火山に燃える愛もあるもんだ
ラブハンターこと愛羅武勇太郎は冒険者としての肩書きを得て日夜町のマスコットキャラとして愛と親しみを持って活動していたが、ふとしたひょうしに中身が人間であるとばれてしまい、引退を余儀なくされてしまった。
新たな職を得るため冒険者ギルドを訪れた彼は新たな依頼を引き受けることになった。
今日はそんな彼のお話。
山ってのは甘くみちゃいけねぇって知ってるか?
昨日まで大丈夫でも今日はどうなるかわからねぇ、それが山ってもんなんだ。
準備は万端でも遭難することだってあるだろう。雨が降れば道はぬかるむし、沢に落ちれば怪我だってする。とくに冬山はやべぇな、あれは寒さが体温を奪っていく。
だが、山の恐ろしさっていうのはそんだけじゃねぇんだぜ、それは生きてる山って奴さ、俺の世界じゃ山って言うのは地底のマグマが噴出し続けるそりゃあ恐ろしいもんなのさ。
だがな、そんな危険だって分かってていきたがる奴っていうのはいるもんなのさ。
今回の仕事はそういうのが回ってきたぜ、よっぽどなり手がいないんだろうな、まぁ俺にも金はいるし、火山に行って見るのも悪くは無いだろう。
最近はマグマの噴出も無いみたいだし、貴重な機材を運ぶポーターとしてだから戦闘もしなくてよさそうだからな。
着ぐるみで鍛えた体力があれば大丈夫だろう。
しかし、火山ってのはでかいな、高度が上がるにつれて寒くなりやがる。しかも周りは荒野みたいに草しか生えてねぇ、なんともはや寂しいばかりの光景だぜ。そういえばネズミかなにかが山から逃げてる様子があるがこれは異世界の日常なのかね。
依頼人は結構高い所まで登る必要があるようなことを言ってるようだ。どうやら山頂に用があるらしい。俺としてはいやな予感しかしないからな、さっさと降りたほうがいいんじゃないかと提案しているんだが、誰も俺の言うことは聞き取れないし、おれも勝手に帰るわけには行かないからな。
山頂までは無事に着くことはでき、近くの山小屋で休んでいるように言われたが、依頼人はそのまま火口付近でなにかを調べているようだ。
なにやら機械で計測しているように見える。
どんだけ科学が発展してるか知らないが、地面の表面温度か、距離かよくわからんがなんかの調査隊だったようだな。
まぁ、依頼も終わったことだし、目的は一応果たしたわけだ。あとは無事に下山できれば言うことはないんだが、どうやら無理みたいだな。
俺は山に依頼人を置いて先に下山することにした。
途中まだ登ろうとしている人に危険だから降りるように言ったが誰も聞いてはくれなかったな。
親切心から警告しているのに聞いてもらえないというのは悲しいことなんだぜ、彼らにとっては楽しみな登山であったとしても本当の危険を知っていれば異常を感じ取り他人の忠告に耳を傾けることが出来ただろう。
だが、それを押し付けることも出来ない。愛って言うのはいくら与えても、受けいれる側に愛が無ければ理解されないんだぜ。
だから俺たちは孤独になってしまうのさ。
ん?そろそろ来たな・・・山が鳴ってるな、もう時間がなさそうだ俺は岩陰に隠れ、まわりにいる連中に隠れるようにいった。
山ってのは恐ろしいもんさ、だがこういうことがなければ山の恐ろしさって言うのは分からないんだろうな。
恐怖って言うのはどんなに怖いか語っても理解してもらえないが、体験すれば理解するって言うことなんだろう。
俺も使命を再認識したぜ、見ろよこの灰だらけの真っ白い世界を俺たちは無力さ、だからこそ愛で世界を救わなきゃならねぇのさ。