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第九話 ラベンダー

 「とにかくこれで検査をしてから、次の行動を考えましょう」

 スレンダーな秋穂に見とれながら、マッチは言われるがままトイレに向かった。

 秋穂は、ヒッキ―から一言二言説明され、あっという間に女子お泊り会開催を全親に連絡を取り、了承させると、自分の部屋へと招待してくれていた。

 「ヒッキ―と秋穂さんって、一緒に暮らしていないんだ」

 意外に思った私が言うと、ヒッキ―はソファーに置いてあったクマのぬいぐるみを胸に抱きながら坐ると、あの人、ずるいからとボソッと答える。

 「そうなの?」

 「そうなの。私から逃げてんの」

 「またまた」

 ヨーデルが、秋穂の後をついて回るのを眺めながら、私はヒッキ―の言葉を茶化した。

 「あの人、鉄の女みたいに思われているけど、案外涙もろくてだめなのよ。私に嘘が付けなくて、泣き出したりしちゃうんだもん。ママもパパも我慢しているのに。仕事に集中したいからっていう口実で、この部屋を購入したみたいだけど、なんか見え透いてんだよね」

 カチャカチャとカップを鳴らしながら、ヨーデルが紅茶を運んでくると、自然と二人は口を噤んだ。

 「マッチ、大丈夫かな?」

 ヨーデルの言葉に、私たち二人は、トイレの方に目を向ける。


 秋穂が時計を見上げ、トイレのドアをノックすると、マッチが涙目で出て来た。

 「どうだった?」

 その言葉に弾かれるように、マッチはその場にへたり込み泣き出す。

 「やっぱり!」

 そう叫んだのはヨーデルだった。

 どたどたとマッチの傍に駆け寄った私たちに、秋穂がにっこり微笑む。

 「陰性だったみたいね」

 試験薬を手に言う秋穂が、マッチの頭を撫でる。

 「この先は、私に全部任せてくれる?」

 マッチは泣きながら、うんうんと頷く。

 「その男、成敗してやる」

 出たー。

 私とヒッキーは顔を見合わせる。

 秋穂が本気で怒った時の言葉だ。この言葉によって、私を陰湿に追い詰めて行ったグループをやり込め、それを見て見ないふりをしていた教師たちをいやっというほど痛い目に遭わせてくれた。

 

 「明日、午後七時に会う約束を取り付けてくれる?」

 秋穂の不気味なぐらい穏やかな声に、マッチは素直に応じメールを送る。何も知らない彼からの返信は、間もなく届けられ、そこで全員、秋穂命令で就寝させられた。

 

 「あんたは教師か」

 それぞれの着替えを用意し手渡す秋穂に、ヒッキ―が皮肉を言うのを遠目で見ている私にも着替えが手渡され、驚いてしまった。

 「秋穂さん、横綱ですよ」

 ヨーデルの質問は、私の質問でもあった。

 「私の辞書に、不可能はない」

 「あんたは、ナポレオンか?」

 ヒッキ―の突込みが上手く決まったところで、私は恐る恐る手にしたスエットに、手を通す。

 「御見それしました」

 ジャストヒットした洋服を見て、さっきまで泣いていたマッチも、ヨーデルと共に頭を下げる私を見て、手を叩いて喜んだ。


 そして、私たちは決戦の日に備え、深い眠りに就く。


 5時に、秋穂にたたき起こされたみんなは一旦家に戻り、授業の用意をしてから学校へ行き、終わると大急ぎで着替えて、待ち合わせ場所に集合をしていた。


 今日も、お泊り会開催ということになっている。

 親も弁護士である、秋穂に勉強を教えてもらっていると聞かされては、文句が言えない。ましてや今日は金曜日。明日は学校が休みだから、もしかしたら二泊くらいしてくるかもと伏線付きでの了承だった。


 何も知らない犬飼まことが、いそいそとやって来て、マッチに手を振る。

 数分後、マッチは秋穂の指示通り、妊娠を切り出す。

 秋穂が読んだ通りだった。

 動揺した犬飼は、何度も妊娠を確認してから、堕胎してくれと頭を下げた。そこへつかつかと秋穂が近寄って行き、マッチの隣に陣を取る。

 気のせいか、ほら貝がなったような気がした。

 私たち三人は、固唾をのんでその様子を少し離れた席から伺っていた。


 ラベンダーの花言葉・・・疑惑。沈黙。私に答えてください。

 


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