エリザベス・ナザントという令嬢。
書きたくなって書いた作品。誤字脱字多いかもです。
私はエリザベス・ナザント。ナザント公爵家の長女で、『紅薔薇姫』なんて恥ずかしいあだ名をつけられている。正直恥ずかしい。ちなみにこの呼び名、良い意味もあるけど、悪い意味もある。
良い意味は、私が薔薇に例えるほど綺麗だということ。そういう評価は嬉しい。見た目には気を使っている。亡きお母様譲りの赤色の髪と赤目を褒められるのは嬉しい。
悪い意味は、綺麗な薔薇には棘があるというように、私が攻撃的で敵とみなしたものには容赦がないという意味。私の赤い髪はその手で仕留めた人間の血の色だとか不愉快な事も言われてる。まぁ、確かに私は貴族として、色々容赦のないことしているけれどもさ、それは貴族として必要なことだもの。
私、そういう扱いをすべき相手にしているだけで、それ以外の相手には寛容なつもりよ? お母様は私が十歳の時に、お父様は私が十三歳の時になくなった。だから、私が公爵家を継いだ。もちろん、後見付きで。だってそうじゃないと子供の私が公爵家当主としてやっていけないでしょう?
私は第三王子の婚約者で、国王陛下と王妃陛下に可愛がってもらえたの。それはお母様が王妃殿下の親友だったからってのもありますけどね。それで王家から後見のものを寄越してくれて、頑張ったの。もう四年目。十七歳。
学園に通いながら頑張ってるの。
ちなみに妹は三歳年下よ。
その妹がね、もう、可愛くて可愛くて仕方がないの。もう可愛い可愛いの。見た目もそうだけど、「おねええーさまぁ?」と幼い頃に舌っ足らずにいってきたのがもうきゅんってきて。ああ、この子だけは絶対に私が守るって思ったの。
髪の色も目の色も妹はお父様譲りで茶髪なの。私と妹の見た目は正直あんまり似ていないから、本当に姉妹か疑われたりするけど、お父様とお母様はお互いしか見てないほど仲良しだったから完全に姉妹よ!
でもそんな可愛い妹――ウッカっていうんだけど。その子とは今距離を置いているの。そのね、お母様がなくなった頃に、私、公爵家を継ぐんだって自覚が出てきてね? それで他人にも自分にも厳しくってなってきたわけ。というか、教育も本格的に始まったもの。
でね、私妹に幸せになってほしいって思ってて。そうなると公爵家がちゃんと安泰じゃなければいけないじゃない? そのためには厳しさも必要で、相手に反感を持たれることでも平穏に暮らすためには必要なの。
そういうのをバシバシしようとしてたら、そう、私の大事な妹を害そうってしてくる奴ももちろん出てくるわけで、そうなると大変でしょう? だから、妹と距離を置き始めたの。
お父様は悲しそうな顔だけど、私が事情を話せばわかってくれたし。まぁ、影ではちゃんと護衛とかしてるよ? 私専属の手足をね、色々その頃から集めだしたから、ちゃんと私が個人で仕える私兵みたいなのもいるのよ。だからその子の一人に妹をしっかり守ってもらってるのよ。
ふふ、私の妹は、ウッカは本当世界で一番可愛いんだから悪い男にさらわれたりしないか心配だものね。
まぁ、そんな感じで距離を置いててね。お父様がなくなったあとは余計顕著になったわ。だって私公爵家当主だもの。私と仲良くしてたら妹が危険かもしれないじゃない。そういうの絶対嫌だった。
だから嘘を吐いてたの。
