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女神殺しの銃槍士  作者: カブメント
4話 ゴーレム戦線
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4-3_我こそ異世界狙撃手

 透明なゴブリンの襲撃以降は問題なく街道を進み、山を割る形で通っている谷を越える。

 その先には少々荒れ気味の平原が広がっていて、緩やかな下り坂の先で戦いが繰り広げられていた。


 ファランクスを組んだ古代的なものや、塹壕や地形を盾にした現代的な銃撃戦でもない。

 一パーティー五人前後で編成された、分隊にも満たない集まりが散開し、それぞれが自由に巨大なゴーレムと戦っている。

 中には、俺が戦ったものよりも大型の個体がチラホラと暴れ回っていた。


 一見非効率の極みな戦い方だが、一個人の戦闘力が高いこの世界では、パーティーというシステム自体は理にかなっているとも言える。

 しっかりと連携のできる少人数が、主力を全力でフォローし、主力は数人に当てないように必殺の一撃を放つという戦い方。

 それは、お互いの能力を理解して初めて安全に戦える。


 とはいえ、事前に打ち合わせをした転生者が横一列に並び、殲滅魔法を正しく使っていれば、もう少しマシな戦況だったとは思う。


 しかし、どんなに優れた集団戦の方法を提案しようとも、個人が力を持ちすぎたこの世界ではあまり意味がない。きっと誰かが勝手に先行し、戦い始めるのがオチだ。

 だからこそのパーティなんだろう。


 馬車は目立つので待機させ、近場の腰の高さほどの岩へ身を寄せると、ミラナもすぐ隣にしゃがんだ。


「帰らなくていいのか?」


「こんな危険な場所を一人で帰らせるつもりですか?」


 ミラナは少しからかうように、緩んだ笑みの上目遣いで俺を覗き込む。


「それに、私は結構魔法に自信があるんですよ? なんてったって、冒険者にスキルボードの効率的な習得方法を提案するのが一番の仕事ですから。いろんな魔法が使えないと、ギルドの受付嬢は勤まりません」


「なるほど。スキルボードの話なんてしたこと無いから、全然知らなかった。てっきり報酬関係の手続きする人かと」


 軽く自虐の入ったセリフを、ミラナは苦笑いで流した。


 俺はM4を岩に立てかけ、双眼鏡とMSRを取り出して、無作為に選んだパーティーを覗き見る。

 双眼鏡のレンズには典型的なハーレムパーティーが映り、人間ほどの大きさのゴーレムに苦戦している。ギルド員四人に対し、ゴーレムは八体。

 俺は救世主として出てきたということもあるので、見捨てることも出来ない。


「魔法が得意ってことは、俺達を囲むように攻撃魔法を展開できないか? 弾丸が遮られないような方法で、透明のゴブリン対策をしたいんだけど」


「もちろん出来ますよ」


 彼女の魔力が高まり、青白く光った手で地面に触れると、岩の周辺以外の地面が凍りついた。

 さらに、土を突き破って氷の結晶が数えられないほど浮かんできて、周囲をゆっくりと飛ぶ。


「どれか一つにでも触れた瞬間、凍りついて見えるようになります。これでどうでしょうか?」


 弾丸の直径は一センチにも満たないので、この隙間から撃つことは容易。意図的に前面の密度は落としてあるので、狙いやすい。刃化したくろすけを振り回してもいいのだが、結構な風圧が発生するし、うっかり撃ちかねない。


「まるで機雷だ。これなら集中して狙える。ありがとう」


 岩で左半身を隠し、バイポッドを展開して先程のパーティーに銃口を向け、スコープを覗いた。安全装置を外し、今すぐにでも撃てる。


 氷のせいで少々冷えるが、頭が冴えて悪くはない。

 スコープで捉えたゴーレムは、一般的な住居の角材やレンガで組まれた下級のもの。歴史ある建造物で作るとゴーレムは強くなるので、この程度のやつなら弾丸で魔法障壁ごと貫ける。

 とはいえ、数が揃えば大型のものより厄介だ。


 そいつらの一体に男が捕まり、締め上げられていたので、それを最初の目標とした。完全に組み付かれていて、周囲の人間は誰も手出しできない状態だ。


「当たっても恨むなよ。俺が撃たなきゃ、どっちみち死ぬんだし」


 計算やサポートを行うスポッター。それ無しで風や重力のことを考えて狙うのは至難の技。

 俺にあるのは、僅かな狙撃知識と数をこなして手に入れた勘だけだ。

 距離は約四百メートル。コンディション次第では、センチ単位で着弾点がズレる。それを最小限にするため、撫でるように引き金に力を加えていく。


 風が一番弱くなった瞬間に呼吸を止め、心臓の鼓動の合間に弾丸を放った。

 引き金を引いて間もなく障壁を砕き、土煙が舞い上がる。とりあえず、血煙でなくて安心だ。

 音速を超える鉄塊は、直接当たらなかった依代まで粉砕する。砕け散ったゴーレムは魔力を失い、元の建材に戻った。


「一体撃破」


 もちろんすぐ隣の岩に着弾した彼はタダで済むわけもなく、弾け飛んだ岩が肩を抉る。

 ゴーレムに絞め殺されたり、弾丸が当たるよりマシだ。

 幸い、現代医療を凌ぐ回復魔法があるので大事には至らないだろう。


 まだ数では圧倒的に不利な状況なので、次の狙撃に備えてボルトを引いて戻す。

 目標へ素早く照準を合わせ、もう一度撃とうとしたとき。俺はゴブリンの鳴き声と凍りつく音に驚き、危うく変な力が入ったまま引き金を引くところだった。


 音のした右側を見ると、ゴブリンの腕が宙に浮いたまま凍っている。M4に持ち替え、胸のあたりを予測してACOGのバックアップアイアンサイトで狙った。


 弾丸一発でそこを探り当て、そいつは崩れ落ちながら複数の氷の機雷に当たって、見事な氷像を完成させる。

 しかし、芸術とは儚いもので、混沌から生まれたゴブリンは例外なく黒くなって溶け消えた。


 狙撃の体制に戻ると、今度は魔法使い装備の女の子に迫っていたので、近づかれる前に素早く精確に狙いをつける。

 いきなり鉄の塊が飛んできたということもあり、パーティーは恐怖で動かなくなっていたのでいくらかやりやすい。


「そのまま動くなよ……」


 二発目の弾丸も見事命中。それでも、スコープ上では数ミリの誤差が誤射に繋がるので、緊張感のある一発だった。


 小型ゴーレムは人間やゴブリンより動きが鈍く、それからは外すこともなくパーティー周辺の敵を全滅させる。

 我ながら、いいセンスだ。


 俺は深くため息を付いていると、ミラナはギルドで使われる「こっちに来い」という意味の青の信号弾を使い、彼らを呼び寄せることにした。


マスケットピストルなようなもので撃ち出されたそれは、青い煙の線となって空高くまで到達する。

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