理由が必要ですか?
「胸に手を当てたら?」
心当たりなんてないのに、こんなことを言われたんだ。
なんかしたかなあ?
なんであんな言い方するんだろう?
はっきり言ってくれよ。何が悪かったんだ?
そもそも、何か悪かった?
あれ? これって……ケンカなのか。
いつも通りの待ち合わせ、何処というのでもなく、
ちょっと街をうろついて、疲れてきたらスーパーで買い物。
その後いつも通り二人で部屋に帰って来た。
二人で食事の準備、出来たら二人で食べて。
テレビを見ながら交わす、たわいのない会話。
過ぎていく楽しい時間。
だったはずなのに。
いきなりの状況変化。
いったい何が起こったのかすら、分からない。
怒らせるような原因なんて、どこかにあったか?
なんで、いきなりなんだよ。
いきなり怒る状況って、なんなんだよ!
それも、理由について何もなし。ヒントすら。
どこが悪いんだ。
原因はこっちか?
いや、こっちに心当たりはない。
だったら、あっち?
もしかして、ピンポイントで的を突いた? とか……まさか、な?
だとしたら……いやいや、それは、もっと面倒くさいだろ。
それこそ、未来が見えない。
あれ? 何か忘れてないか。
!
飛び出して行ったんだった。
慌てて飛び出したものの、どこに行ってしまったのか思い当たる場所が……あった!
「ここにいなかったら、どこか……分からないなあ」
そう思いながら、ドキドキしながらとある公園へ入ってみた。
ここは思い出というよりも、出会った場所だ。
と、いうのも、お互いの友人同士の恋が終わった時、ここで居合わせたんだから。
あの時は巻き添えを食ったという思いが共通意識にあり、
「冗談じゃねえよ」の心境で、
失恋後の友人の後始末というか、憂さ晴らしに付き合わされ、
その後数回にわたり慰めるなど、迷惑を被った同士、なぜか連絡を取り合っていた。
どうもそこで意気投合、今に至る。
「よかった、ここにいたんだ」
姿を見つけて近づいていくと、いきなり振り向かれた。
「なんで来たの? いつものように無視すると思ったのに」
「ごめん、大事だから。怒らせて……ごめん」
気がついたら、お互い抱き合っていた。
腕の中に温もりを感じながら……。
あれ、ケンカしてたんだよな?
そういえば理由は?