レイヴンの本当の目的
レイヴンが胸ポケットから懐中時計を取り出すと、時刻を確認し、また胸ポケットへしまう。
三人は今日の散歩はここまでにして、一旦下の階に降り、各自の自分の仕事に戻ることにした。ナーガは急いで一人キッチンに行き、みんなの昼食を運ぶ手伝いと、バグに追加のご飯を運ぶ。
二人は階段を降りて自室に戻ろうとした。階段の窓から庭に干された洗濯物の中に、見覚えのある黒い服が見える。ずぶ濡れだった凛の制服が、ナーガに綺麗に洗濯されて干されていた。
「凛は元の世界に戻りたいのか?」
突然の質問に返答に躊躇する。最後に見たのは目の前に広がる血の……。
「俺が魔王の塔に来た理由は、魔王を倒すだけではない」
凛は最初に出会った時、レイヴンに剣を向けられていたことを思いだし、背筋が強張った。
(まさか、今ここで私をーー……)
レイヴンは凛の手を掴み、傷をつけた腕の包帯を外す。すると傷は後もなくすっかり消えていた。
「死んだものを蘇らせるのが聖竜の血ならば、魔王の血は唯一無二、何者も殺せる、死神の血とも呼ばれている。俺は、この世界のためにお前の血が欲しいのだ」
レイヴンは凛の手首の細い血管に牙を立てる。
「でも今ここで凛を傷つけることはしない。まだ条件が揃っていない。空に浮かぶ月が侵食と消滅を繰り返し、紅い月になるまで待つことにしよう」
(紅い月……? 私の血が欲しいって、一体どういうことーー……?)
「勝手に死なれても困るからな」
レイヴンは凛の手に片手を添え、手を握ると、牙で血管を傷つけることなく唇を物欲しそうにあてた。そのまま手を裏返すと、まるで約束を誓うかのように手の甲にキスをする。
「それまで守ってやる。凛は魔獣たちの王ではない」
「……!」
「俺の魔王だ」




