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「人生に、文学を。」をめぐる文学の現在

初出:令和2年2月11日:


 2016年7月の出来事です。日本文学振興会が「人生に、文学を。」プロジェクトを企画しましたが、その広告コピーにアニメを軽視したと誤解される表現があり、ネットで炎上しました。これに対し、同振興会が謝罪しました。

 問題になったのは次の文章です。


 文学を知らなければ、どうやって人生を想像するのだ(アニメか?)


 さて、問題です。

Q:日本文学振興会のアニメ軽視発言をどう思いますか?

A:悪いと思う。

B:悪くないと思う。


 私の「富士山回答」はこうです。謝罪はしなくてもいいし、むしろアニメ業界の何かのイベントのコピーに「今どき、小説は読まなくてもアニメは見るだろう」といった、文学をディスるコピーを書いてもらって、そこで相殺してもらう方がいいと思います。

 ところで、この「人生に、文学を。」プロジェクトは人気作家の講演会を大学で主催し、文学の魅力を紹介するという趣向のようです。それにしろ、業界側がこうまでしなくては、今どき現代小説は誰も読んでくれない時代になってしまったのか、という感慨を覚えます。



1.芥川賞、直木賞は茶番?


 この日本文学振興会は芥川賞、直木賞を主催していますが、最近、作家の加治将一氏がユーチューブで、この二つの文学賞賞を「茶番だ」とバッサリ切り捨てています。

 加治氏によれば、芥川賞、直木賞は、選考委員の作家たちでなく、出版業界の談合で受賞作が決まるとのこと。今年はどの出版社の本を受賞させるか、持ち回りで決まるのです。

 芥川賞、直木賞の受賞作は20万部から30万部ほど売れる。次回作は10万部程度売れる。しかしその後は売れなくなり、結局、受賞後、三作から四作ぐらい出版して、消えてしまう作家が多い。作家だけで生活できず、パートやバイトで暮らしている人もいるとのこと。

 芥川賞、直木賞は談合で決まったやらせなので、実力のない作家が受賞してしまい、結果、こういうことが起こる。加治氏はそう主張しています。

 そこへ行くと長い間作家活動をしている加治氏は、本を出せば必ず数万冊は売れ、普通の人より裕福な生活をしているとのこと。

 加治氏の本音は、作家として実力のある自分こそ、芥川賞、直木賞を受賞すべきだということなのかもしれません。


 芥川賞に関する”ぼやき”は昔からありました。90年代ぐらいでしょうか。作家たちが集まり、芥川賞や文学のあり方について議論するシンポジウムが企画されました

 しかしながら、とどのつまり、作家は自分の作品が売れなかったり、評価されないからぼやくのです。

 また編集者や出版社は自分が担当した作品が売れなかったり、評価されないからぼやき、読者や文芸評論家は自分が読んだ作品がつまらなかったからぼやくのです。

 文学全体を批判しているようで、実は自分に関係した個人的作品に関してぼやいているのではないでしょうか。

 某編集者によれば、作家というものは誰もが自分の作品が一番面白いと思っているものだとのことです。



2.受賞作家の”顔出し”はNG


 さて、加治氏の批判を批判した言い方になりましたが、出版不況の一因にもこうした文学賞の茶番があるのかもしれません。

 ここで提案ですが、お笑い芸人などのタレント以外の普通の人が芥川賞や直木賞を受賞する場合、原則、作家の”顔出し”なし、ペンネーム(本名でない)による執筆にするという業界ルールを作ってはどうでしょう。ただし、作家本人が望んだ場合のみ、”顔出し”と本名による執筆を容認してもいいでしょう。

 受賞者の中にはこれを機にテレビタレントに転身する人もいます。こういう人は積極的に”顔出し”すべきかもしれません。

 しかし、現在、会社員やバイトで生計を立てている人の場合、職場に作家活動をしていることがバレると人間関係的にその職場にいづらくなることが考えられます。

 今後、長期間、作家として食っていけることが保証されているならいざ知らず、加治氏によれば、売れない受賞作家の場合、作家生命は短いとのこと。だとすれば、作家活動で得た印税や原稿料は臨時ボーナス程度で、これまで通り会社員やバイトで生計を立てていく必要があります。

 この場合、作家の”顔出し”と本名での執筆は、勤め先を変えないかぎり致命的となります。


 芥川賞や直木賞の受賞作家の顔や素性が公表されないとなると本が売れないのでは。出版業界関係者の中にはそう心配する人もいるかもしれません。

 しかしながら、かわいそうな売れない作家たちの人生を大事にするという姿勢も、文学業界を衰退させないために重要だと考えます。

 それこそが「人生に、文学を。」なのです。



3.選考委員は出版社の役員に


 もう一つの提案ですが、ベテラン作家を芥川賞や直木賞の選考委員にするのはやめ、出版社の社長や役員など、業界の実力者が選考委員になるのはどうでしょうか。

 加治氏の唱える”談合”を目に見える形にするのです。

 読者としてもベテラン作家が選んだ作品を読みたいわけではありません。業界のトップが一押しで薦める作品の方が面白そうです。

 日本文学振興会としてもベテラン作家の選考委員たちに支払うギャラが浮きます。


                     (つづく)


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