くら寿司 不適切動画に思うこと
今回は「くら寿司」の不適切動画に関するニュースについて取り上げます。
「くら寿司」のアルバイト従業員が、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻している動画をネットにアップしました。これに対し、「くら寿司」は動画をアップした従業員2名を解雇し、さらには訴訟沙汰など法的制裁を加える可能性があることを広報発表しています。
さて、ここで問題です。
Q;今回のくら寿司の措置についてどう思いますか?
A:アルバイト従業員が一方的に悪い。くら寿司経営陣はむしろ被害者。当然の措置だと思う。
B:アルバイトに企業への忠誠心を要求するのは限度があり、労働条件への不満が今回のバイトテロにつながった。労働人口のうち、正社員の割合を減らし、非正規雇用を増やし過ぎたことが諸悪の根源。
さて、みなさんの”富士山回答”はいかがでしょう。
私が言いたいのは、回答Aは「くら寿司」経営陣側から見た”正義”であり、回答Bはアルバイト従業員側から見た”正義”です。これに対し、「くら寿司」の客である一般消費者から見た”正義”は少し異なったものになります。
1.動画公開は消費者側から”正義”
消費者の立場から言わせてもらえば、今回の件でアルバイト従業員に物申したいのは、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻すという不衛生な行為に対してです。動画をアップした行為自体は、責めるよりむしろほめるべきです。もしこれを動画にアップしなければ、ゴミ箱から拾った食材の寿司を知らずに食べさせられていた、という客も出てきたかもしれません。
これは私の推測ですが、「くら寿司」経営陣は今回の件で、動画をアップしたことを問題視しているのであって、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に載せた行為は二の次くらいに思っているのではないでしょうか。動画をアップしなければ、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に載せた行為はなかったことにできるからです。
昔、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)で「3秒ルール」という言葉を知りました。ファミレスでバイトしていた人の書き込みのようですが、食材を床に落としても3秒以内に拾えば、料理に使ってもOK。3秒以上、床に落ちたままだったらゴミ箱に捨てる、というルールなのだそうです。
私としては1秒以下でも、床に落としたものは食べたくありませんが......ファミレスにはよく行くので知らないうちに「3秒ルール」食材を食べされられていたのかもしれません。
アルバイトの従業員を正社員に採用すれば、ロイヤリティー、つまり企業への忠誠心が高まり、今回の事件は起きなかったという論調がネットで目立ちますが、私は彼らを正社員にすれば問題をすべて解決できるとは思いません。
彼らを正社員に採用したら、衛生管理の意識が高まり、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻すなどという不衛生なことはしない。そういうロイヤリティーなら確かに歓迎です。しかしながら、ゴミ箱に捨てた魚をまな板に戻すという、企業の不祥事を外部に隠すというロイヤリティーなら、消費者としては少しも歓迎できない事態です。
2.厨房の様子をストリーミング配信すべきでは
ここで提案ですが、全国の外食、中食のレストラン、スーパーマーケット、コンビニの厨房に定点カメラを設置し、ツイキャスなどのネットでストリーミング配信してはどうでしょう。消費者はそれを無料で見ることができるのです。
床に落ちた食材、ゴミ箱に捨てた食材を、料理に使ってないか確認できます。これにより各社の衛生管理状況を正確に把握できます。
業者がこの提案に反発することは必至でしょう。1回でも不衛生な映像がうつったら商売上がったりになる、というのが彼らの言い分でしょうが、実際のところ衛生管理が業界標準を大きく下回らないかぎり、店に客は足を運ぶと思います。
私たちが自動車を運転するとき、交通事故に遭う確率はゼロパーセントではありません。ときには交通事故で死ぬことさえあります。それを知った上で私たちは運転しているのです。
レストランで食事をするとき私たちが床に落ちたものを食べさせられる確率はゼロパーセントではないものの、1万分の1、10万分の1......どれくらい下がれば安心できるかは個人にもよるでしょうが......ある確率まで下がれば、自動車の運転と同じ理屈になるのではないでしょうか。
ストリーミング配信で衛生管理の実態を知り、外食自体をやめてしまう消費者もいるかもしれませんが、それは個人自由です。自炊するときも、まな板や皿からこぼれたものを皿に戻すことはよくあるでしょう。それを考えれば、外食を続ける消費者もいると思います。
もちろん、業界標準を大きく下回る不衛生な店は、衛生管理を改善しないかぎり淘汰されることもあるでしょうが、それはそれで消費者にとってはありがたいことです。
厨房のストリーミング配信は外食産業、中食産業の衛生管理の向上に役立つはずです。
3.組織の内部告発こそ真の正義
ネット時代に入り、組織の内部告発が盛んになりました。
企業の不祥事を内部の人間が暴露するのです。
組織の経営陣からすれば、従業員の裏切り行為と思えるかもしれませんが、社会全体から見れば正義の行為と言えます。
民間企業はもちろん、政府、地方自治体、第三セクターにも当てはまります。
安倍内閣は特定秘密保護法を国会で成立させましたが、これは政府の不祥事を隠蔽する悪法に他ならないと私は思います。一方、米国では公文書を一定期間後に公開しなくてはならないという法律があり、これにより、米西戦争が米国の自作自演テロで引き起こされたこと、戦後、日本の大手新聞社の社長や、ヤクザの親分がCIAの工作員だったことが暴露されています。
一国だけでなく、多くの国がこれまで国家機密とされていた情報を多くを公開することで、私たち一般の人民にとって、住みよい世の中になるはずだと確信しています。
4.大企業中心主義からの脱却を
回答Bは労働者を非正規雇用から正社員に切り替えれば、バイトテロが減るという意見です。
80年代以前、ほとんどのサラリーマンは終身雇用を前提に会社に働いていました。特に長く勤めれば出世が保証されているということもあったのでしょうか。会社に対するロイヤリティーも高かったかもしれません。
しかしながら、バブル時代以前の社会に単純に戻せば、日本人の多くが幸せになるかというと、私はそうは思いません。
実はバブル時代は自殺率が高い時代でもあったのです。
昔の時代から学びたいなら、むしろ70年代、60年代を観察してください。役所や会社で働く勤め人は労働人口の30%程度で、農業、個人商店主、自営業者などがたくさんいました。
寿司屋は夫婦でやっている個人商店が主流で、チェーン店などはありませんでした。
労働人口の主流をサラリーマンから農業、個人商店主、自営業者に戻してはどうでしょう。
江戸時代、武士は全人口の10%でした。武士は今の時代で言えば、公務員です。彼らは上下関係の縦社会に悩んだようですが、それは彼らエリート階層だけの悩みでした。
勤め人を減らせば、縦社会の人間関係に翻弄される人も減ります。縦社会に悩まされるのは人口10~30%のエリートだけでいい、というのが私の考えです。
また大企業は中小企業、中小企業は零細企業にダウンサイジングしてはどうでしょう。
資本を集中させ、全国一律で管理しようとするから息苦しくなるのです。地方ごとにローカル色豊かなユニークな企業があっても面白いでしょう。
「くら寿司」から話題がかなり脱線しましたが、組織の不祥事を暴く内部告発は社会正義であること、正規雇用、非正規雇用が問題でなく、労働人口から勤め人の割合を減らすことが真の労働条件の改善につながることを主張したいと思います。