冒険者ギルドにだって愛はある
牢から出される人間っていうのは二種類しかねぇんだぜ、ひとつは縛り首、もうひとつは釈放のどっちかなのさ、その基準って結局社会にとって存在を許されているか否かってことだろ?
異世界人の俺はまだ害虫認定されてなかったんだろうな、街にはいれてもらえたが社会の一員にならなければ縛り首になる、さあどっちか好きなほうを選べといわれてどうするよ。
俺にはチートといえるほどの能力はないが別に状況判断能力がないわけじゃない。確かに言葉には不自由するが、そんなの海外に行けば当たり前だろ?
異世界人と認識されているかどうかは不明だがとにかく身分証明書らしきものがなくっちゃいけないらしい。
まぁなんていうか世知辛い世の中だぜ、このさすらいのラブハンターである愛羅武勇太郎がなにゆえに縛られなくっちゃいけないんだ?
まぁ、さすらうには金もいれば身分もいるっていうことなんだろう。そこにこだわってたら縛り首だからな、冒険者登録ってやつを済ませてしまって適当に稼いでよその町にいくことにするぜ。
冒険者ギルドはけっこうなひとがいたが皆しずかに依頼書を読んでいた。そりゃそうだな、ある意味仕事の斡旋所なわけだから真剣になるに決まってる。
言葉もしゃべれず文字も書けない、読めない俺だが出来る仕事は回ってくるから世の中って言うのはうまくできてるもんさ、まぁそんなに割りのいい仕事じゃないが別に言語によるコミュニケーションが必須というわけでもないし、何をすればいいか理解すればそれだけやってればいいんだからな、気楽なもんさ。
ただ、これって冒険者の仕事か?とは思うぜ、なり手がいなかったから俺に回ってきたんだろうな。
こうして俺はご当地ゆるキャラの着ぐるみを着て往来の人々に手を振るという仕事を得たってわけさ。
マスコットキャラクターの使命ってなにかしってるか?それは人々と交流するって事なんだぜ。
炎天下でダンスを踊り、容赦なく殴りかかってくる子供たちに身を捧げ、安月給でこき使われる。
その過酷な環境の中にあっても人々に愛を振りまく姿こそ尊ぶものであるということ、それに気がついたのさ。
冒険者ギルドの方々には感謝してもしきれねぇよ、俺にこんなすばらしい仕事を斡旋してくれたんだからな。