「貴方のことどうでもいわ」ってそういう態度を前面に出したの。だって私がウッカに何があっても動かないと周りに思わせていた方が楽だったから。だって私、私兵を使って危ない薬とかを売り払ってる貴族とかの証拠集めたりして、私の事を可愛がってくれる国王陛下と王妃殿下の力になりたくて色々やってたから。余計ウッカも危険だったのよ。
それでまぁ、仕事とか、裏での調査とかで学校はちょくちょく休んだりしていたんだけどね? それで何か悪い噂とか流れてたし、婚約者の第三王子には嫌われちゃったんだけど、正直婚約者に恋愛感情はないもの。だからどうでもよかったわ。ショックもなにもない。寧ろ国王陛下と王妃殿下は第三王子の態度に怒ってたしね。
ウッカを嫌ったふりしながら(影では情報収集して、危ない目にあったら助けたりしていたんだけど)、色々やらかしてたら――、まぁこれも公爵家を安泰にするためと権力者で有り続けたらウッカの嫁ぎ先も選び放題だし、ウッカには好きな人と結婚してほしいからね――なんだかね、私の可愛いウッカが危険な目にあったの。
何でも私が学園に行っていない間になぜか高等部のね、権力者(私の婚約者を含む)と凄く仲良くなって、惚れられて(流石私の可愛い妹ね)、それで周りの女子生徒にいじめられたと。
まぁ、いじめはその、ウッカについてもらっている私の私兵の一人のヤーグに事前に防いでもらったりしてたの。まぁ、でも数が多すぎてキリがなかったらしいのよね? 殺そうとかじゃなくて、権力者たちから離れろって意味の警告のいじめで、ちょっと危ない程度のものだったの。
うーん、その程度ならウッカに惚れている権力者たちでどうにかできると思うし、あまりにも防ぎすぎてヤーグがなんか変な疑いされても困るから本当に危険なのだけ防いでもらってあとは権力者たちに任せてたの。
そしたらさ、なんかヤーグが、「変な方向にいった」ってめんどくさそうに報告してきたの。聞いてみたらね、なんかいじめてた女子生徒たちが「エリザベス様に命令されて、脅されて仕方なくやった」とか私に濡れ衣を着せてきたらしい。まぁ、いいけど。
そういう噂が出回っているらしくて、学園に顔を出したらね。
凄い囲まれたわ。
「妹をいじめるなんて」
私が可愛い妹をいじめるわけないじゃない。
「お前は本当に性格悪いな」
悪いわよ。悪くなきゃ貴族としてやっていけないわ。
「ウッカは心優しい少女なのに」
知っているわよ。ウッカは私の天使よ!
「父上と母上は何でこんな女に騙されるんだ。お前が公爵家当主だと領民が不幸になる」
うるさいわね。婚約者の癖に全く私を勘違いして。大体私の収める領民たちはちゃんと幸せに暮らしてるわよ? 誰も餓死しないように、税金もちゃんと考えて、あと領民の要望にもちゃんと答えてるわ。ふふん、強者は弱者に優しくするものなのよ? 知らないの? 大体貴族なんて領民の幸せのためにあるんだもの。
大体私の敬愛する国王陛下と王妃殿下は私みたいな小娘に騙されるような方じゃないわ。全く息子の癖にあの方々の聡明さが理解出来てないなんてっと苛立つ。
「お姉様、何でこんな事……。昔の優しいおねえ様に、戻ってよぉ」
泣いてる。可愛い私の妹が、天使が。可愛い。泣き顔見てると守ってあげたくなる。可愛い。抱きしめて上げたい。思いっきり撫で回したい。あああ、胸が痛い。私があの子を泣かせてるなんてっ。ウッカには笑顔が似合うのにぃ。
でもでも、そんな事したら今まで冷たいふりしてた意味がないわ。
「あら、私は貴方をいじめるような無意味な事しないわよ? 私は忙しいもの」
