マスコミはもういらない――トヨタイムズとメディア新時代
初出:令和3年1月2日:
半年くらい前のニュースになります。
令和2年6月11日、定時株主総会でトヨタ自動車の社長、豊田章男氏は「マスコミはもういらない」と発言しました。
マスコミは取材する前からどんな記事を書くか決めている。トヨタを批判する記事を書くと決めたら、トヨタのよい点をどんなに説明しても悪く書かれる。
これが豊田氏が「マスコミはもういらない」とする根拠のようです。
トヨタは2020年4~6月期連結決算で1588億円の黒字を計上。コロナ禍で他の自動車メーカーが軒並み赤字なのに対し、これは一人勝ちといっていい快挙でしょう。
ところがマスコミは豊田氏が思っているより否定的な記事ばかり書いてくる。一方、トヨタの販促用サイト、トヨタイムズもちょっとしたメディアの役割を果たしているが、こうした偏向報道をしない分、トヨタイズムの方が既存マスコミよりメディアとしてはまだましだ。豊田氏はそう発言しています。
さて、ここで問題です。
Q:豊田氏の「マスコミはもういらない」発言をどう思いますか?
A:正しい
B:間違っている
みなさんの「富士山回答」はいかがでしょうか。
豊田氏の主張は、この大不況下で競合他社が軒並み赤字決算である一方、黒字を確保した自分の経営手腕をマスコミはもっと評価すべきだということなのだと思います。
日産自動車のカルロス・ゴーン氏は昨今では不法国外逃亡した”国賊”のようにされていますが、かつてマスコミは同氏をビジネス界のスーパースター扱いしていました。社長就任後、瞬く間に日産をV字回復させたからです。”ミスターV字回復”が、カルロス・ゴーン氏の代名詞だった時代がありました。
同様に、今回の豊田氏の快挙はさながら”ミスター一人勝ち”といったところでしょうか。
もともと「トヨタVS日産」という宿命のライバル関係があり、かつての”ミスターV字回復”のときのように自分を”ミスター一人勝ち”として持ち上げないのは不公平だ、という思いも豊田氏にあったのかもしれません。
しかしながら、私が関心を持ったのはむしろトヨタイムズのマスコミ化発言です。
1.トヨタイムズのマスコミ化を
トヨタイムズは現在、オウンドメディア、つまりトヨタ自動車が所有する自社製品販促用サイトですが、ここに一般のニュースも報道してはいかがでしょう。編集方針は豊田章男社長が提唱する、取材後に記事の方向性を決める公正な情報メディア。扱うのは政治や経済、社会問題全般です。芸能スポーツニュースも場合によっては扱ってもいいかもしれません。
ただし自社製品の車に関しては、公正なニュースというより、販促用プロモーションにしても可。
スポンサーがトヨタ自動車であり、バイアスがかかったニュースであることを誰もが理解した上で視聴するので、問題はないと思います。
できれば他の業種の上場企業も軒並みオウンドメディアを立ち上げてはいかがでしょう。自社製品やサービスの販促に利用する一方、それをマスコミ化するのです。
上場企業でホームページを持っていない企業はまずないでしょうが、これからは上場企業はどこもオウンメディアを持ち、販促以外に一般ニュースを配信することを提案します。
これらのオウンドメディアは一般に記者クラブには所属せず、自由な立場から報道できることが望ましいと思います。
行政のプロパガンダに支配されにくい、自由に発言するメディアが多数誕生することが、健全なマスコミのあり方だと私は信じます。
2.ユーザー側の意識改革が重要
さて、ここで重要なのは、マスコミの読者、または視聴者の意識改革です。
これからはメディアの報道を”神様のお告げ”であるかのように、すべて真実だと信じて記事をよむのでなく、このメディアはどのようなバイアスがかかっているか考えながら真実を推理する必要が出てきます。
たとえばトヨタイムズでは、日産自動車のリコールのニュースを必要以上に大きく取り上げる一方、トヨタ自動車のリコールのニュースは無視、または小さい記事にするかもしれません。
それを偏向報道だから悪いとするのではなく、偏向報道の方向性を勘案した上で記事を読んでいく知性が読者に求められるのです。
かつて朝日新聞と読売新聞を図書館で読み比べたことがあります。
読売新聞の拡張員が不祥事を起こすと朝日新聞ではかなり大きい記事が出る一方、読売新聞ではスルーします。同様に朝日新聞の不祥事ニュースは読売新聞では大々的に取り上げる一方、朝日新聞では目立たないほど小さな記事。二紙を読み比べ、こうした興味深い”ライバル抗争”を発見したことがあります。
公正に報道しないことが悪いのでなく、読者側の脳内で偏向報道の調整を行い、正しく記事を読んでいくことが肝要だと思いました。
いずれにせよ、マスコミを妄信する時代は終わりました。
マスコミはできるだけ小規模のメディアが多数ある方が望ましく、また読者や視聴者は記事をそのまま読むのでなく、メディアの様々なバイアスを推測しながら、脳内変換して真実を探っていくのです。
これこそがこれからの正しいマスコミとのつき合い方だと思います。
(つづく)




