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女神殺しの銃槍士  作者: カブメント
6話 ラブコメ路線は続かない
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6-3_新パーティー結成

 ガラルの街で、行軍のためのアレコレを買い込んでいく。


倉庫に干し肉やら穀物やらを詰め、飲み物も忘れずに。

 転生者が水道整備をやっていて清潔な水が手に入るが、長期保存で水が腐ったりして誰かが腹を壊したら大変だ。だから携帯専用のものを買っておいた。


 MPポーションはそこそこに、回復や解毒ポーションを重点的に買い集め、数個は左腰にぶら下げる。

 マークスマンカスタムのM4を背負い、フォールディングナイフも身体のあちこちに忍ばせ、使い慣れたフルタングナイフも。


「二人とも、なんか買い忘れ無いか? しばらく街に戻れないから、忘れもんすると困るぞ」


 レンカとカヤの荷物も一部預かり、とりあえず生きていくのに必要な物は揃っている。だが、聞いておいて損はない。

 カヤはガッツポーズを作り、バッチリの笑顔で答えた。


「うん! あたしはだいじょーぶ」


 一方レンカは――。


 屋台で何かの肉の串焼きを必死に頬張っていた。


「んー、どこでも売ってるんスけど、やっぱまるううさの串焼きは絶品っスねぇ」


「ずいぶんと呑気なやつだな」


「でもほら美味しいっスよ」


 串に二つ残ったそれを差し出してきたので、そのまま歯で抜き取った。

 硬めの肉質だが、繊維質で噛む度にほぐれていく。すると、ペルグランデタウルスとは違った深い旨味が口に広がった。


「おおこれはなかなか。俺も一本買うか」


 屋台で大銅貨一枚。日本円にして、百円とちょっとでこのボリュームならかなりお得だ。

 串焼きを六本、指の間に挟んで爪のようにした状態で食べる。カヤは、それを見て気分が悪そうだった。


「よくそれが食べられるね……」


「なんだ? まるうさってことは、ウサギの仲間かなんかだろ? 地球でも食う地域はいくらでもある」


「いや、でもさ……」


 カヤが指差した先には、ハーネスで繋がれた一頭身の生物がぴょんぴょん跳ねながら、飼い主の少女と共に散歩を楽しんでいた。

 それはなんとも気の抜ける愛くるしい顔で、人にもよくなついている。


「ほう、アレがまるうさね……」


 でも美味しいからもう一口。


「いやぁー! 見ながら食べるのやめてぇ!」


 カヤが悲鳴を上げていると、俺と同じまるうさの串焼きを頬張るアリシアが現れた。


「どうした? またノギが性的な悪行を働いたのか?」


「ひぇぇ! こっちにも!」


 アリシアがまだ無罪の俺を疑うので、まるうさを飲み込んでから文句を言う。


「ちげーよ。俺はただ串焼き食ってるだけだ」


「そうか、変に疑ってすまなかった」


 カヤ以外が無心でまるうさを貪る異様な空間、俺達だけでなく、道行く人々もチラホラとその串を持っていた。


「うわーん! 食べ終わったら早く移動してよね!」


 珍しくカヤが動揺しているのが面白かったので、ゆっくりと味わってからその場を後にした。


「――しかし、アリシアってこういう屋台料理も食うんだな。お嬢様っぽいから、てっきり串から外して食うのかと」


 俺にお嬢様扱いされた彼女は、どこか不服な様子。


「私も家だったらそうするが、今は冒険者。周りに合わせるのも必要だ」


「そんなもんかね? 俺はベタベタな『まあ! これが串焼きですの!』ってのが見たかった」


「人に変な理想を押し付けるな。私の家は、気品と同時に力強さも求められる。お母様は狩った獲物をその場で捌くようなたくましい人物だ。私は大人しすぎて心配されるほど」


 このアリシアが大人しいレベルの家庭となると、俄然興味が湧いた。


「大人しいって……。俺に斬りかかって来たくせによく言うよ」


「それは、あのとき邪悪なモンスターのようにしか見えなくて……。今もそう見えているが」


「おい」


 彼女は咳払いをして仕切り直した風を装い、改めて言う。


「ノギたちの旅路、私も混ぜてはくれないか?」


 カヤはすぐ「いいよー」と答え、レンカも「一人も二人も増えるなら一緒っス」と言う。

 一方の俺は、ハルにベッタリの彼女がわざわざ俺に付いてくる理由がよく分からなかった。


「なんだ? なんか裏があるのか?」


