序列があるのかもしれません。こういう序列がある以上、テレビはお笑い芸人にとって決してオワコンではありません。
3. 20年前の「テレビオワコン」番組
ネットではテレビオワコン論は昔からたくさん見つかります。一方、テレビ番組でテレビオワコン化を論じる番組もあります。ただしテレビの場合、最終的にテレビはなくならないという結論にもっていく場合が多いようです。
今から20年前に「テレビオワコン論」をテーマにしたテレビ番組を見た記憶があります。
当時は2ちゃんねる(現5ちゃんねる)が全盛で、まだSNSがはなかった、もしくはまだ流行ってなかった時代です。
ツイッターなどはなく、視聴者がテレビ局に電話をかけ、その意見を番組内で紹介するという趣向でした。
「テレビは2ちゃんねるよりつまらない」といったテレビ否定派の意見を紹介するたびに、若手の男性局アナが過剰なリアクションで嘆き悲しむといった演出が笑えました。
最後に司会者が「ネットはテレビにない、すごくいいコンテンツも生まれるかもしれないが、誹謗中傷などひどい内容もある。一方、テレビは規制があるので一定のクオリティーが保たれる点がネットに優っている」という結論で番組は終了しました。
今から思えばあれが最初のテレビオワコン論だったと思います。あれから20年。テレビが今も存続していることを考えるとテレビのしぶとさを実感します。
テレビオワコン論は小説オワコン論に似ています。
70年代から文芸誌や新聞の文芸欄で小説オワコン説は盛んでしたが小説はいまだ存在していますし、今後とも存在し続けるでしょう。
しかしながら、最近、東京地検が電通にガサ入れをしたというニュースが気になります。日本のマスコミに敢然と君臨し続けた電通に何が起きたのか。権力構造の変革が起きているのかもしれません。
そう考えると、今年と来年はテレビオワコン説のほぼほぼ20周年であると同時に、真の意味でのテレビオワコン化のほぼほぼ元年にもなりえるかもしれません。
(つづく)




