東芝 vs ハゲタカファンド 金融資本主義からの脱却を
初出:令和3年6月14日
今回は経済問題です。
東芝は10日、株主提案が否決された昨年7月の定時株主総会の運営に関して、一部の株主たちの依頼で弁護士が調査した報告書を公表しました。
報告書は「(株主総会が)公正に運営されたものとは言えない」と指摘。
昨年の総会では、エフィッシモなどが自社の推薦する社外取締役の選任を求める提案を行いましたが、否決されました。この件に関し報告書では、東芝が経産省側と連携して、エフィッシモなどの一部株主に不当な影響を与えたとしています。
ここでクイズです。
Q:今回の弁護士の調査報告書ですが、悪いのは誰でしょう。
A:東芝の経営陣が悪い
B:経済産業省が悪い
C:エフィッシモなど「物言う株主」が悪い
このニュースに関するマスコミの論調は概して東芝を批判しています。つまりAが正解に見えます。しかしながら、この報告書を公表したのは東芝です。なぜ自社の不利になるようなニュースをあえて東芝が公表したのでしょうか。
昨今、IT担当相である平井大臣のNECに対する脅迫発言が問題になっています。
平井大臣に限らず、行政と大企業はこういう上下関係があり、日頃、こんなふうに”命令”されているのかもしれません。
だとしたらエフィッシモの社外取締役を東芝に選任しなかったのは、経産省が外為法を理由に東芝に”命令”したからかもしれません。それに対する東芝側の反撃が今回の発表だとしたら、悪いのは経産省、つまりBが正解ということになります。
ところが、私は今回一番警戒すべきなのが、「物言う株主」、つまりエフィッシモだと思うのです。ではCが正解かというと、私の「富士山回答」は少しちがいます。
エフィッシモは旧村上ファンドの幹部がシンガポールに立ち上げた投資ファンドとのこと。そもそも「物言う株主」という造語が、マスコミが村上ファンドまたはその社長、村上世彰氏につけたニックネームのようなものでした。
1.東芝の凋落と米国の政治的圧力
東芝がウエスティングハウス・エレクトリックを買収したのが、2006年。私はこのニュースを最初、日経新聞で読んだとき喜びました。ウエスティングハウスと言えば、ゼネラル・エレクトリックと並ぶ米国の大手電機メーカーです。日本の日立や東芝のようなもの。それを買収したとは、日本企業の快挙だと思ってました。
ところがこれが結果的に東芝の凋落の始まりでした。買収したのは原発事業だったのです。
その後、リーマンショックで業績が悪化し、東芝は半導体事業、情報家電事業、携帯電話事業などを次々と売却しました。そもそもノートPCを発明し、同製品では長らく世界市場シェア1位だったのが東芝です。その東芝がノートPC事業を売却してしまうとはさびしいかぎりです。
一方、不採算の原発事業だけはなぜか大事に抱えています。
バブル時代、日本の経済力、そしてエレクトロニクスの技術力は米国の脅威でした。特に半導体産業は軍事力に直結するから米国としては世界の覇権国家を維持するべく、日本のエレクトロニクス産業を政治的圧力で脆弱化させる必要がありました。そしてその結果が現在の日本のエレクトロニクス産業なのです。
こういう見方をすると、外為法で外資支配から日本企業を守ろうとした経産省は正しいようにも思えます。しかし私はその先にある「富士山回答」を提言します。
2.地域ごとに総合電機メーカーを
そもそも株式市場に上場するから面倒なことが起きるのです。上場しておいて株主に「物言うな」はないでしょう。株主は「物言う」ために株を買うのです。
金融資本主義と真逆の発想ですが企業はできるだけ上場しないことを選択してはどうでしょうか。
未上場なら資本が集まらないから製品を製造できなくなる、といった声が聞こえてきそうです。しかしながら、パーソナル・ファブリケーションという語をググってください。ここ20~30年で起きた生産技術のイノベーションをもってすれば、大企業でしか生産できなかった製品が中小零細に、企業でしか生産できなかったものが個人事業者で生産できるようになりました。
少なくとも半導体を除く、電化製品のかなりのものが小規模企業で生産できるはずです(長くなるので省力しますが、工夫すれば半導体企業もそれなりに小さくできると思います)。
東芝は事業部ごとに子会社に分化しているようですが、そうではなく都道府県、または市町村ごとに全社を分割し、町の電気屋さん規模の総合電機メーカーに再編してはいかがでしょうか。もちろん、すべて未上場ローカル企業です。
3.巨大組織をダウンサイジング
前回、このエッセーで「二つの政府」に警戒せよ、という話をしました。私たち人民は政治的に自国政府と自国を支配する国際的な政治組織の両方を警戒すべきです。
一方、経済的に私たちは「巨大組織」を警戒する必要があります。
巨大組織とはヒト・モノ・カネの三点から大きい組織を指します。組織は民間企業、行政、第三セクター、非営利法人などに分けられます。民間企業では大企業が中小企業より巨大組織です。また企業の方が個人商店より巨大組織です。
巨大組織を作ると外資から国民の富を奪われやすくなります。また組織が腐敗すると巨大組織ほど世の中に甚大な悪影響をおよぼします。組織が小さければ、奪わる額も小さくなりますし、腐敗しても社会に対する悪影響は小さくなります。
巨大組織はできるだけ作らず、不要なものはなくし、ダウンサイジングする必要があります。ダウンサイジングとはヒト・モノ・カネの観点から、より小さい組織に再編することを意味します。
資本は集中から分散へ。これが私の今回の「富士山回答」です。
(つづく)