うん、それも事実。私当主として色々忙しいし、裏でこそこそやってて忙しい。
ああ、ごめんね、ウッカ。貴方をいじめるわけないわよーって思いっきり抱きしめたいけど、我慢してそんな言葉を言い放つ。
「嘘を吐くな」
とか、色々いってくるよ。権力者たちが。あ、私がつけた私兵のヤーグ(美形。ウッカの幼馴染として側にいる感じ)は私にそんな事言わないけどね。寧ろ、私に暴言吐いてる彼らに怒ってるよ、これ。
「やってないものはやってませんもの。証拠はあるんですの? 証拠もなしに決め付けるなんて上に立つもののする事ではありませんわよ?」
本当に、上に立つものならちゃんと調べなさい! と説教をかましたくなるわよね。
「お前との婚約は解消する」
「別にいいわよ? 国王陛下と王妃殿下からも婚約は解消しましょうかって話も来てましたしね」
これも事実。『あの子と結婚してもエリー(私の呼び名)が幸せになれないわ』って王妃殿下がいってたもの。王妃殿下は私の第二の母親みたいなものなのよ。第三王子は私を嫌ってるけど、私第一王子と第二王子とは仲良しなの。お友達よ。
なんか思い込みが激しいのよね。めんどくさい。
「な、そんな話聞いてない」
「じゃあ、お城に帰ったら聞いてくださいませ。それで、証拠は? 私はそんな命令一切していませんわよ?」
ふふふと強気に笑いながらいう。だって本当にしてないもの。なにも焦りはないわ。でも悲しいわ。可愛いウッカに私がそんな命令したって思われてるの。悲しい。
「証拠はないけど、貴様だろう」
「あらあら、勝手に決め付けるなんて幼稚な事。そんなのでは将来苦労しますわよ?」
全く、馬鹿な女子生徒たちに騙されて何を言っているんだか。大体私が何でウッカをいじめなきゃならない。可愛いウッカをいじめなんて死んでもしないわよ。
「ウッカ、貴方も。泣いてばかりいるのはやめなさい。公爵家の令嬢として恥ずかしいわ」
ごめんね、ウッカ。厳しい事を言っているけれどウッカに泣いていてほしくないの。それに人前で感情を顕にしすぎるのはあまりよくないわ。
「お姉様……」
「なんて酷い事を!」
「ウッカを貴方が嫌っているからだろう」
「うるさいわ。姉妹の会話に口出さないでくださいませ」
まったく見当違いの事を。私がウッカを嫌うわけないでしょうが。こらこら、ヤーグ、今にも人を殺しそうな目をしないの。私は大丈夫だから、ね?
「まったく貴方なんかが公爵家の当主など嘆かわしい」
「ウッカの方が領民を幸せにできるのに」
それはそのとおりかもしれないわね。ウッカは優しいから。ウッカが収める領地って凄い幸せでほんわかしたものになるんじゃないかしら?
私のウッカは可愛くて、人を自然に味方にするオーラがあるもの。本当可愛い。死ぬほど可愛い。世界で一番可愛い。やっぱ撫で回して思いっきり可愛がりたい。うぅ、七年近くウッカを可愛がってないから可愛がりたくて禁断症状が出そう。今も握る手が可愛がりたくてわきわきと怪しく動く。
「お、お姉さま」
「なによ」
「……お姉さまは本当にやってないんですか」
「やってないわ」
もう、ウッカってば私の目を真っ直ぐにみてるの。ウッカの目がこちら向いてるってもう、可愛い、こっち見ているウッカが可愛い。私可愛いしか言ってない気がするわ。
「……嘘つかないで。お姉さま」
「どうして、そう思うの?」
「だって、お姉さま、私の事……嫌いでしょう?」
「ふふ、どうかしら」
ああ、嫌ってないわ。大好きよ!
