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カジノにだって愛はある

 時々もとの世界の夢を見る。生きるために活動しているはずなのに死と隣り合わせ出なければそれが実感できない世界だった。

 より安全で長生きが出来るようにと願うのに、より危険なものを身近においておかなければ不安になる連中ばかりが集まった世界だった。

 

 もう終わっていたんだろう、種としての限界か、それとも業が深すぎたのか俺にはわからないが、この世界もまた死に瀕しているのだろう。

 それでも俺は生きていたいと願うからこそ仕事をする。たとえ種として命脈が尽きるとしても今ではない。すぐそばまで来ているのは間違いないがな。


 今までの俺はどうやら安全な仕事ばかりを選びすぎていたようだ。だが、どこにいても危険は付き物だし、同じ危険ならまだ金になるほうを選んだほうがマシっていうもんだろう。

 いままで、マスコットキャラやポーターなど雑用の仕事ばかり選んでいたがそろそろ本格的な冒険者ギルドの仕事に着手してもいい頃だ。

 俺自身には金はほとんど要らないのだが、そのほかの理由としては孤児院に預けた姉妹のことも気にかかるし少しでも寄付ができれば待遇も多少よくなるかもしれないという程度だ。

 

 冒険者ギルドの主な仕事は採集依頼と討伐依頼になる。採集のほうは近場なら女子供の仕事であるし、遠くなればベテランの仕事になる。

 討伐依頼も害獣退治と魔物退治に分けられ、一般人に毛の生えたレベルでやれるのは害獣退治ぐらいなものだ、ウサギやらイノシシ、野犬に鹿を捕り、使える部分は有効に活用することができる。


 魔物は少々事情が異なり、個人単位での依頼はなく、討伐隊が組まれ小規模な戦闘に近いものになる。その中に冒険者が組み込まれる形なので報酬も人数と役割によって変わってくる。


 他人と連携が取れない俺が魔物退治に参加することはない、やってやれないことは無いかもしれないが証人もいないのに魔物を退治したなどと言ったところで誰も信用しないだろう。

 

 俺が狙うのは基本的には地上ならネズミやモグラ、少し大きめでウサギ程度の害獣狩りだ、これならいちいち武器を振り回すより毒や罠で確実に捕獲できる。

 

 こうすれば労力はかかるが少しはもらえる金が増える。稼いだ金はギャンブルにつぎ込んでまた増やす。

 ・・・ん?ギャンブル?


 ああ、最初からそうすればよかったな。


 俺は街にある賭場にでかけることにした。

 色々な方法でやっているようだったが俺には賭け方がよくわからない、ルーレットのようなものがあったので、赤か黒を選べるものがあったのでそれをすることにする。


 そこには別に期待も興奮もなくただ淡々とした作業だけだ、どれだけ勝てばいいのか良く分からないので相手が泣きつくまで勝てばいいんだろうと言った感じだ。

 

 なぜ勝ち続けることができるのかといえばそれだけが俺の能力というだけだからだ、原因には結果がありそれを力技で捻じ曲げるのがチートだのギフトなどといわれるものなんだろう。

 だが、おれは当たり前の事象をただ当たり前に、言い当てているだけだ。

 ただそれが天文学的な確率であったとしてもそれが起こりうるならばそれが分かる。

 自然現象であろうと故意に起こそうとしているものであってもそれは同様だ。


 俺は何もしていない。誰も何もしていない。ただ、そこにあるのは原因と結果のみ、複雑な世界じゃそれが見えにくくなっているっていうだけの話さ。

 

 ん、どうやら元締めが出張ってきたようだ。ここまでだっていうのは分かったし、相手もそれがわかったみたいだな。

 相互理解っていいもんだ。

 

 俺は勝ち分の半分を元締めに手渡し、その場を後にする。これで賭場とは縁はない、向こうにも面子があるだろうからな。

 しかし、こういう稼ぎ方をすれば後から奪い取ろうとする無頼の輩は存在する。

 いささか目立ちすぎたな。結局の所楽に稼げるなんてことは存在しないってことだろう。

 

 さて、前に二人、後ろに一人か・・・労力に見合った報酬が得られるとするならば当然、襲い掛かってくるだろう。俺には結果は見えているのだが彼らにはわかっていないのだろう。

 

 前の二人は雄叫びをあげながら片手に獲物を振りかざし襲い掛かってきた。

 後ろの一人は静かに忍び寄ってきている。なかなか良いコンビネーションだ。俺が遠隔武器を持っている可能性もあるからな、距離を取られるのは危険であるし、誰かが突っ込まなくてはならないだろう。


 たとえ防がれても、後ろから不意打ちをすれば容易に無力化できる。

 

 だが、それは悪手だよ。


 俺は襲ってきた勢いそのままの一人を掴み、転がし後ろに流す。忍び寄っていた後ろの一人は巻き込まれ地面に転がる。

 あっけにとられてみていた一人の秘孔に針を差込み呼吸を止める。

 人の形をしているものを倒すのにそこまで苦労はしない、結局はどこまでするのかという問題だけだ。

 倒れている残りの二人も針をさして肺を破る。


 そして俺は肺を破られ呼吸もままならずチアノーゼを起こしている三人をならべて語りだす。

 これって俺の愛なんだぜ?カジノで負けることもあるだろう、勝つこともあるだろう、でもそれはお前さんたちには関係の無い話なんだぜ?だから俺たちはおめぇたちのことを思ってこうしているわけだ。

 なぁ、これから真面目に生きて更正するといいことあると思うぜ?

 

 こういうことに出会えたんだからカジノって言うのも悪くないんじゃねぇの?お前さんたちも神様からの愛に触れることができればいつか理解できるようになるだろうよ。


 あ、もうに会いに行っちまいやがった。まったくせっかちな連中だぜ。

 

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