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魔王は勇者の心を虜にする。  作者: mayme
2、平穏な日々
12/45

レイヴンの本当の目的

 

 レイヴンが胸ポケットから懐中時計を取り出すと、時刻を確認し、また胸ポケットへしまう。


 三人は今日の散歩はここまでにして、一旦下の階に降り、各自の自分の仕事に戻ることにした。ナーガは急いで一人キッチンに行き、みんなの昼食を運ぶ手伝いと、バグに追加のご飯を運ぶ。


 二人は階段を降りて自室に戻ろうとした。階段の窓から庭に干された洗濯物の中に、見覚えのある黒い服が見える。ずぶ濡れだった凛の制服が、ナーガに綺麗に洗濯されて干されていた。



「凛は元の世界に戻りたいのか?」


 突然の質問に返答に躊躇する。最後に見たのは目の前に広がる血の……。


「俺が魔王の(ここ)に来た理由は、魔王を倒すだけではない」


 凛は最初に出会った時、レイヴンに剣を向けられていたことを思いだし、背筋が強張った。


(まさか、今ここで私をーー……)


 レイヴンは凛の手を掴み、傷をつけた腕の包帯を外す。すると傷は後もなくすっかり消えていた。


「死んだものを蘇らせるのが聖竜の血ならば、魔王の血は唯一無二、何者も殺せる、死神の血とも呼ばれている。俺は、この世界のためにお前の血が欲しいのだ」


 レイヴンは凛の手首の細い血管に牙を立てる。


「でも今ここで凛を傷つけることはしない。まだ()()が揃っていない。空に浮かぶ月が侵食と消滅を繰り返し、()()()になるまで待つことにしよう」


(紅い月……? 私の血が欲しいって、一体どういうことーー……?)


「勝手に死なれても困るからな」


 レイヴンは凛の手に片手を添え、手を握ると、牙で血管を傷つけることなく唇を物欲しそうにあてた。そのまま手を裏返すと、まるで約束を誓うかのように手の甲にキスをする。


「それまで守ってやる。(おまえ)は魔獣たちの王ではない」


「……!」


「俺の魔王(もの)だ」




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