無名
ずっと1人だった。
でも寂しくはなかった。
僕は1人だった。
でも悲しくはなかった。
俺は1人だった
でも、辛くはなかった。
大人になれば全部変わるから。
大人になっちゃえば、全部断ち切れるから。
薄暗い路地を歩いた
そこには猫がいた
猫は言った
『早く来た道を帰りなさい、この先はね、ここより暗くなる。
光無くては帰れなくなる』
無視して進んで歩いた
ずっと、ずっと、ただひたすらに歩いた。
どんどん、どんどん、暗くなる
どこが空だか、わかりゃしない
それでも、歩く
すると一つの明かりが見えた 家だ
コンコン
「どなたかいらっしゃいませんか」
ギィ……
『いらっしゃいませお客人、こんな所までよくおいでくださいました。
ささ、中へどうぞ』
と、お姉さん
「ありがとうございます」
家に上がらせてもらった
すると広い部屋に通された
ただ 椅子とテーブルが中央に置かれ あとは何も無い
『暗い道を通り、さぞ歩き疲れたでしょう。
さぁ、そこの椅子にお座りください』
そして……
『何故、ここへ来たのかお教え下さいませ』
逃げられない
俺は話した
大人になれば全部変われる
大人になれば全部断ち切れる
大人になれば
「自分をいじめてた奴らを懲らしめられるから」
と
『なるほど…、だから貴方はここへ来たのですね。
分かりました、でも貴方はまだ若い。そしてまだ、貴方なら』
そう言うと 彼女は席を立ち、どこかへ行った
数分が経った
彼女が戻ってきて、何かを渡してきた
『これはカンテラと言います。光を灯します。
これを持って来た道をお帰んなさい。貴方は大丈夫、きっと大丈夫よ』
俺はカンテラを受け取り、家を出た。
そして カンテラで通っていたであろう場所を照らすと道が出てきた
俺はその道を歩いた ただひたすらと 黙々と てんてんてん
すると、先ほどの猫がいた
『なんだ、戻ってこれたのか。良かった、よかった。さあ、早く帰りなさい』
そこからまた歩いた すると光が見えてきてカンテラが切れた
俺は光があるほうに歩き始めた
真っ白で 力強く 眩しい 生きてるような……
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目が覚めたら、知らない場所のベッドの上だった
天井は白い
『あぁ!目覚めたのね!!よかった、よかった…』
横には女の人がいた
「おかあ……さん…?」
『よかった、よかったわ、あぁ、貴方が起きてよかったわ、でも、可哀想に』
『あのまま眠っていれば楽に逝けたのに』