「ナグナたちに聞いたの…。お姉様がうちの領を悪くしているって」
何そのでまかせ。
「領民は幸せよ?」
「でもお姉さま、夜中に出歩いたり、よくわからない人たちと会話してたりしてるもん! 国で起こってる悪い事は全部お姉さまの仕業って」
いやいや、何それ。噂怖いわ。私悪の棟梁か何か? というか、それは裏で動いてるだけで悪い事はしてないわよ? 寧ろ私悪を滅する側だと思う。
「やってないわよ?」
「お、お姉さま、領民のためにも当主を辞退して。私が、私がお母様とお父様の大事にしてたナザント領を、ダメになんかさせないもん」
力強い目でウッカが私を見てる。ああ、私はそれを見て感激していた。甘ったれで、泣き虫な私のウッカが、自分の意志で私に歯向かおうってしてる。妹の成長にほろりと感激しそう。
ウッカの言葉に、私はうーんと悩む。
別に当主であることに私は執着しているわけではない。別に当主じゃなくててこれまで作った人脈と私兵たちがいればなんとでもなる。というか、国王陛下と王妃殿下は私が当主じゃなくても交流は持ってくれると思う。
私は自分が当主になって評判が悪くなっても、嫌われても権力者でいられればウッカを守れるしいいと思ってた。でもウッカならそういうふうなやり方じゃなくてもお母様とお父様の大事にしていたナザント領を何だかんだで上手く回せるんじゃないかっても思う。
うーん、1回譲って見る?
昔の私じゃない。手に入れた人脈と私兵で当主じゃなくてもウッカは守れるし。領地運営をちゃんと出来ないなら私がまた出ていけばいいわけだし。何より、可愛いウッカがこれで成長できるっていうなら試練として当主の座を譲るのもいいかも。
うん、決めた。
「ウッカは、領主になりたいのかしら?」
「……そりゃあ、そうだよ。だってナザント領はお母様とお父様が残してくれたものだもん。ダメになんかさせない!」
「そう、ならやる?」
「え?」
覚悟があるなら、明け渡してもいいの。それを本当にウッカが望むなら。
「別に私は当主の座に執着しているわけでもありませんもの。欲しいなら貴方が当主でも構いませんわよ?」
「そんな……、ナザント領をものみたいに言わないで!」
言ってないよー。ウッカの勘違いは悲しい。自分でそう仕向けたとはいえ。別にこれ、ナザント領がどうでもいいからの発言じゃないからね? ちゃんと考えてるからね?
「物なんて思ってませんわ。お母様とお父様の残した領地ですもの。ただやりたいなら貴方がやっても構いませんわ。大変ですから、ウッカにできるかわかりませんけど」
「……やるわ!」
私の挑発するような言葉にすぐ答える。ああ、もう単純で可愛いわ。でも、ウッカ挑発に乗りやすいのはダメよ? 何れそれで痛い目にあうかもしれないからね? 心配だわ。でもいい加減過保護すぎてもウッカのためにもならないものね…。
「では国王陛下と王妃殿下に伝えておきますわね。貴方が当主を務めるって」
「……お姉さま、何を考えているの?」
「ふふ、それは貴方が知らなくていいことですわ。あと、私は本当に貴方に嫌がらせは命令してませんからね。私を責めたいならしっかり証拠を手に入れてからお願いしますわ。では、私は忙しいので」
私は結局言っても信じてもらえないらしいので、そういって切り上げてその場を後にするのだった。
ヤーグ、ついてきたそうに私の方見ているけれど、貴方は私の命令通りウッカを守りなさい。命令は継続してるんだから、ね?
そうして私はウッカに家督を譲った。
まぁ、それがきっかけで色々私の周りが変化するわけだけど、それはまた別の話。
―――エリザベス・ナザントという令嬢。
(彼女は言葉と思いが違いすぎる。シスコンだということは多分本人と私兵たちとか親しいものたちしか知らない)
エリザベス・ナザント
絶世の美女。悪女的顔立ち。シスコン。妹は天使です(真顔)。
人脈やら私兵やらのせいで色んな意味で最強。
ウッカ・ナザント
姉の心を妹知らずを地でいく子。純粋無垢。覚悟を決めて領主をやるぞー! って子。お姉さまに昔に戻って欲しいと見当違いな思いあり。
ヤーグ
エリザベスの私兵の一人。貴族だけど、エリザベスに忠誠を誓ってる人。
第三王子
色々頭が残念な美形。
他の権力者も似たような感じ
国王陛下と王妃殿下
エリザベスを可愛がってる人たち。その有能さも含めて評価している。