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女神殺しの銃槍士  作者: カブメント
5.5話 アンダーグラウンド・キャメル
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5.5-3_錬金術師

 二人は銃を抱え、怪しげな勘違い日本施設を飛び出すと、遠くから大小様々な銃声が聞こえてくる。

 それはこのエリアではなく、外にある中央通りから聞こえているらしい。


 周囲の人間は、そこへ向かおうとする者といつも通りの生活をしている者に分かれている。


 壱蔵は、弾丸込みで十キロ以上ある銃を軽々と抱えて疾走。その見た目からは想像できない機敏さだ。

 一方、カルロがAKを抱えると玩具のよう。


 先程の鉄扉に入るのは一手間だが、出るのは一瞬。壱蔵の顔を見るやいなや、すぅっとそれは開いた。


 走れば走るほど銃声が大きくなり、カルロは覚悟を決める。


 中央通りに飛び出すと、空へ銃口を向ける人々が視界に映った。

 老若男女問わず銃を携え、その中には小学生くらいの女の子の姿まである。

 どこから持ってきたのかは知らないが、セミオートの狙撃銃をまるで拳銃みたいに軽く扱い、撃ちまくっていた。


「うわぁ、幼女怖え……」


「カルロ、ああ見えてアイツは俺より年上のババァだ。強化兵だから年を取らない」


 壱蔵の言葉に、彼女はドスの利いた唸り声を上げながら反応し、銃口を向けてくる。


「冗談だって。――おい、上見ろッ!」


 彼が指さした先には例の空飛ぶ人間とやらがいて、彼女に向かって急降下。

 その男は現代の日本に相応しくないローブを纏っている。黒とグレーの生地に金色のラインが施されて、コスプレにしては妙に高級感のある格好。


幼女? は狙撃銃を手放し、ゴム毬のように弾むバク転でそれを回避。そして、服の中から取り出した小型の拳銃を精確に連射して応戦する。


 しかし、弾丸は赤く光る壁に阻まれ、虚しくもコンクリートを転がった。

 壱蔵も機関銃を乱射し、その側面を狙うが、もう一枚の壁が瞬時にそれを阻む。


「これが科学じゃないってんなら、神隠しも魔法も信じる気になれるな」


 彼の「魔法」という単語にローブの男は嫌悪感を露わにし、高速で飛んでその言葉が通った首を右手で掴む。


「これは魔法なんて程度の低いものではない。錬金術だ」


 カルロは目の前で起こることがまだ信じられずにいた。壱像を助けようにも下手に銃は撃てないので、銃口を向けるくらいしか出来ない。周囲の人間も同じだ。


 彼の首はそこそこ筋肉質で、並の握力ではその気道を塞がれること無く、余裕を見せつつ錬金術師を罵った。


「ぐっ……。錬金術なんてやってるから、その程度の握力なんじゃないか?」


「錬金術師に筋力なぞ必要ない。このまま細胞を分解し、溶かすことも容易だ。もし死にたくないのなら、【ギデオン】と【質量煌しつりょうこう】の在り処を言え」


 壱蔵は錬金術師の脅しに動じず、空いた左手で自らを締め上げる指の人差し指から薬指を掴み、逆方向に力を入れてへし折った。


「ぐぁぁッ!」


「ほら見ろ、筋力は必要だっただろう?」


 カルロはその瞬間を見逃さない。銃を投げ捨て、極太の腕を振りかぶって、錬金術師の腹を思いっきり殴り飛ばした。

 悲鳴すら出せずにそいつは地面を転がり、生死の境を彷徨っている。


「ギデオンは、とっくの昔に腹を空かせたどっかのバカが食っちまったよ! あんな気持ち悪いもん食えるなんてどうかしてる。質量煌だってもう回収されてここには無い。下調べせずに来るなんて、錬金術は頭まで弱くなるのか?」


錬金術師は白い光を指先から放ち、自分に浴びせる。そうするといくらか生命力を取り戻し、防御壁で弾丸を防ぎつつ、袖の中からクリスタル状の物体を取り出す。


 その内部には色彩豊かに光るものが封入されていて、地面に投げると、空間のねじれが発生する。

 そこへ這いずるように逃げ込み、落ちると一瞬で空間は元通り。


「ったく、何だったんだアレは?」


 壱蔵は首の具合を確かめながらぼやく。


 町の人々は、何事もなかったかのように銃を引っ込め、あっという間にいつもの生活に戻っていく。

 この街は、カルロが思ったよりも異常だ。超常現象への適応力も高すぎる。


「神隠し、信じることにしますよ。あんなのが居るってんなら、この世で何が起こってもおかしくない」


「だな。でも、本当に超常現象が原因だってんなら、探すのは大変だぞ?」


「それでも、友達ですから」


 カルロは投げ捨てたAKを拾い上げ、埃を払い落とす。


「そういえば、さっきの錬金術師だかが探してた、ギデオンと質量煌って何なんですか?」


「まぁアレだ。ギデオンはちょっと珍しい化石みたいなもんで、質量煌は石油に取って代わる新しい燃料。今はそれ以上知らなくていい」


 変に深入りするのもおっかないので、カルロは追求しない。


 ――一歩とは言えないほど小さな前進、それでもノギに近づきつつある。カルロは、彼が呑気に冒険しつつ、女神を殺そうとしているなんて思いもしなかった。


(ノギ、絶対に見つけてやるからな)

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