レイヴンと内緒の時間
廊下をぺたぺたと歩く足音が聞こえる。レイヴンは、うっすらと瞳を開く。
なにやら、ドアが少しずつ少しずつ音を立てないようにゆっくりと開いて、150センチあまりの小さな少女がこっそりとこちらの様子を伺っている。レイヴンは寝たふりをして、そのままソファーに横たわる。なぜだか、ブランケットを頭から被っているが、姿を確認しなくても俺には誰が来たのかすぐにわかった。
「レイヴンさん……もう寝てしまったかしら……?」
ノックをしてもあえて返事をしなかったので、凛は部屋に入ってきた。出会ったときから彼女の予想不可能な行動にいつも冷や汗が出る。自分から部屋に入ってきたのに、ソファーで眠るレイヴンの目の前で立ち止まってしばらく悩んでいた。
(これは……彼女に試されているのか……?)
一人葛藤して、悶々としていると凛がレイヴンの脇腹の隙間に身を丸く寄せて来た。ブランケットを二人包むように上にかけて、「よし!」と隅っこで丸くなる。
(全然よくない!!!!!)
レイヴンは心の中でそう叫ぶと、うっすらと瞳を開ける。目の前にはすっかり安心仕切って、すやすやと眠る凛の姿があった。
「ふわふわ、もふもふのわんちゃんみたい……」
(……凛にとっては俺は犬と一緒のつもりなのだろう……)
しばらくおとなしくしていたが、凛は寝ぼけてレイヴンの体をぎゅっと抱き締めた。その後も、ぎゅうぎゅうの、すりすり、もふもふ、なでなで、ヨシヨシ……お手……とされて。ギブアップとばかりに白旗を上げた。
「ナーガ……そこで笑ってないで助けてくれ。このままだと、俺がどうにかなりそうだ」
ナーガはドアから顔を出して、可愛らしい状況にくすくすと笑っていた。