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セブンイレブン本部 vs FCオーナー 確執の裏を読む

 東大阪市にあるゼブンイレブン南上大阪店が、2月1日より従来の24時間営業をやめ、午前6時から翌日午前1時までの19時間営業に切り替えました。

 本部からの命令でなく、フラチャイズ店オーナー独自の判断で営業時間を改定しました。オーナーは数年前に奥様を亡くされ、アルバイト店員を募集してもなかなか集まらず、過労死しないために今回の営業時間改定に踏み切ったとのこと。

 これに対し、セブンレブン本部は勝手に営業時間を変えるのは契約違反として1700万円の賠償金をオーナーに請求した、とオーナー側の弁(本部側はそのような事実はないと否定)。また本部は、アルバイト店員が集まらないのはオーナーに責があるとしました。

 さて、問題です。


Q:オーナーが本部の許可を得ず、独自判断でコンビニ店の営業時間を改定したことをどう思いますか?


A:オーナーが悪い

B:本部が悪い


 みなさんの”富士山回答”はいかがでしょう。

 本部とオーナーとの間に契約書が交わされているため、法的には本部に分がありそうですが、現行のコンビニのフランチャイズ制度は本部によるオーナー店長奴隷制度だ、といった本部側を非難する書き込みがネットでは目立ちます。本部とオーナーでは力関係は圧倒的に本部の方が強いからでしょう。


 フランチャイズ店が儲かると本部がその近所に直営店を出店し、フランチャイズ店の利益を直営店が横取りする......こうした書き込みを見つけました。

 フランチャンズ店を募集するなら直営店はやらない、直営店をやるなら最初からフランチャンズ店は募集しない。こういう契約にしないと、私財をはたき、借金をして、やっとこオーナー店長になった人からすれば厳しいものがあります。


 しかしながら、そもそもコンビニエンスストアという業態は、昔は存在しませんでした。

 コンビニの元祖、セブンイレブンが日本に第1号店を開店したのが1974年。それ以前の日本人はコンビニなしで生活していました。

 ところで今はどうでしょう。特に都市生活者はコンビニがないと不便を通り越して、「生きていけない」と感じる人も多いのではないでしょうか。



1.独身者、共働きが少なかった70年代


 70年代以前の日本人はコンビニがなくても生きていけました。

 それはおそらく、独身世帯や共働き世帯が今より少なかったからではないでしょうか。

 親元を離れ大学を出て就職すると、男性は20代のうちに、女性は20代前半までに多くの人が結婚しました。結婚しない人、結婚できない人が今より少なく、結婚相談所に高額の金を払わずとも、親戚の世話好きのおばさんがお見合いをほぼ無償でセットアップしてくれました。

 また既婚女性の多くは専業主婦で、平日午前9時から午後5時くらいの間に近所の八百屋、魚屋、肉屋、金物屋、電気屋を回って日用品の買い物を済ませました。

 当時、共働き夫婦は平均的世帯より収入が低いかわいそうな人たちで、人口的には少数派という感がありました。

 コンビニがないと生活が不自由なのが独身世帯や共働き世帯です。お店が開いている時間帯が自分の勤務時間で、自分が暇な時間にはお店も開いてないからです。ところが家族に専業主婦がいれば、定時に買い物ができ、コンビニがなくともそれほど不自由しません。

 

 コンビニという業態の普及は独身世帯や共働き世帯の増加とリンクして世の中に普及していきました。



2.個人商店はシャッター街に


 70年代に日用品の流通の主役だった個人商店――八百屋、魚屋、肉屋、金物屋、電気屋など――の多くが今日ではシャッター街となり、スーパーマーケット、コンビニ、ショッピングセンター、ネット通販にとってかわりました。デパートは昔からありました。

 昔、個人商店の酒屋さんだったところが、コンビニのフランチャイズ店になっているケースが多いようです。酒屋さんは店舗面積の広いところが多かったからでしょうか。


 70年代の多くの個人商店主が、生き残るためにコンビニのフランチャイズ店を選択せざるを得なかったのではないかと推測します。


 本部からフランチャイズ店加盟の勧誘が来る。加入金3000万円。断れば近所に別のオーナーがフランチャイズ店をオープンするかもしれないし、そうなると商売上がったりになる。

