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がんとNY   作者: りずむK
2/3

エピソード5 シーンパートナーを探せ!

★ワンポイントイングリッシュ 


●insecure (インセキュアー)=自信が無い。不安定な。日本で言う、「コンプレックスを持ってる」みたいな感じ


hilarious(へらリオス = ばかうけ。超うける。

________________________


アクティングスクールでは、1クラスの長さが4時間。←めちゃめちゃ長い。

各教室が、すり鉢型の劇場っぽくできていて、

生徒は、おのおの、自分で選んだ台本やシーンを練習してきて、

クラスの前で演じるのだ。 


毎クラス、前に出てやるわけではない。

自分で「何週間後にやろう!」とか決めて、ブッキングしてそれに向けて練習するのだ。


先立ってやらなくてはいけないことは


●先生に紹介してもらった「台本を売っている店」などに行って、色々な本を読む

http://www.benteague.com/productions/scripts.html


●「シーン」を演じるには「シーンパートナー」が必要だから、

クラスの中で「シーンパートナー」を見つける。 


ここで、問題が生じた。


この学校にきている人は「役者になる」とか「ハリウッドを目指す」など

結構、がっつりした目標をもって、クラスに出席している。


ということは、「英語が不自由な日本人」とか「なんとなくスローでぼけぼけしたやつ」に

かまっている暇は無い。


すなわち、私のシーンパートナーになろう!なんて人がいないのだ。 


私は、先生に教えてもらった「初心者向けのスクリプト」候補をいくつか読みながら考えた。


私も、もともとは、舞台に立ちたくてダンスをやっている。

毎クラス、毎クラス、人が舞台に立って演じるのを

指をくわえてみているのは、かなりのストレスがたまった。


そこで、強硬手段に出た。

まだやることも、パートナーも決まっていないのに、ブッキングをしたのだ。

そして、数あるスクリプトの中からモノログ(一人芝居)を選んだ。


クリストファー デゥラン(Christopher Duran)という人の短編集。

その中で1個「NYのスタンドアップコメディアン」のモノログがあった。


「スタンドアップコメディー」とは、日本でいう漫才みたいなもので、

コメディアンが一人でしゃべる、トークショーだ。

多くのハリウッドのコメディー俳優が、このスタンドアップコメディーの出身だ。

(ビル・マレーとか、ダン・アイクロイド などなど)


この台本には「売れなくて、自信の無い(insecure)な女のスタンドアップコメディアン」が描かれている。

その当時の、私にぴったりのような気がした。

私の語学力では、ジョークの内容は全く「意味不明」だったが、私の想像ではたぶんこんな感じ。

「シモネタや、時事ネタを含み、面白おかしく、書かれていて

また「売れない感じ」が若干の悲壮感を漂わせて、絶妙な笑いをさそう。」みたいな。 


自分が何をしゃべっているのか、全くわからないけど、とりあえず暗記して、

自分なりに「ここは面白いだろう」(想像)ってところは

テンポを出してしゃべったりして、練習して、いざ!発表の日を迎えた。 


一人で舞台にたって、クラス中の注目を集めると、かなり緊張した。


私が「hi, my name is ●●●、and I am a stand up comedian」 話しをはじめると、

クラス中が静まりかえった。←はぁ?コメディアン? みたいな。 


私は相変わらず意味のわからないまま、ぺらぺらとしゃべった。

すると、センテンスごとに、「くすくす」とか、「はっ」とか、「ふっ」とか小さく

ためらいがちの笑がおこった。


モノログの中盤にさしかかると、その笑いは確実なものになり

私も少し落ち着いてきた。


そして、モノログ終盤には、クラスは笑いと歓声につつまれたのだ。


「ひっっっっ」


「はっはっはっはっ」


「ひゅーひゅーひゅー!」


私は「自信が無く、コンプレックスを抱える女の子」を演じたまま、しゃべり終えると

「BYE」と言ってそそくさとステージを去った。

(←売れないコメディアンが罵倒を浴びながら逃げるようにステージをアトにする感じ、のつもり)  


ああ、気持ちよかったああああああ。

何が面白いのか、一切わからなけど、めちゃめちゃうけたし!

最高のビギナーズラックだね。 

ってか、台本の勝利だね。


クラスが終わると一人の男の子が声をかけてきた。


Hey, you were hilarious ! (超面白かったわ〜。) 


Everybody almost doubted, this cute little Japanese girl,

actually saying those dirty words and all that, you know?


(この小さい日本人の女の子が、あの汚い言葉とか、悪態をついたりして

「え?今なんて言った?」って、みんな耳を疑ったよ。笑) 


彼の名は、ブライアン・ガズマン。血はドミニカン(ラティーノ)。

黒い髪、黒い目。国籍アメリカ。俳優志望。 


この日から、私とブライアンの長い、長い、友情が始まった。


ブライアンは私が「今、会いたい人」のトップリストだ。

あの出会いの日から、5年間、私たちは深い友情で結ばれたが、

ブライアンがキャリアを求めてロス(LA)に旅立ったときと

私の「がんによる急遽帰国」が重なって、連絡の方法を失ってしまったのだ。


ブライアンは「ロスでの落ち着き先が決まったら電話するね」って言っていたのに、

その間に私はNYのアパートが無くなってしまって、ブライアンと私をつないでいた

唯一の電話番号(私のNYのアパートの電話)が無くなってしまったのだ。


時折、無償にブライアンに会いたいときがある。


この「ネット情報時代」に、見つけられないのか?って

思うかもしれないけど、見つけられない。


無償にブライアンに会いたいときがある。

___________________________


●クリストファー・デゥランの紹介↓ 

http://www.christopherdurang.com/Biography-Short.htm


●クリストファー・デゥランの短編集↓

http://www.amazon.com/Christopher-Durang-I-Short-Plays/dp/188039989X  


●台本を探す↓

http://www.benteague.com/productions/scripts.html



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