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序にかえて――クイズ問題

 まず最初にくだらないクイズ問題にお付き合いください。


 Q:日本で一番高い山はどこでしょう? 次の二択からお答えください。 


 A:天覧山 

 B:高尾山 


 さて、みなさんはおそらく日本で一番高い山が富士山であることをご存じでしょうが、それにもかかわらずこのクイズに正解できません。A、Bいずれかを回答しなくてはいけないからです。

 Aを選んでも不正解。Bを選んでも不正解。何も回答しなくても時間切れで不正解。正解のない二択問題だから、こうしたおかしなことが起こります。

 このクイズの正解は出題者が用意しなかった「C:富士山」であることは言うまでもありません。


 いかがでしょう。

 くだらないクイズ問題に見えますが、ひるがえって私たちがテレビをつけると、無意識のうちに時事問題に関して、似たような「正解のない二択問題」をやらされていることがあります。

 私たちはマスコミが提示する選択肢、AかBかでなく、先のクイズにたとえれば「C:富士山」に相当する回答を自ら考えだす必要があります。


*********************


 さて今から三十年くらい前、放送大学で社会学の講義を受けたことがあります。テーマはマスコミの情報操作です(正確な講義名は忘れました)。

 それによると、プロパガンダ、すなわち近代的マスメディアを使って国民の洗脳を試みた政治家の元祖は、ナチスドイツのアドルフ・ヒトラーとのこと。

 彼はラジオを使い、繰り返しナチスの思想を訴え続け、国民を洗脳しました。ヒトラーのプロパガンダはフェーズ1といったところです。

 これに対し、プロパガンダ・フェーズ2はテレビを使った情報操作です。手口もフェーズ1にくらべ、より巧妙に進化しました。ちなみに米国大統領ルーズベルトがフェーズ2の元祖とのことです。

 ある日、ルーズベルトはテレビにうつり、暖炉のあるリビングルームでソファーにくつろぎながら、政治の話はなにもせず、ペットの犬の話ばかりしました。

 さて、ルーズベルトはどんな情報操作を試みたか、おわかりになりますか?


 現代では政治家がテレビに出て、堅苦しくない雑談をすることなど珍しくないでしょうが、当時、政治家はマスメディアに出るときは政治や経済、社会問題の話をするだけで、ルーズベルトのように大統領がテレビで世間話をするのは異例中の異例だったのです。

 つまりこのテレビ出演で、ルーズベルトは愛犬の話をすることで国民に親近感を持たせ、自分の支持率向上を試みたのです。


 放送大学の講義によると、為政者がプロパガンダで国民を洗脳する場合、為政者側が意識すべき二つの鉄則があります。

 第一の鉄則は、マスコミが情報操作している事実を国民に悟られないこと。

 第二の鉄則は、マスコミがどのような方向に国民を洗脳または誘導しようとしているのか、国民に悟られないこと。そしてこれに国民が気づかない場合、情報操作をしている事実に国民がうすうす感づいていても、為政者側としてはまんまと初期の目的を達成できること。


 いかがでしょう。

 あなたは先ほどのルーズベルトのプロパガンダを見破りましたか? それともまんまとだまされましたか? 今日のプロパガンダは彼の時代のときより、さらに巧妙になっているはずです。

 ところで放送大学の最後の講義で、教授が述べた言葉が印象的でした。それは第一に日本人は大手マスコミの報道を信じやすいこと、第二に世界でも日本人ほどプロパガンダに洗脳されやすい国民は珍しく、他国の国民は大手マスコミの報道を素直に信じないこと、の二点です。


 *********


 話を「C:富士山」に戻しましょう。

 ネットサーフィンすると、SNSの書き込みやブログなどで、マスコミの情報操作を指摘する記述をよく見つけます。私が放送大学の講義を受けた時代にくらべ、日本人はプロパガンダに騙されにくくなったのかもしれません。

 ただし私に言わせれば、テレビや新聞が情報操作している事実に気づくだけでは、プロパガンダ・アナリストとしてはフェーズ1のレベルです。

 果たしてこのプロパガンダはどのような方向に国民を洗脳または誘導しているのか、それを正しく見破ってこそ、つまり「C:富士山」を見つけてこそ、はじめてフェーズ2以上のレベルに到達できるのです。


 以降、マスコミが取り上げる話題について、「C:富士山」を一緒に探していきましょう。


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