海にだって愛はある
海の広さを知ってるか?この世界が丸い星なのかは知らないが、所詮人間が認識できる範囲なんてたかが知れてるだろうよ、見える限りはすべて水、それが海さ。
この世界の海も塩気たっぷりなのは確認済みだ、なめればわかる。
火山によって出来た地形のせいか結構な岩だらけの海岸に俺はきていた。
別に今回は仕事じゃない。先日の火山の爆発でそれどころじゃなくなっているからだ。生存者の確認と死者の埋葬に追われて冒険者ギルドも手が足りていないようだ。
俺は命からがら逃げ出したことになっているから、被災者ってことで仕事が回ってこない。
なら海にでも行って魚でも釣って生きながらえようっていう寸法だ。
別に俺1人ならここまでする必要はないのだが、今の俺には居候が2人もできてしまった。
先日の被災者に家族連れがおり、両親は火山弾によって死亡、その子供姉妹を助けたことでなつかれてしまったのだ。
街の混乱はいまだに続いておりまだ収束の兆しを見せていない。遺族と連絡が取れないのでしばらくの間俺が預かることにしたのだ。
子供たちは波間でサーフィンごっこを楽しんでいるようだ。俺は釣竿を垂らしながら海を眺めていた。
釣りって言うのは短気な奴ほどよく釣れるらしい、なら俺もそうとう気が短いんだろうな。次々魚が釣れて行く。
まぁ釣るために来ているんだし、たくさん釣れれば食料確保ができるってわけだからな。調理が面倒だが。
魚をいれるカゴが一杯になったところで帰ろうと子供たちに声をかけキャンプにもどることにした。
この世界の魚の名前は知らないが、構造が同じで助かった。
焼くか煮るか、ぐらいしか思いつかないが、刺身なんて怖くて出来ないな。
シンプルに串に魚を刺して焚き火で焼いて塩を振る。それだけでうまいんだからそれ以上のものは必要ない。
子供たちの分も焼いてやり、寝床を用意して寝る。それで一日が終わってしまう。
そんな日々をどれだけ過ごしただろう。街は落ち着きを取り戻し、子供たちは結局孤児院に引き取られた。
ほんの短い間の家族ごっこであったが、俺は楽しかったのかもな。
俺たちは孤独なもの同士どこか惹かれあう部分があったんだろう、そしてそれはまた新たな関係性に引き継がれる。
この世界で生きるならばこの世界の人間とともにあるべきだろう。おれは所詮よそ者だからな。いつまで面倒が見られるかわからない。
ただ、その一時だけでも愛があったんじゃないかと俺は思うぜ、誰もいなくなった夜の浜辺っていうのは寂しいもんだが思い出だけはいつも輝いているもんさ。