 大手コンビニ店のブランド力。洗練された店舗の外装と内装。豊富な品揃え。どう考えても個人商店が太刀打ちできるはずがない......。


 このように70年代の個人商店スタイルは淘汰されていったのではないでしょうか。

 高度経済成長期、弱小企業を統廃合したり、大企業に吸収させたりして、行政主導で市場を大企業の寡占状態にしました。GNP(当時は国力を示すバロメーターとしてGDPよりもよく使われていました)を向上させるため、こうした大企業優先主義は社会全体にとっていいことだと誰もが確信していました。

 消費者に安くてよい財やサービスを提供するには大企業優先主義が功を奏したからです。

 最近の「選択と集中」という経済官僚たちのスローガンは、この大企業優先主義が現在も基本的には続いていることを意味しています。

 個人商店から大手コンビニへFC店への変遷は、こうした大企業優先主義経済の一形態と考えることもできるでしょう。


 ところがここへ来て従来型の金融資本主義が行き詰まりを見せています。

 資本を大企業や政府など巨大組織に集中し、巨大プロジェクトに投資しても、GDPは成長しません。そもそも国民が富をすっかり吸い取られ、払える金がないのです。極小住宅に住む国民は物を買っても置く場所がないから買いません。また長時間の労働と通勤時間で拘束され、物を買ったり使ったりする時間がないのです。

 資本を集中から分散へ方向転換することが重要です。

 

3.未来のコンビニを提言


 大企業である本部のヒト・モノ・カネをもう少し小さくし、その分、オーナーの店の店舗面積と資本金を増やすことができたらどうでしょう。

 本部は商品をメーカーから低価格で共同購入してオーナー店に提供することが主な仕事で、本部がオーナー店に命令するのではなく、オーナーに一切の経営権限を委譲します。場合によってはオーナー店が複数のコンビニ本部と契約して仕入れることを可能にしてもいいと思います。

 営業時間はオーナーが自由に決めます。


 そもそもコンビニ店のブランドはやめ、「鈴木商店」、「佐藤商店」といったように店名を店ごとにユニークにしてはどうでしょう。コンビニの洗練された看板にオリジナルの店名を付けるのです。

 コンビニのPBはやめ、店のオリジナルブランド商品を作るのです。「鈴木商店チョコ」、「佐藤商店チョコ」といった感じです。そしてコンビニ本部の下請けチョコレート工場を低コストで共同で利用するのです。

 ネットで個人が業者に写真を送ってオリジナルTシャツを作れる時代。板チョコの包装紙に独自の店名や商品名を印刷することぐらい現実的にできるのではないでしょうか。できればチョコの味もオーナーがプロデュースできたら面白いでしょう。


 中国では無人のコンビニがあります。自動販売機、セルフレジ、ネット通販+宅配ロッカーなどを駆使すれば無人またはワンマンコンビニも可能でしょう。

 アルバイト店員はほとんど雇わなくてもコンビニはオーナー夫婦だけで運営できます。



4.未来のライフスタイルを提言


 もともとセブンイレブンは午前7時から午後11時までが営業時間でした。営業時間は1日16時間です。19時間営業の南上大阪店より当初は短かったのです

 これからのコンビニは営業時間や営業日を明記すれば、店ごとにバラバラでもいいと思います。

 一方、できれば独身者世帯、共働き世帯の比率を70年代並みに戻し、定時に日用品を買える専業主婦を増やすことも重要です。


 独身を選択するライフスタイルも尊重すべきでしょうが、男性の場合、結婚したくても所得が低くて結婚できない人が増えました。

 また共働きは男女平等の象徴だと言う人もいるかも知れませんが、旦那と奥さん二人が働けば、旦那一人だけ働いていた70年代にくらべ、世帯当たり労働時間が二倍になっている事実に気づいてください。

 つまり私たちは、ある意味70年代より貧しくなっているのです。そしてこの原因は先に述べた大企業優先主義、または「資本の集中」経済にあります。


 資本を分散し、巨大な社会インフラの建設や大規模イベントを減らし、行政や大企業でなく、私たち一般国民がより多くの富、土地、自由時間を確保すべきです。

 これこそが今回の”富士山回答”に他なりません。


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