 それに、彼女は女神を強く信仰している。それを殺そうとする俺を殺そうとしていてもおかしくはない。


「人間のため、自分のためと言ったら連れて行ってくれるか?」


 その瞳に曇りはなく、美しさに吸い込まれそう。


「うーん。まぁいいよ。アリシアならほっといても大丈夫そうだし」


「元より足手まといになるつもりはない」


 さらっと彼女を受け入れたが、内心結構喜んでいる。


「ぐぇへへへ! また獲物が一人増えた! 今晩は誰から襲おうかなぁ!」


 不意に漏れた心の声――。ではなく、くろすけが俺の背中から顔だけ出して言い放ったもの。


「おいこら、俺の内心を勝手に捏造すんな」


 彼の首根っこ掴んで引っ張り出し、締め上げる。


「ぐぇぇ!」


 レンカがいつものように身体を抱きしめ、おいおいと泣く演技をした。


「うぅっ、今晩は私が犠牲になるから、二人とも安心するっス。こういうのには慣れてるっスから……」


「言っとくけど、一回も手出したことないからな!」


 カヤがニヤリと笑い、上目遣いでからかってくる。


「結構奥手なんだねぇ」


 レンカは手をブンブン降ってそれを否定する。


「そんなことはないっス。一緒に野宿したときなんか、二人の前で縛られて――。ああ、この先を言うのは恥ずかしいっス!」


「寝相が尋常じゃなく悪いからな。寝返りで目潰し食らわせて来るのなんてお前くらいだ」


「避けられないのが悪いんスよぉ。シャルとルファは無意識に回避してるっス」


「無茶言うな」


 レンカと話し始めるとキリがない。


「ふーん、添い寝しちゃうほど仲良しなんだ」


 カヤがからかう標的をレンカに変え、詰め寄る。


「そ、それは。ノギがテントをいくつも出してると休めないんで、仕方なくっス!」


「いや、テント二つくらい別に平気だけど。あの晩はなぜかゴースト系が多くて、お前から一緒がいいって言っただろ」


「そ、そういえばそうだったような気がするっス……」


 そこでカヤが手をパンと叩き、流れを変える。


「じゃ、ノギくんが奥手で安全って分かったところだし、行こっか」


「もうそういうことにしておいて」


 せっかくいい感じの流れになっていたのに、くろすけがそれを台無しにした。


「やはり狡猾ですねご主人は。能ある鷹は爪を隠すと言いますし、安心させたところでパックンチョするつもりなんでしょう」


 くろすけを引きずり出し、本気のパイルドライバーを食らわせた。


「ふごぉッ!」


「どいつもこいつも。もう俺泣きそう」


 カヤが楽しそうにニッコニコしているかと思えば、照れているレンカの右肩に左手を置いて言う。


「やっぱかわいいなぁ、レンカちゃんは。ノギくん取られないために、必死になっちゃってさ」


 アリシアが察しつつ、ナチュラルに俺を貶す。


「さ、流石に趣味が悪いと思うんだが、そんな理由が。大丈夫だ、私はノギに興味ないからな」


「俺の心情考えて発言して」


 真っ赤になったレンカは、あわあわと変な動きをして、必死に否定する。


「だからそんなんじゃないっス! 男と女のアハーンな意味じゃなくて、友達とか家族が取られちゃうみたいで……」


 レンカの言葉と表情で、俺に対する感情がどういうものか理解できた。それは、かつて共に冒険していたという、お姉ちゃんとやらの話をするときのそれに近い。

 彼女の根っこにあるのは恋愛感情なんかではなく、埋まったはずの穴が再び空こうとする恐怖。


「大丈夫、俺は恋が大成しない体質だから一生独身! 俺に惚れたやつはポンポン死んでいく!」


「ご主人、笑顔で言うことじゃないですよ」


 笑顔にならなきゃやってられない。

 でも、ノギになった俺なら、そんなしがらみは消えてしまっているかも。それならば、少しは前を向いて生きられる。


「いやぁ、でも照れるなぁ。俺が女の子にそんな風に思われるなんて、いつぶりか」


「前世のことですかね?」


 パイルドライバーを食らっても、懲りずに悪態を繰り返すくろすけを蹴っ飛ばし、無理やり俺の中に戻した。


 これ以上レンカの内心を掘り返すのも可哀想だ。荷物の最終チェックをして、出発するように俺から切り出す。


 顔が赤熱し、珍しく静かになったレンカは五人パーティーの最後尾を歩いた。


 街の出入り口でハルとイーチャの一行に別れを告げ、群青の谷を目指す。

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